出陣の刻
「陛下、準備は整いましてございます」
円卓の会議室、起立したコレイ内務大臣が中央に座るキレイン陛下に向かって発言をした。
「……時は来た。今こそオルフェリアに対して宣戦布告をし、侵略されている各国を救うのだ!」
「「「はっ!!!」」」
ここにスイレース王国はオルフェリア皇国に対し宣戦布告を公にし、進軍を決定した。
それと同時に私も王城から出発することになると、私の部屋には多くの人たちが訪ねにきてくれる。
出発するに際し私はアシュ様に購入してもらった服装へと着替えた。白いロングスカートのワンピースに、薄ピンク色のケープという格好だ。
「フェルナ様……絶対にご無事に帰ってきてくださいね!」
涙を溢すサリナ。
「もちろんよ。サリナは大人しくしてなさいね」
「ディフェルナ様、ご無事で……」
オレリアは丁寧に頭を下げてくれる。
「ありがとうオレリア」
「帰ってきたらまたパーティーしましょうね」
お姉様はにっこりと笑って。
「ええ、お姉様」
「……ちゃんと帰ってこないと許さないから!」
アイーナ様は少し目が赤くなっているように見える。
「アイーナ様、大丈夫ですよ。ちゃんと帰ってきますから」
「それでは行きましょうか。ディフェルナ様」
白い鎧を着たルヴィアが扉を開ける。
「ええ、ルヴィア。この国の平和の為に」
私とルヴィアは部屋を出ると騎士や兵士たちが待つ郊外へと向かう為に馬に乗りにいく。
「お待たせしました」
「いや、私たちも今来たところだ」
厩舎にはアシュ様とリアスが待っていた。
二人とも白い兜と鎧を着用し、雰囲気も普段とは違う。
戦の前で緊張しているのだろう。
でも、それは私も一緒だ。
握りしめる手には汗がじっとりと湿らせている。
「一緒に行きましょう。私がお守りいたしますので」
「……情けないな。この状況で君にそのような言葉を言わせてしまうとは」
「恐怖を感じることは当たり前のことです。私も恐いのですから」
「……そうか。無事に生きて帰ろう」
アシュ様はギュッと私を抱きしめた。
鎧の冷たさを感じるけれど、優しいものに抱かれた私は不安が大きく軽減された気がした。
「アシュ様……」
「こほん。そういうことは人目がないところでお願いできますか?」
「……リアス、馬の準備をしていたのでは?」
「ルヴィア殿と一緒に終わらせてあります」
「そうか。仕事が早くて結構」
「なにやら視線が冷たいのは気の所為ということにしておきますね」
「ああ、そうしておいてくれ」
いつもの調子が戻ってきたようで私も笑ってしまった。
それに釣られてルヴィアも笑い、アシュ様とリアスも笑った。
「さあいくか。皆が待つ広原へ」
私たちは馬に乗ると、いざ郊外の広原へと馬を走らせた。
するとすぐに大きな軍勢が円を描くような陣形で待機している様子が見える。
「このまま中心へと向かうぞ」
「はい」
私たちは兵士たちが並ぶ隙間を通り、円の中心部へと向かった。
するとリアスやルヴィアと同じ鎧を着た騎士たちが出迎えてくれる。
「殿下、お待ちしておりました。こちらに立ち命を発していただけますか」
大勢の兵士に見えるように木箱で足場が組まれ、赤い敷物で彩りを添えている。
「わかった。君も頼む」
「はい、わかりました」
「魔法兵は拡声魔法を使用し、周囲を囲むように」
私たちが台座に登る際に、リアスが周囲に魔法兵を配置する。
それでアシュ様の声を広く届けるのだろう。
「諸君!突然のことに戸惑っている者ばかりであろう!だが我が国の存亡をかけた戦がオルフェリアとの間で始まる!」
大きくざわめく広原。
「諸君もオルフェリアの非道は知っているはずだ!その牙が我が国に向かっているという情報を得て、秘密保持の為に君たちに伝えられなかったことは遺憾に思う!しかし!これも我が国の民たちを守るための措置であったことを理解してほしい!それに加え、我が国には大いなる助けがいる!」
私はアシュ様の言葉で一歩前へ出る。
「私はディフェルナ、オルフェリアの皇女です!ですが私は皆様の味方です!私がオルフェリア兵士に向かって説得を試みます!その説得に応じた方は迎え入れてあげてください!そして応じなかったものは……皆様の手で討ってください!私も前線で戦いますので!」
「彼女がもたらしてくれた情報はは我が国にとって大いなる恵みとなった!どうか彼女を迎えてやってくれ!そして!オルフェリアの野望を討ち砕く為の力を貸してほしい!」
……うぉぉぉぉぉぉ!!!
十万の軍勢の咆哮が広原に咲く花々を揺らした。
「それでは征くぞ!第一目標はオルフェリアとの国境に建つガレイン砦だ!」
こうしてスイレース王国の進軍は始まった。
もはや戻れない。
あとは両軍どれだけ犠牲を抑えられるかになっている。
……どちらの被害も少なくなるように、頑張るしかない!




