夕暮れのひと時
城内をオレリアに案内してもらい、私たちは自分の部屋へと戻ってきた。
「他にご用命は、ありますでしょうか……?」
仕事モードの切れたオレリアがおずおずと聞いてくれたけど、特に用件はない。
「お疲れ様。また何かあれば呼びたいのだけれど、どうすればいいかしら?」
「それでしたらサリナがメイドの控え室にまで呼びに来てくださいませ」
「サリナ?場所は覚えているわね?」
「はい!もちろんです!」
「それならいいわ。オレリア、いろいろとありがとう。これからもよろしくね」
「はい……私でよければ、お願いいたします……それでは失礼します」
オレリアは頭を下げた後、部屋から出ていった。
「さて、サリナも隣の部屋で休んでいてちょうだい」
「いいのですか?」
「ええ、少し一人になりたいの」
「わかりました。それでは何かあればお呼びください」
こうしてサリナも部屋から出ていき、室内は静けさに包まれていった。
「さて……軽く運動しますか」
オレリアからもらったパジャマを着て、私は準備体操をする。
健康的で強い肉体を維持する為には、適度な運動は必須だからね。
「ふっ……ふっ…ふっ…」
腹筋にスクワット、腕立て伏せなどの筋トレを行う。
最初は苦労していた筋トレも今では楽なものね。
そうして過ごしていると、いつの間にか窓の外は夕闇へと染まっていた。
コンコン。
「はい」
ガチャ。
「失礼いたします……そろそろご夕食の時間ですが、どうなさいますか……?よろしければこちらまでお運びいたしますが……?」
オレリアがそう問いかけてきた。
「そうね。そうしてくれる?」
「かしこまりました……それでは少々お待ちくださいませ……」
扉が閉められ、再び一人になった私は、
「お風呂に入ろうっと♪」
本日2回目のお風呂へと向かった。
───一方その頃、王家が集う食卓にて───
「お母様!お兄様の結婚相手見ましたか!?」
「ええ、見たわよ。とても可愛くて良い子じゃない?」
「そんなことありません!まあ、多少は見た目はいいかもしれないけど、野蛮人に決まってます!」
フェレスとアイーナが隣同士の席に座り、会話をしていると、
「いい加減にしないか。彼女はそういった人じゃない」
アスタロスが妹の暴言をたしなめた。
「そうね。お母さんもそう思うわ。アイーナちゃん?謝りましょうね?」
「お、お母様まで……お父様はどう思いますか!?」
そうアイーナに振られたのはこの国の王、キレイン・ルト・スイレース。
綺麗に整えられた金髪に垂れ下がった目、服装が王族のそれでなければ市民と間違えられそうな顔立ちだ。
「ふぅむ……私はまだ会ったことがないからわからないな」
「お父様は私の味方じゃないんですか……?」
「い、いや、味方じゃないわけじゃないよ?だけど会ってもない人を評価するのはまずいんじゃないかな?」
娘に嫌われたくない父親の必死の言葉だったが、娘には敵対的行動と移ったようだ。
「うっ……お父様の、バカ……」
「やっぱり違うかな!お父様もあまり良くない人だと思うぞ!」
「そうだよね!お父様!」
今にも泣きそうだったアイーナの表情はにこやかなものになる。
だが、
「あなた?」
「父上?」
フェレスとアスタロスからの視線は痛いものになった。
「うぅ……そんな目で見ないでくれい……私も悪いなとは思っておる……」
大国スイレースの王は、なんとも頼りない存在であった。




