会議の始まり
私の爆弾発言の翌日、殿下に伝えられたように会議が開かれ、私もそこに呼ばれることになった。
オレリアに連れられて向かった会議室の中へ入ると、円卓がありすでに多くの人たちが席についている。
こういう偉い人がいっぱい集まるところ、緊張するのよね……
「ディフェルナ嬢、よくぞ来てくださった。こちらへどうぞ」
入り口から一番奥に座っている陛下に呼ばれ、歩みを進めていくと見知った顔がある。
ルヴィア様だ。
先日会った時のようなドレスではなく、白い軍服姿が凛々しい。
だが、ルヴィア様は私に気づくことなくある人物を眺めていた。
少しぼんやりとした表情で。
そんな彼女の視線の先をたどっていくと、アシュ様がいた。
ふふっ……なるほど、これはわかりやすいわね。
私は表情を引き締めつつ、陛下の招きに応じる。
すると陛下とアシュ様の間に座らせられた。
「こ、ここですか?」
「今日の議題はディフェルナ嬢が主であるのでこちらに座ってもらう」
「かしこまりました……」
うぅ……偉い人たちの視線が集中していたたまれないわ……
「それでは会議を始める。議事録の準備はよいか?」
「はっ、準備完了しております」
隅のテーブルに2人体制でペンを構える人の片方が返事をする。
「それではオルフェリアに対する会議を始める。まずは国防大臣、サファルト」
「はっ」
「我が軍の兵力とオルフェリアの兵力を申せ」
「かしこまりました」
あの方がルヴィア様の父上ね。
三十代後半くらいの素敵なおじ様だわ。
ルヴィア様と同じ軍服姿でその勇ましさが良く似ているわね。
「我が軍は弓兵、工作兵を含めた歩兵が五万、騎兵が三千、魔導兵が一万です。あと予備兵がおよそ一万で総兵力としましては七万といったところです。次にオルフェリアでございますが、こちらはディフェルナ様の方が詳しいかと存じます」
「それではディフェルナ嬢、説明してもらってもよいか?」
「かしこまりました」
私が席から立つと、視線が一斉に集中した。
その視線の中には敵意も混じっており、足が震えてしまう。
そんな状況でそっと手を握られた。
アシュ様だ。
この温もりが私を支えてくれる。
「オルフェリアの軍は現在では歩兵十万、これには弓兵と工作兵が含まれますが、そして騎兵一万、魔導兵が三万となっております。それに予備兵を加えますと二十万近くに達するでしょう」
私の言葉にざわつく室内。
「ですが、周辺国に向かわせている軍もあるでしょう?現在、こちらに向けられる戦力はいかほどですか?」
サファルト様が問いかけてくる。
「それに関しましては細かい兵種までは聞いておりませんが、およそ三万ほどだと承知しています」
「三万……それならば勝てるのでは?」
「しかし、相手はオルフェリアですぞ?」
「触らぬ虎に危険なしではないですか?」
私が告げたことに様々な反応が返ってくる。
「現状の戦力差を考えれば、オルフェリアを打倒することは可能です。それが私の見解であります」
「そ、そうか……」
さすがルヴィア様の父上、簡潔であり力強い言葉だった。
しかし……
「陛下、よろしいでしょうか?」
「コレイ内務大臣、発言を許可する」
「ありがとうございます。私はやはり戦争を起こすことには反対です。まず費用対効果において戦争はもっとも悪いもの。大切な人命を失い、富も流出しますから。オルフェリアとはディフェルナ様がこちらに嫁いで来てくださったのです。これからは友好国となるはずではないのですか?」
もっとも正論であるが故に、その理論を突き崩すことが難しい。
私は悟った。
陛下を開戦へと舵切らせるには、この人との論戦に勝利しないといけないことを。
私は左にいるコレイ様に視線を向ける。
年齢はおよそ五十代くらい。
頬くらいまでという少し長めの茶髪には白髪が混じっており、垂れ下がった細い目つきと着ているローブから、前世で言うエリート官僚のような雰囲気がある。
「だからこそここに宣言致します。我が国は平和主義を貫くべきであると」
まったくもって同意するべき意見ね。
だけど私は、正論だけで生きてこられる国からやってきていない。
正論ではなく暴論が勝る国があるということを、コレイ様に教えて差し上げますわ。




