王都への旅路
「それにしてもびっくりしましたよ!フェルナ様ってあんなに強かったんですね!」
スイレース王国の首都、レイシアに向かう途中の馬車内で私はサリナから質問攻めにあっていた。
「国柄というわけか模擬戦を観る機会が多かったおかげで、いろいろと真似ることができたのよね。ラッキーだったわ」
「いいや、それだけではないだろう?あの身体能力は日々の鍛錬から生まれたものに違いないはずだ」
「ええ、でないと私の剣圧に負けない力は発揮できないですからね」
ただ、変わったことと言えばアシュ様とリアス様が私たちの対面に座っていることだ。
「あの……お二人は馬で向かうおつもりだったのでは?」
「俄然君に興味が湧いたのでな。レイシアに着くまで君の話しを聞いておきたくなったのだ」
「私も同意見です」
なんだか珍しい生き物でも見つけたかのような瞳で私のことを見てくる二人。
「それでだな?君の加護はどういったものなのだ?」
「私の加護は『守護』という言ってしまえば絶対防御ですね。私が意識している限りどのような攻撃も通しません」
「それはどれくらいの範囲で防御できるのかな?」
「それが自分だけなのです。他人に付与したりなどは出来ません」
「ふむ……一国の姫にはあまり必要ないものかもしれないな」
「ですが、この加護のおかげで私は前線に立つことができます。死なない指揮官って重要だと思いませんか?」
「それはそうだが……効果時間が短ければそうはいくまい?」
「大丈夫です。魔力量に関してはちょっと自信がありまして。眠っているとき以外は常に展開することが可能です」
「それは凄いな」
「お話し中失礼いたします。ディフェルナ様は魔力が多いとのことですが生活魔法だけではなく攻撃魔法も使用できるのですか?」
魔法、こちらの世界に来て当然興味を持ったものだ。
ならば使えるようになりたいと思うのは当然のこと。
皇城にある図書室で習得できる魔法は全て習得した。
ある魔法をこっそりと唱えてみたら、魔法修練場を破壊してしまったこともある。
魔法は覚えることよりもコントロールすることの方がすごく難しいとその時に思ったものだわ。
「ええ、使えますよ」
「……もはや驚くこともありませんね」
多くの人が使える生活魔法とは、水を生み出したり火を起こしたりという単純なもの。
それと違って指向性を持たせた炎や氷といった生み出すことを攻撃魔法と呼ぶ。
なぜ使用者を選ぶのかと言うと単純に魔力量が物を言うから。
先ほど私に向けられたアイスアローも一発撃てたら凄いと言われ、十発も撃てれば魔法使いを名乗れる。
「アシュ様はどのような加護をお持ちなのですか?」
「私は『瞬速』だな。数分限りではあるが、馬よりも速く動くことができる」
「それはまた戦向きの加護ですね」
「ああ、父の『豊穣』や妹の『回復』といった人の役に立てるようなものであればよかったのだが……」
『豊穣』は支配する土地の収穫量が上がる加護であり、『回復』は怪我を癒すもの。
私も治療魔法は使えるけれど通常の治療魔法では病気を治すことはできない。だけど加護の効果により病気まで治せるという医者いらずの加護。
「妹さんですか、おいくつですか?」
「12歳になったというのにワガママな娘だな」
「ふふっ、ディフェルナ様は苦労されると思いますよ?」
「ええ?どういう意味ですか?」
リアスの言葉にサリナが問いかける。
「殿下の妹君、アイーナ様は殿下のことを大変お慕いしていらっしゃいます。今回のご結婚についても以前から反対されていましたから」
「先に謝っておくが、妹が非礼を起こしたらすまない」
「いえいえ、ぜひ仲良くなりたいと思っています」
「ははは、そうしてくれると助かる」
優しい瞳になるアシュ様を見て、仲の良い兄妹なのだなと思った。
私を殺そうとする兄とは大違いだわ。
仲良くなれるといいのだけど……
───王都レイシアにある城の一室───
「もぉ!やだやだ!」
豪華なベッドの上で暴れるドレス姿の少女
「なぜ結婚なんかするんですの!お兄様には私がいるというのに!それもオルフェリアとかいう野蛮な国の皇女ですって!?許しません!」
ボフボフ!
彼女は枕を布団に思いっきり叩きつける。
その反動で周囲にあるぬいぐるみや人形が跳ね上がった。
「ぜったいに!ぜぇったいに!追い返してやりますわ!」
そう言う彼女の瞳には確かなる決意の炎が宿っていた。




