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その魔術師はがめついだけじゃない  作者: たわしまつわ


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第四十四話 ついでに魔物の討伐

 アレン達のパーティは、この前撤退を余儀なくされたレッサーデーモンを見事に倒し、とても喜んでいた。

「フラビオさんのおかげです。僕達の力でも倒すことができました。ありがとうございます」

 アレンが礼を言うと、他の三人もそれぞれの思いを口にした。

「前回はあんなに苦戦したのに。こんなにあっさり倒せるなんて」

「二重の楯の守りがとても有効でした」

「魔法を至近距離で撃つこととタイミングが重要だったんですね」

 四人の様子を見て、フラビオも喜んでいた。

「レベル九でレッサーデーモンを倒したのは、この前のキメラ撃破と同じくらいの快挙だ。攻撃も防御もしっかりしているからできたことだな。そう思うと、やはり四人は冒険者として優秀だと思うぞ」

 遠慮もなく褒める。フラビオは誇張しているわけでなく、この四人が揃うと、本当にレベルの割に強いと思っていたのである。

「よし、ならこの勢いで、もう少し魔物を狩っていくか」

 フラビオがそう提案すると、四人も期待通りとばかりに口々に言う。

「そう来なくちゃ。やりましょう」

「俺はもちろん賛成だ。まだまだ楯役出来るぞ」

「私もいいと思います。ケガとかも今のところないですし」

「そうですね。私の魔法もかなり残ってますし、いいと思います」

 アレンもロッドもアイリもセリアも乗り気であった。

「よし決まりだ」

 フラビオはそう言うと、探知魔法を掛け直して、周囲の魔物を確認する。

「ホーンドデビル一体、トロル一体、ジャイアントホーネット二十体。レッサーデーモンの後にはちょうどいい相手だな」

 そしてフラビオが四人を励ます。

「さっきみたいな連携が必要な相手だ。今度も自分達の力で頑張ってみな」

「はい。分かりました」

 アレン達はうなずいて、グッと拳を握り締めたのだった。


「ホーンドデビルは結構強いぞ。カウンターをうまく決めるんだ」

「了解です」

 五人が開けた場所に足を踏み入れると、中央に悪魔型の魔物がいた。角と羽のある赤い魔物。武器は持っていないが、空中からの鋭い鍵爪の攻撃と、初級までだが魔法も使ってくる、厄介な相手である。

 フラビオを残して四人が突撃する。フラビオは後方で待機しつつ、必要があれば援護を行うつもりであった。

 人間たちが接近してくるのを見て、ホーンドデビルが空中に飛び上がり、間合いから外れた。

「ストレングス!」

「エンハンスウェポン!」

 その間にアイリとセリアが強化魔法をアレンに掛ける。ロッドは大楯を構え、襲撃に備える。

「来たぞ!」

 ロッドが警告を発し、自らが前に出て攻撃を受ける構えを取った。

 ホーンドデビルはそのまま鍵爪を一閃。その鋭い一撃に大楯が高らかな音を立てる。ロッドは最初の攻撃を見事に防いでいた。

 アレンがそこでデビルに一撃を加えようと突進した。しかし、デビルの動きが素早く、斬撃を送ることもできず、再び空中に逃れるのを見ていることしかできなかった。

 そうかと思うと、デビルは急降下して、再び攻撃を仕掛けてきた。狙いは後衛のアイリである。ロッドが即座に動いて、その行く手を阻む。

 再び高らかな音がして、ロッドの大楯が鍵爪を防いでいた。

 そしてまた、デビルは空中に逃れる。

「厄介だな。何とか地上に落とせればいいんだが」

「カウンターを決めろって、フラビオさん言ってたわよね」

「分かった。魔法でのカウンター、狙ってみる」

 そんな相談をしていると、今度は鍵爪でなく、火球が三発ほど降ってきた。ファイアボールの魔法をデビルが放ったのだ。その攻撃を失念していた四人は、慌ててロッドの大楯の陰に身を隠す。ロッドが必死に楯をかざし、何とかその攻撃を防ぐ。

