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その魔術師はがめついだけじゃない  作者: たわしまつわ


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第四十二話 攻撃には威力も大切

「どうする、このままじゃ倒せないぞ」

「俺達の攻撃にもっと威力があればいいのか」

 アルドとモレノがアイアンゴーレムの攻撃をかわしながら、自分達の不甲斐なさを嘆いていた。

 仲間のヒーラー、サンドロがそんな仲間を激励する。

「必殺の闘気剣があるだろう。それを使うんだ」

 ゴーレムに反撃を加えながらそれを聞いていた二人が、そうだとばかりにうなずく。

「その間は私が攻撃を引き受ける」

 サンドロが前に出てきて、魔法の楯を展開する。

「ホーリーシールド!」

 さすがはマスターレベルのヒーラー、魔法の楯が見事にゴーレムの拳を受け止めていた。

「よしやるぞ、モレノ!」

「了解だ!」

 二人が剣に闘気を集中する。

「闘気剣!」

 二人の剣が淡い光に包まれる。剣に闘気を伝えることで、その威力を増す技である。

「いくぞ!」

「くらえ!」

 二人の斬撃が威力を増し、今度はしっかりとゴーレムの体を斬り裂いていた。しかし、それでもまだゴーレムは倒れず、反撃の拳を繰り出してきた。二人が慌ててそれを回避する。

 フラビオはその戦いぶりを見ていて、粘り強さは本物だと感心していた。やはりマスターレベルであるレベル十三を一つ上回る、レベル十四にまで到達しただけのことはあると思った。

 とにかく、この戦いに決着をつける必要があるだろうと、フラビオもさらに手を貸すことにした。

「エンハンスウェポン」

 武器の威力を強化する魔法である。それをアルドとモレノの二人に掛ける。これで攻撃力もかなり増したはずだ。

「諦めずに攻撃しろ」

「分かりました。いくぞ、モレノ!」」

「分かった。やるぞ、アルド!」

 二人は魔法で三重に強化された斬撃をゴーレムに浴びせた。

 派手な音がして、斬撃の当たった場所が砕ける。今度は威力も十分に高まっていた。ゴーレムの胴体が二つに割れた。そして地に倒れ、霧状になって消えていった。

「どうにか倒せたな。全員無事だな。異常はないか」

「ちゃんと確認する習慣はあるんだな。良いことだ。俺は問題ない」

 戦闘後に無事と異常の有無を確認するのは冒険者の基本だ。別のダンジョンで鍛えていたのだとしても、それは同じである。それを守っていることをフラビオは評価したのだった。

「大丈夫だ。俺は問題ない」

「私も問題ありません。しかし、ストレングスに闘気剣、エンハンスウェポンの三重強化でやっとですか」

 アルドとモレノとサンドロが大きなため息をついた。フラビオの言う攻撃の威力不足を身をもって知ったのだった。

「分かったところで次に行こうか」

 フラビオは欠点が明らかになっても先へ進むことを促してきた。より強い敵を求めてこのカルスのダンジョンに挑んだからには、この程度のことで挫折するとは思えない。

「分かりました。行きましょう」

 そして一行は地下二階へと下りていった。


 地下二階に下りてすぐ、モレノが探知魔法を使う。まずは魔物の位置を把握することが重要だからだ。

「マンティコアとミノタウロスは分かる。あと一体、トレンティのダンジョンでは見たことのない反応だ。獣型なのは確かなんだが」

 フラビオは獣型と聞いて、正体を予測していた。

「恐らくキメラだろう。同じ獣型でもマンティコアより反応が濃くて、大型だっただろう。この階層なら、たぶん間違いない」

 そしてフラビオは三人に念のため尋ねた。

「初めてでキメラは厳しいな。無理して戦う必要はないと思う。二体だけにしておくのもアリだぞ」

 そう言われて三人で顔を見合わせる。言葉もなく、互いを見やっただけだったが、三人とも同じ表情をしていた。そして黙ってうなずき合う。

「いえ、せっかく王都まで来たんです。初めての相手でも、逃げずに戦いたいと思います」

「分かった。なら、まずはマンティコアからだな。正体が分かるってことは、戦った経験があるんだな」

「はい。もちろんです。勝てるはずです」

「そうか。なら頑張れ」

 そして一行はマンティコアの元へと進んだ。

 マンティコアは人と同じような顔をした、胴体が獅子の魔物で、尻尾には毒針がついている。大きさは三メートルほどとそれほどでもないが、人間に比べれば十分に大きい。厄介なのは魔法を使ってくることである。

