未来の為に
降伏したガレイン砦にはスイレース軍から五千名の守備兵を残し、オルフェリアの五千名はライゼンの指揮下で中衛を任されている。
だけど当然ながら完全に信頼されているわけではない。
なので中衛に位置している場所で監視している状況だ。
居心地は悪いと思うけれど、我慢してほしい。
そうして進軍していく中で、いくつかの関所を通ることになった。
だけど私の勧告が効いたのか、大軍に恐れをなしたのかはわからないけれど大人しく降伏してくれた。
これで後は皇都まで一直線ね。
「それにしても、反撃が来ないな」
騎乗しているアシュ様がそんなことを口にした。
「おそらくは籠城するつもりではないでしょうか?」
リアスの言葉に私は頭を悩ませる。
父が籠城なんて戦略をとるかしら?
例え戦力が整っていなくても前線に……
「あっ、きっとお父様も前線に向かっていて、今はろくに指揮官がいないのだと思われます」
「なるほど、フェルナがそう言うのならそうなのだろうな」
とならば、皇都の陥落まではあっという間に進むかもしれない。
「ここは少し急ぎませんか?お父様やお兄様が戻ってくる前ならば先に入場できると思います。残された人たちは私の支持者が多くいると思うので」
「よし、それでは私とフェルナで騎兵を率いて皇都に急行する。リアスとルヴィアには残りの指揮を任せるぞ」
「はっ」
「かしこまりましたわ」
「それではいくぞ!目標はオルフェリア皇都だ!」
うぉぉぉぉぉぉ!
背中に大きな歓声を受け、身体に波打つように響いていく。
ドレシュ先生。
あなたがいてくれるなら、きっと無駄な血を流さないですむはず。
お願いします。
どうか私を信じてくださいますように……
───オルフェリア皇国、内務大臣室内───
ドレシュは椅子に座りながら兵士の報告を受けている。
「ガレイン砦は降伏!関所を次々と降伏させて一直線にこに皇都を目指しております!」
「そうか……陛下や殿下にはもう伝えたのであろうな?」
「伝わったと思われますが、返事は未だに……」
「今頃大急ぎで戻ってきているところであろう。殿下ならば前線の兵は捨ててくるであろうから、陛下よりも早く帰城なさるじゃろうて」
それにしても、スイレースが攻め込んでくるとは思わなんだ。
彼の国の王は絶対に動かないと陛下と殿下、それに儂ら重臣たちも思っておったからな。
それもこれも……きっと姫様が動いたのであろう。
オルフェリアの脅威を説き、僅か二週間余りでその重い腰を上げさせるなどとは、このドレシュ驚きを隠せません。
「どうなさるおつもりでしょうか……」
不安そうに兵士が儂に向かって聞いてくる。
見てみればまだまだ幼さの残る顔立ちをしていて、成人を迎えたばかりの少年のようじゃ。
「安心せい。姫様の話を聞こうと思う。そうなれば戦闘を行うことなくこの皇都は開城されるじゃろう」
「ですが、我ら兵士や民間人たちに危害を与えないでしょうか?」
「そこは安心してよい。現にこちら側に死者は出ていない。儂らが攻勢に出なければあちらも力を振るうことはあるまいて」
「そ、そうですか……」
「お主はどうだ?この国を守るために、戦をしたいか?」
「……本音を話してもよろしいでしょうか?」
「ああ、ここには儂しか居らんからな」
「私の父も兄も戦争で死にました。もうこんなことは辞めたいのです……残された母と妹と幸せに生きたい……」
兵士は涙を零した。
それが一般兵士たちの気持ちじゃろうな。
「安心せい。その願いが叶うようにこの老骨が出向いて参ろうぞ。出立の準備を頼む」
「かしこまりました!力不足でありますが、私も護衛として連れていってください!」
「正気か?最前線に単騎で突っ込むようなものじゃぞ?」
「ドレシュ様が信じていらっしゃる姫様を、私も信じたくあります!」
「そうか……ならついて参れ。但し武装は無しじゃ。儂は使者として向かうのでな」
「はっ!」
姫様、その真意はわかっております。
ですが、ちゃんと言葉で伝えてもらいたい。
ですので伺わせていただきます。
あなたが思う、これからのオルフェリアの未来について。
それが無情なるものであったのならば、儂は鬼にならねばなりませぬ。
そうならぬように、信じておりますぞ。