 人間の側から反撃が来ないことで、知性はないはずなのだが、ホーンドデビルは油断しように見えた。先程までと同じように、急降下して攻撃を仕掛けてきた。

 ここがチャンスだと、セリアが魔法の準備をする。

 そして鍵爪が大楯に当たった瞬間、魔法を発動させた。

「ウィンドカッター!」

 とにかく地上に落とすことが第一と、真空の刃はデビルの羽に直撃していた。羽が大きく切り裂かれるが、残念なことに飛べなくなるほどではなかった。そのままデビルが空中へと逃げていく。

「もう一撃、ウィンドカッター!」

 空中でよろめくような動きをしているデビルに、セリアが追撃の魔法を放つ。狙いは正確で、見事に先程とほぼ同じ場所に直撃した。大きく羽を斬り裂かれ、さすがのデビルも地上に落ちる。

「お見事、セリア! これなら!」

 アレンが落ちたデビルの元へと突進する。三人もその後に続き、援護の態勢に入る。

「闘気剣!」

 必殺の斬撃をアレンが放つ。しかし、その一撃はデビルが左腕を差し出し、致命傷にはならなかった。左腕を犠牲にして、デビルが右腕で反撃を放ってくる。

「させるか!」

 ここでロッドが割って入った。アレンをかばって大楯を広げ、見事に鍵爪の攻撃を防いでいた。

「ロッド、助かった! 今だ!」

 がら空きになったデビルの頭部に、今度こそとばかりアレンが斬撃を繰り出す。その一撃が見事に頭部を両断し、そのまま胴体までも斬り裂いていた。そしてホーンドデビルは霧状になって消えていく。

「よし、勝てた。みんな異常はないか?」

 アレンがいつも通り無事と異常の有無を確認する。もちろん、全員無事で異常もない。

「やりましたよ、フラビオさん」

「ああ、しっかり見ていた。とてもいい連携だったな。強化魔法も良かったし、ロッドの楯も大活躍だったな。セリアもカウンターを決めたし、アレンの攻撃力も申し分なしだ」

 フラビオの賞賛に、四人が誇らしげな表情になった。

「よし、次も頑張れよ」


 少し進んだ先にその魔物はいた。トロルである。体長三メートルほどの人型の巨体に、体表は黄土色と茶色の中間くらいだろうか。見るからに力が強く頑丈そうな魔物である。彼らが相手をするのに適正な強さである。

「手順はレッサーデーモンとほぼ同じだ。間違いなく勝てるだろう。落ち着いて戦えば大丈夫だ」

 フラビオがそう言ってパーティ四人を励ました。

「よし、行こう、みんな」

「了解」

「行きましょう」

「援護は任せて」

 四人が声を掛け合い、トロルへと突撃していく。

「ストレングス!」

「エンハンスウェポン!」

 まずはアイリとセリアが強化魔法をアレンに掛ける。

 間合いに入ったところで、先頭のロッドが大楯を構え、トロルの攻撃に備える。

 力強い拳が飛んできた。大楯に当たり、大きな音を立てる。ロッドは相変わらず見事な防御力でその拳を防いでいた。頼りになる楯役である。

「ファイアボール!」

 セリアが牽制の魔法を放つ。火球が勢いよく飛んでいき、トロルの顔面に直撃した。繰り返すが、魔物に知性はないはずだ。しかし、顔面に攻撃を受けたことで怯んだようになり、動きを一瞬止めていた。

「チャンスだ、闘気剣!」

 アレンが飛び出し、勢いよく斬撃を放つ。狙いはトロルの左足。一撃目で大きな傷がつき、二撃目でそれが広がり、三撃目で見事に左足を斬り飛ばしていた。

 トロルが足を失って、地上に倒れてくる。

「今! エクスプロード!」

 セリアが再び魔法を発動させる。トロルの頭部を起点に大きな爆発が起こった。それはごく短い時間に頭部を粉砕し、首を砕き、胴体の一部にまでダメージを与えていた。

「よし、とどめだ!」

 アレンが剣を振るう。力一杯の斬撃が一撃、二撃とトロルを斬り裂いていく。そして三撃目で斬撃による傷が胴体の半ばにまで達し、トロルは動きを止めた。そして霧状になって消えていく。

