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侵略国家の皇女に転生しましたが他国へと追放されたので祖国を懲らしめます  作者: think


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裏切り

「ディフェルナめ!私の邪魔ばかりしやがって!」


ベクアールは馬を飛ばしながらそう叫んだ。

その言葉に誰も返答できない。

彼らは今後の自分たちの行く末がどうなるかに夢中だったから。

このままこの皇子について行っていいのか?

一人の心に芽生えた疑心は不思議なことに同時に彼らの心の中に伝わっていく。


そのような中をベクアールは先頭を走り、巻き返しの一手を考え続けるが、まったくもって出てこない。

やはり父上と合流するしかないのか……

このベクアールというものがなんと情けない!

私はこの世の全てを支配する皇だというのに!


一刻も早く後続と合流したいところであったが、馬の疲労が限界のようで極端にスピードが落ちていく。


「ベクアール様……ここはひと休みさせなければ馬は動けません……」


「この駄馬めが!」


馬上で罵るベクアールは仕方なく馬から降り立った。

そして空を見上げるとそこは夕焼けに染まり、まるで血の色のように見えた。

そこでベクアールの身体が震える。


なんだ……?


その感覚を思い出すのにしばらくの時を要した。

ベクアールの身体の震えの正体は、恐怖であった。

初陣時に身体を震わせて以来すっかりと忘れていたものが、あの時よりも具体性を持って込み上げてくる。

それは今までに見てきた死という恐怖。


俺が怯えているだと!?

そんなわけがあるか!


ベクアールは水筒を馬の鞍から取ると、一気に飲み干そうとした。

だが……


ぽちゃん……


一滴の水が彼の口の中に落ちていっただけだった。


「後続との距離はどうなっている!」


「わかりません……突然の撤退で追撃もあるでしょうからその進みは遅いものだと思われます……」


「くそっ!俺の周りには無能ばかりしかいないのか!」


彼は気づいていない。

その場で判断をしたのは自分であり、この状況を招いた張本人が自分だということを。

そして今、部下たちに不満が溜まっているこの危険な状況に、今まさに火を着けたことを彼が知ることになるのはすぐのことである。


ガチャッ。


一人の騎士が剣を抜き、ベクアールの背後から斬りかかった!


「貴様!何をする!」


かろうじてであったが殺気を感じたベクアールは斬撃を躱すことに成功した。


「もはや、この戦は負け戦。ならばあなたの首で減刑を願うのみ。お優しいディフェルナ様ならばそれも可能でしょう」


「血迷ったか!この愚か者を切り捨てろ!」


ベクアールの命に、誰もが返事をしない。

それどころか彼へ冷たい視線を向ける。

ここに来て彼は悟った。

味方はどこにもいないのだと。


「ちょうどいい!貴様ら如き全て斬り殺してくれるわ!」


ベクアールは『強化』の加護を発動させ、剣を抜く。

加護の発動の証として、彼の瞳は真っ赤に染まっている。


「殺す!殺す!殺す!貴様ら全てを!」


その狂気にも似た覇気は歴戦の騎士たちを怯ませる。

そして、


ザシュッ!ギィン!ドシュッ!


「ギャァァァ!」

「グハッ!」

「腕が!俺の腕がぁぁぁ!」


ベクアールは味方だった騎士の首を刎ね、鎧を斬り、腕を叩き斬っていく。


「ふははは!どうした!私の首が欲しいのではないのか!?」


「クソっ!囲め囲め!左右背後から斬りかかれ!」


誰かが発した命に賛同したのは僅かに過ぎず、ほとんどが自分の馬に乗って逃げ去っていく。

それはオルフェリアの皇都の方向。

もはや彼らに戦うという意思は残されていなかった。


一方で残った者はというと、僅かに十数名。


「まさかこれほど、情けない者たちだとは思いませんでした……」


「ふん。そうであろう?」


「ですがもはや退く道無し!死ね!ベクアール!」


相対する騎士が斬りかかった。


「ふんっ!」


「うおっ!?」


それを圧倒的な力で打ち払い、騎士は背後に転倒する。

その隙に左右背後にいた騎士が剣を振り被った。


ベクアールはその斬撃を前へ転がるようにして躱すと、倒れている騎士の首に剣を刺した。


ぶしゅっ!


ベクアールの黒い鎧に紅いものが付着する。


「まず一人」


ギラリと輝く赤い瞳。

それが騎士たちの恐怖を最大限に引き出した。


「「「うわぁぁぁ!!!」」」


彼らが振るう剣にはもはや日々の訓練の成果はなく、ただただ剣を振り回すものになっている。

そのようなものがベクアールにダメージを与えることはなく、一人、また一人と騎士は地面に倒れ伏せっていった。


「貴様で最後だ」


「う、うぉぉぉ!」


ザシュッ!


ベクアールに突きが騎士の喉元を貫く。


「が、がはっ……」


そして立っているものはベクアール一人となった頃には、すっかりと日は暮れていた。


「ふははは!むしろ身軽になったわ!」


彼はそう笑うと、馬に乗る。


「私は、私は絶対に死なん!」


血に汚れた鎧のまま、ベクアールは馬を走らせる。

後続の味方がいる場所へと。

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