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侵略国家の皇女に転生しましたが他国へと追放されたので祖国を懲らしめます  作者: think


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不治の少女

先ほどは素早く特定できた患部だけど、今回はどうにも悩んでいるようね。

アイーナ様の手はあちこちを触診しているのだけど、表情は曇ったままだ。


「なんで……全身に重度の異点がある……?」


その小さな呟きに私は疑問を覚える。


「異点とはなんですか?」


「病巣は点字みたいな魔力の感触があるのだけど、この子は全身がぶつぶつしていて原因が掴めないの……」


たとえ病気に冒されていたとしても、全ての内臓や筋肉などが病巣であるとは思えない。

ならば、どういうことなのか?


「あなた……だぁれ……?」


触られている感覚で患者である少女が起きてしまったようだ。


「この方はあなたの病気を治してくれる方よ……」


「……ほんと?わたしまた、そとあるけるようになる?」


少女の母が優しく語りかけると、少女は生気のない瞳にほんのりと希望の灯が見えた。


「ええ、任せておきなさい。私がちゃんと治してあげるから」


「えへへ……うれしっ……!」


ゲホゲホッ!


会話の途中で少女は血を吐いた。

ベッドの布団やシーツの色がどす黒く染まっていく。


「のどが詰まらないように横にする!君も手伝ってくれ!」


「はい!」


私と院長先生で仰向けに寝ている少女を横へと向かせる。

ひどく長い時間苦しんでいるように思えたけど、なんとか発作は収まったように見える。

今にも消えそうな命の儚さに、私の身体は震えが止まらなくなった。

それでも唇を噛み、震えを止める。

私には、怯える権利も泣く権利もない。

戦争を起こそうとする人間なのだから。


「アイーナ様?触診されないのですか?」


そう決意を固めた私の隣で、アイーナ様は震えていた。


「ダメ……わからない……なんにもできないよぉ……」


自分と同じ歳ぐらいの子の苦しそうな発作に怯えてしまっているのか、アイーナ様は涙を溢す。

このことで、女の子の両親も院長先生も沈痛の表情を浮かべた。


「アイーナ様、命を診る者が最後まで諦めてはいけません」


「でも……原因がわからないと回復できないもん……」


「……全身に異点があるとおっしゃっていましたね?」


「うん……」


全身に回るもので酸素や栄養素を運ぶ重要なものといえば、血液。


「血そのものが病気に冒されているのではないでしょうか?」


「血が病気……そんなことあるの?」


「瀉血といって悪い血を抜くという迷信はありましたが、血液自体が病に冒されているということは聞いたことがありません。しかし……全身に異点があるということならば可能性はゼロではありません」


「わかったわ……加護を発動してみる」


アイーナ様は少女のお腹に手を当てると、淡い光が発せられる。

そしてその光はどんどんと大きくなり、やがてまぶしい光へとなっていったが、急に光が消えた。


「異点は特定できたけれど魔力が足りない……私の魔力じゃ全身を回復できない……」


希望の光は見えたけど、解決にはあとほんの少しの力が足りないようね。


「アイーナ様、彼女を助けられる可能性があるとしたら、何でもできますか?」


「もちろんよ!」


「では、失礼いたします」


私はマスクを外すと、アイーナ様のマスクも外し、その下にある唇に私の唇を押し当てた。

そしてそこから思い切り魔力を流していく。

これは魔力譲渡の技法。

ただの魔力譲渡なら触れるだけでもできるけれど、譲渡する人への最大限以上の魔力を込めることができる。


ぷはっ。


「アイーナ様。もう一度、回復を」


「……」


「アイーナ様!」


「えっ!あっ、うん!」


少し呆けていたアイーナ様は再び、少女のお腹に手を当てる。

すると、再びまばゆい光が発せられると先ほどとは違ってゆっくりと光は消えていった。


「やった!治ったわ!全身の異点がなくなってる!」


アイーナ様の言葉に両親は泣き崩れ、院長は静かに礼をした。


「ありがとうございます……!」

「どれだけのお礼を言えばいいか……!」


「私よりもフェルナがやってくれたことよ。お礼は彼女に言ってあげて」


「本当に、本当にありがとうございました!」


少女の両親が祈るようにお礼を言ってくれる。

そのことがなんとも嬉しくも、重くのしかかってくる感覚もある。

私はたくさんの命の灯を消そうとしているのだから。

それでも私は笑う。


「早く元気になるといいですね」


それが私の責務だから。


「ふぅ……」


私が握手を終えると、アイーナ様の身体がふらりと揺れた。


「大丈夫ですか?」


なんとか身体を支えることができたけど、アイーナ様の表情には披露の色が濃い。


「ええ、大丈夫よ……」


「歩けますか?」


「ちょっと、無理ね……」


「なら、おんぶしますね」


「ちょ、ちょっと!?」


私はアイーナ様の身体を背負う。

その小さな身体は思ったより軽かった。


「それでは行きましょうか。院長先生」


「えっ、ああ……ご両親はもう少し様子を見て上げてください」


「はいありがとうございます……」


こうして、本日の治療は終わった。


「アイーナ様、本日は大変なことになって申し訳ありません」


「いいのよ。これが私の務めなのだから」


「ありがとうございます。帰りは馬車で送らせますので」


「……ちょっと待って。アイーナ、このまま送ってくれる?」


「ええ、構いませんよ」


「ありがと。院長、馬車はいいわ。また来るわね」


「かしこまりました。本日はありがとうございます。そしてディフェルナ様も」


「お力になれてよかったです」


こうして私たちはサリナたちと合流して病院を出た。

おんぶされているアイーナ様を見て、サリナたちは慌てていたけれどアイーナ様が大丈夫と言うと、納得してくれたようね。


その後、私はアイーナ様をおぶったまま帰路を歩く。


「ねぇ……」


背中から小さな声が聞こえた。


「どうされました?」


「今日はありがとう……」


「どういたしまして」


「お姉様……」


その言葉に私は立ち止まった。


「今、なんとおっしゃいましたか?」


私の問いに返ってくるのは、穏やかな寝息だった。


「……ふふっ、お休みなさい。アイーナ」

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