「よし。みんな異状はないか」

 いつもの確認をアレンが行う。もちろん、全員から無事だし異常もないと返答があった。

「俺達、こんなに強かったんだな」

 自信を取り戻したアレンが言う。レッサーデーモンに負けたことで委縮していたが、再戦して勝利を果たし、そしてホーンドデビルやトロルと言った厄介な相手も倒せたことで、気分も浮上していたのだった。実際、適正な魔物を相手に戦うのであれば、彼らは十分に強かったのである。

「そうだな。三重強化したアレンの攻撃力は本物なんだよ。だから俺も、安心して楯役ができる」

 ロッドも同じ気分のようで、かつての自信を取り戻していた。

「私のヒールの出番もないし、セリアの魔法の活躍もあって、余裕で魔物を倒せているもんね。私達は本当に強いのよ」

「私が魔法の使いどころをしっかりできれば、こんなに簡単に魔物が倒せるって分かったわ。これについてはフラビオさんの教えのおかげね」

 アイリもセリアもとても上機嫌である。

「いやあ、フラビオさんが来てくれて良かった。おかげで連携を見直すことができたし、自信も取り戻せました。ありがとうございます」

 アレンが深々と頭を下げた。他の三人もそれに倣う。

「俺が出したのは口だけだがな。でもまあ、みんな満足そうで良かった」

 フラビオの言葉に四人が顔を見合わせて笑顔になった。

「だけどまあ、次はそうもいかないかもだぞ」

 そんな不吉な言葉を口にする。

「数が多いってのは、それだけ厄介だってことだ」


 ジャイアントホーネットは体長六十センチくらいの、蜂型をした小型の魔物だ。当然耐久力も低く、剣や槍の一閃で十分に倒すことができる。ただし当たれば、である。

 蜂型なだけに、空中を飛び回る動きは不規則で、狙いをつけにくい。振りかぶってから振り下ろしたのでは大概間に合わない。最短の動きで一気に突くなり斬るなりするのがコツだ。

 それが今回は二十体もいる。まともに戦えば、どのくらいの時間がかかるだろうか。

「今回、俺は見物に回る。危なかったら手を貸すが、まあ、何とか四人で倒し切れるだろう」

 蜂の群れを見て、四人が一斉にうんざりした顔になった。ジャイアントホーネットを倒したことはある。しかし、精々五体までで、これほどの数を相手にするのは初めてだった。

「ええい、悩んでいても仕方ない。やるぞ、みんな!」

 アレンが景気良く声を出したが、他の三人は同調しなかった。

「作戦はどうする? 無策で戦うのは無謀だと思うぞ」

 ロッドが冷静に問題点を指摘する。さすがはパーティの楯である。

「そうね。二人一組で戦うのがいいと思う。私のシールドとロッドの楯で背後を守って、アレンとセリアが攻撃。それでどう?」

 アイリが建設的な提案をしてきた。確かに、今の戦力ではそれが良さそうである。

「私は賛成。アイリと組んで、一体ずつ魔法で片付ける。アレンはロッドに守ってもらって、同じく一体ずつ仕留めていけばいいと思う」

 セリアがアイリの提案に賛成した。ロッドもそれにうなずく。

 アレンが落ち着きを取り戻し、その提案に賛成した。

「ありがとう、みんな。じゃあ、それでいこう」

 そして四人は二人組になって突撃していった。


「せいっ!」

 アレンの剣が一閃し、ジャイアントホーネットを斬り裂く。耐久力はないので一撃で倒せるのはありがたい。

 しかし、一体倒しても、次から次へとホーネットが飛んでくる。

 特に背後から襲い掛かってくるのが厄介だ。さすがに背後に向けて剣を振ることはできない。

 そこはロッドがしっかりカバーしていた。大楯を器用に操り、繰り返されるホーネットの攻撃を全て防いでいた。

 そこはアイリとセリアのコンビも同じだった。

「ウィンドカッター!」

 真空の刃の魔法が一体のホーネットを斬り裂く。しかし、一体を倒している間にも、次々に別のホーネットが襲い掛かってくる。

「ホーリーシールド!」

 アイリが魔法の楯を展開し、ホーネットの攻撃を防ぐ。セリアはそれに守られ、攻撃に集中していた。なるべく早く魔物を減らさないと、このしつこい攻撃がいつまでも続くことになる。

