平和を願った皇女の末路
「今宵、ディフェルナを隣国スイレース王国へと嫁がせることをここに告げる!これで西の国境を気にする必要は無くなるだろう!そして周囲の弱小国どもを根絶やしにするのだ!」
わぁぁぁぁぁぁ!!!
どうして開かれたパーティーなのかを知らないままでいた私は、王である父からの言葉によって十五という年齢で結婚を知らされることになった。
どうしてこうなったのか?
なんてことを考える必要はない。
私が邪魔になったのだから。
私は、前世の記憶がある。
前世の名前は橘美紀、このことを思い出したのはディフェルナ・レス・オルフェリアという存在になって十歳の頃だった。
眠っているときに夢見た世界。
見たこともないはずのものが走り、とてつもなく高い塔が立っている。
凄い場所……
そう思ったのだけど見覚えがあり、頭は混乱した。
そんな場所を歩いていたのだけど誰も私に気づかないし、触れることもできない。
だけど私は思い出した。
かつての自分を。
二十八歳、好きな男性も同じ職場にいるという普通の女性。
だけど寝ている間に突発的に死んだのだと思う。
そうして私は生まれ変わったのだとその時悟った。
それからは自分の環境を知ることに努めた。
ここはオルフェリア皇国という国であり、私は第一皇女という身分。
(鏡を見てみたけれど、前世とは比べられないほどの美少女。サラサラの銀髪に整った顔立ち、一般市民だった私にとっては畏れ多く思ってしまう)
周囲には大小様々な国があり、それらの多くの国と戦争状態にあるということ。
ただ西にある強国、スイレース王国とは戦争をしていない。
父であり国王であるダクトレス・ダイ・オルフェリアは大陸の統一を狙う覇王。まだ三十代後半で銀髪は剣山のように立ち上がり、鋭い眼光は全てを見透かしてきそう。武力第一主義であり内政にはまったく興味なく、粗暴であるけれど亡くなってしまった母一筋であり、後妻は迎えていないという意外な一面もある。
私はそんな父に願った。
戦争をやめてください。
私が生まれる前からずっと戦争は続き、民は疲弊しています、と。
だが、父の答えは無情なものだった。
戦争を無くすことは簡単だ。
全ての国を制圧すればいい。
まるで獣のような視線に私は恐怖した。
それでも平和を諦めきれず、何度も嘆願し続けた。
その結果、私は他国へと追放されることになったようね。
「ふふふ……」
私の隣に立つ兄が笑う。
銀髪に鋭い目をしており、妹から見ても端正な顔立ちだと思う。
「せいぜい平和を堪能しておけ。数年もすれば周辺国は我が国の手に落ちる。そうなれば後はスイレース王国のみだ」
「絶対にそうはさせません」
「貴様に何が出来る?王族の加護も『守護』という自分しか守れないもので」
王族には神からの加護が与えられており、父には『鼓舞』という戦場の兵士の能力を上昇させる加護を持っており、兄には『強化』という兄自身の能力を大幅に上昇させる加護を持っている。
そんな中で私の『守護』は範囲も自分のみという小さなものであり、使い道がないと言われていた。
「それでも、私は止めてみせます。お父様やお兄様の覇道を」
「ふん、女の身で何ができる。せいぜい励んで子でも作っていろ。まあ成人するまで命があるかは知らんがな」
「……この際言っておきますわ」
「なんだ?」
「私、あなたのこと……大っ嫌いです」
「奇遇だな。俺もだ」
こうして私は、この国から去ることになった。
だけど、できることはあるはず。
この世界に平和な世が訪れる為にも。




