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侵略国家の皇女に転生しましたが他国へと追放されたので祖国を懲らしめます  作者: think


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馬車の中の会談

「それはどういう意味でしょうか?」


「そのままの意味だが?君はオルフェリアに帰る、ただそれだけのことだ」


「それでは盟約違反になるのでは?スイレース王とは文書を交わしていると聞きましたが?」


「それは承知している。これは私の一存だ」


「ならば私は帰るわけには行きませんが、どうしてそこまで否定なさるのかをお聞かせください」


「この婚姻で両国が平和の道を共に歩んでいけるとは思わないからだ」


アスタロス殿下はその麗しい顔を険しくさせると、はっきりと言った。

私はその言葉に反論することができない。


「今現在でも周辺国を侵略している貴国が、完全に制圧したとするとその後の矛先は我が国だ。それも遠い未来ではない。おそらく5年後ほどではないかと私は見積もっている」


そこまで予想されているとは思わなかった。

平和が続く国家の中でこれだけ危機感を持っているなんて。


「ならば、どうするつもりなので?」


「まずは軍備増強だ。歩兵、騎兵、弓兵、魔導兵、工作兵、それら全ての数を増やし練度を上げる。そして唯一の国境にあるザイン砦を城塞へと増築することで国土を守る」


計算しきっているような言葉だけれど、浅すぎる。

やはりまだまだ若いと言わざる得ないわね。


「何がおかしい!」


どうやら知らない間に笑っていたみたい。


「スイレース王国は実戦をされたことはありますか?」


「私が生まれてからは無いな」


「実戦を行ったことがない軍隊と実戦経験豊富な軍隊、どちらが有利だと思いますか?」


「それは……後者であろうが、実戦に等しい訓練は行うつもりだ!」


「真剣で行うのですか?矢は鉄のやじりですか?魔法は殺傷能力のあるものを使うのですか?それでは同士討ちするだけですよ?」


「……」


「そもそも数を揃えると申しましても、オルフェリア皇国の軍の総数をご存知なのですか?」


「……数万人ほどと聞いているが?」


「それは5年ほど前のものですね。現在では歩兵十万、これには弓兵と工作兵が含まれますが、そして騎兵一万、魔導兵が三万となっております。それに予備兵を加えますと二十万近くへと増加します。ですがそちらは予備兵を合わせても十万には全く届きませんよね?」


「その通りだ……」


現実を知ったアスタロス殿下に先ほどまでの威勢の良さはなく、ただ俯いていた。


「……君は、なぜそこまで詳しいのだ?ただの姫君だと思っていたのだが……」


「私は平和が好きなのです。だから何とか戦争を止めようとしましたが、疎ましく思った父に追い出されてしまいました。はっきり言って今のオルフェリア皇国に広大な領地を統治する能力はありません。それでも新しい領地を求める姿は獣のように思えます」


「なら、聞こう。君は平和はどうすれば訪れると思う?」


「それは、獣を止めることですよ。これ以上大きくなる前に」


「……君はオルフェリア皇国に宣戦布告をしろというのか?」


「現状でもなんとか耐えている周辺国との同盟を果たし、一斉に反撃へと転換します。そうすれば大きすぎる身体はたちまち小さくなるでしょう」


「君は祖国を討つというのか?」


「討つのではなく、正すと言ってほしいですね。私はただ、平和が好きなだけの女の子です」


「その点では私と君は気が合いそうだ」


「そうですね」


私は初めて彼の笑顔を見た。

その笑顔にドクンと胸が高鳴ってしまう。


「どうした?」


ぼぅっと見つめていたことに気づき、慌てて視線を下へと落とす。


「いえ……なんでもありません……」


「そうか。ただ我が国は君の想像以上に平和のぬるま湯に浸かっている者が多く、私のように危機感を持っている者は少ない。オルフェリアへ戦争を仕掛けるのは無理難題に等しいぞ?」


「それでもやらなければなりません。先延ばしにすればするほど、失われる人命があるのですから」


「平和の為に戦争する。矛盾のように思えてしまうが、それが犠牲が少ない道なのだろう。私たちが歩む道が正しかったかどうかは歴史に委ねるとしよう」


「それではアスタロス殿下……」


「アシュと呼んでいい。妃となるのだから」


「アシュ様、ですか……なんだか気恥ずかしいですね……」


「そう照れられるとこちらも困る……私は君のことをなんと呼べばいい?」


「フェルナ、フェルナとお呼びください」


「わかった。よろしく頼むフェルナ」


「こちらこそ、よろしくお願いいたします。アシュ様」



こうして、私たちの険しく長い平和への道のりは始まった。

まだまだ難題は多いと思うけど、不思議と彼と一緒ならば歩み続けられるでしょう。


「それじゃ馬車から降りようか」


アシュ様はそう言うと先に馬車から降り、手を差し出してくれた。


「ありがとうございます」


私はその手を掴むと、優しく導かれるのだった。

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