 しかし、焦ってはダメだ。魔法の空振りだけは避けなければならない。

 だからセリアは、無理に遠距離では狙わず、手の届くくらいに接近してきた敵を狙い撃ちにしていた。その分、アイリがシールドで防ぐのが大変になるのだが、それも仕方のないことだった。

「これで三体!」

 アレンも一体ずつ確実にホーネットを仕留めていた。斬撃を空振りすれば、その分ロッドの負担が増える。一撃必殺を心掛けていた。

 ホーネットの動きは不規則で、しかも時間差があまりない。楯役の二人は神経をすり減らすような感じで、必死に楯で相方を守っていた。

「こっちも三体! ウィンドカッター!」

 真空の刃の魔法も三発目である。先程までの戦いで爆発魔法とかも使っていたので、セリアも魔法の残り回数が気になるところだった。

「ジャイアントホーネット、しつこいな」

「全くだ。とおっ!」

 ロッドがひたすらに楯で守り、アレンが攻撃を加える。

「でも、数は減ってきたわ」

「分かってる。確実に減らす」

 アイリとセリアの方も必死で迎撃していた。

 とにかく落ち着いて倒すこと、そう自分に言い聞かせながら、アレンが剣を振るい、また一体のホーネットを斬り裂く。

 セリアもまた、冷静にホーネットの動きを見て、確実に倒していった。

 そんな戦いを五分ほど続けたところで、さすがのホーネットも数が減り、残り八体になっていた。

「残り八体、最後まで落ち着いて倒すぞ。ロッド、守りは頼む」

「了解、任せとけ!」

「セリア、あと少しよ、頑張って」

「ありがとう、アイリ。分かってる」

 四人の奮戦により、一体、また一体とホーネットが倒され、地上に落ちていく。

「あと四体、せいっ!」

「あと三体、ウィンドカッター!」

 粘り強く戦いを続けた結果、確実にホーネットは減っていった。

 そしてアレンとセリアが十体ずつジャイアントホーネットを倒したところで、ようやく戦闘は終了した。

「無事と異常の確認するぞ。と言っても、みんなかなり疲れてるな」

「ああ。無事だが、さすがに疲れたぞ」

「私も。ロッドの楯の凄さが良く分かったわ。ああ、疲れた」

「私はそれ以外にも魔法の残りが十回しかない。安全を考えたら、この辺が引き上げ時かも」

 それほど長い時間戦っていたわけではないが、さすがに四人全員が疲れ切っていた。神経をすり減らす戦いだった。

「とりあえず小休止だな」

 フラビオの言葉に四人がその場に座り込む。数が多かった分、四人は相当に疲れていた。

「ちゃんと勝てたのはさすがだったぞ」

 フラビオがそう褒めたが、四人はそれに苦笑で答えた。

「数が多いのが厄介だって、骨身に染みました」

「今日の戦いは大楯の出番が多くて大変でしたよ」

「私も楯役する大変さが良く分かりました」

「こんなに魔法を使ったのは久しぶりかも。疲れました」

 それぞれの言葉に、フラビオがそうだろうとうなずいた

「今日はよく頑張ったな。これだけ戦えれば、レベルが上がるのも時間の問題だろう。ここより下の階にも行ける日もそう遠くはないはずだ。俺もみんなの成長がみられて良かったよ」

「ありがとうございます、フラビオさん」

 フラビオの褒め言葉に四人が一斉に頭を下げた。自分達が十分戦えることが証明でき、失った自信も取り戻せた。疲れてはいたが、この先希望をもって戦えそうだと四人はうれしく思っていた。

「じゃあ、今日のところは引き上げだな」

「そうですね。セリアの魔法も残り少ないし、引き際だと思います」

「そういう判断もしっかりしてきたな。帰り、まだ魔物と戦う羽目になることもあるから、余力のあるうちに引き上げるのはいいことだ」

「ありがとうございます。僕達、これからも頑張りますよ」

 四人が表情を輝かせていた。いい連中だなとフラビオは思った。レベルは低いが立派なパーティになったものだ。

 そうして五人はダンジョンの外へと向かっていった。

 勇者を名乗る少年達のパーティ、戦闘編その2です。このメンバーも大活躍するようになりました。将来性のある若者達を育成するのは、フラビオにとってもうれしいことなので、しっかり指南しています。

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