 四人が接近するや否や、火球の魔法が次々に飛んできた。

 四人はそれをしっかりと回避する。そして足を止めずに接近していく。

「頼むぞ、アルド、モレノ。ストレングス!」

 サンドロが強化魔法を二人に掛ける。身体能力が向上し、二人はさらに勢いを増してマンティコアへと突進していった。

 魔物もそれを黙って見過ごしはしない。口を開けて魔法を発動しようとしてきた。フラビオが先手を打って魔法を放つ。

「ファイアボール」

 拳大の火球が勢いよく飛び、マンティコアの顔面を直撃した。それによりマンティコアの魔法が不発に終わる。その隙に、二人が斬撃の間合いへと入り込んでいた。

「いくぞ、闘気剣!」

 先程までとは違い、最初から必殺剣を使う。一撃の威力不足で手こずると、何が起こるか分からない。手早く倒す方が良いのだ。

 アルドはマンティコアの右から、モレノは左から斬りかかった。極力威力を上げようと力強く放った一撃だ。それが大きく体を斬り裂く。

 それでもマンティコアはまだ反撃してきた。

 尻尾の毒針が飛んできて、二人は急いでそれを避けた。その分、間合いが開いてしまう。

 再びマンティコアが魔法を放とうと口を開いた。

「ファイアボール」

 これもまたフラビオが防いだ。火球を顔面に直撃させ、魔法の発動を阻止する。

「ありがとう、フラビオさん」

「今がチャンスだ」

 アルドとモレノが突進し、再び渾身の斬撃を放つ。二度目の斬撃により傷が大きく深くなり、体がざっくりと裂けていた。

「とどめだ!」

 二人がさらに斬撃を重ねる。その一撃は、先程広がった傷口を見事に斬り裂いた。さすがのマンティコアも、体が両断されるほどの深い傷を受けて地に倒れる。

 それでもまだ尻尾の攻撃が襲ってきた。

「ホーリーシールド!」

 サンドロが魔法の楯でそれを防ぐ。

 アルドとモレノが今度はマンティコアの顔面に斬撃を見舞った。一撃、二撃と傷を広げ、三撃目で顔面を見事に断ち割っていた。

 ようやくマンティコアの動きが止まり、霧状になって消えていく。

「よし、倒した。無事と異常の確認だ」

「俺は異常なし」

「私も大丈夫です」

「確認ご苦労様。もちろん俺も問題なしだ。少し手こずったが、まあ順当に倒せたと言っていいだろう。次も頑張れよ」

「了解です。次はミノタウロスでしたね」

 そして彼らは先へと進んでいった。


 進んでいった先に、確かにミノタウロスはいた。頭部が牛の形をした人型の魔物で、全長は三メートルくらいと中型の部類だった。両手に小型の斧を持っている。

「ストレングス!」

 最初にサンドロが強化魔法を二人に掛けるのは先程と同じだ。今回の相手は力も強く、それに対抗するには必須の魔法だった。

「ありがとう、サンドロ」

「よし、いくぞ」

 アルドとモレノが突進する。

 しかし、二人の斬撃より、ミノタウロスの反撃の方が速かった。二人が即座にステップを踏んでそれを避ける。

 そしてミノタウロスから再度の攻撃が来る。それも二人は丁寧に避けると、反撃を繰り出した。

「闘気剣!」

 アルドは右側を、モレノは左側のわき腹をざっくりと斬り裂く。

「うぉおおおっ!」

 ミノタウロスが咆哮を上げた。知性はないはずの魔物なのだが、斬りつけられたことに怒りを覚えたような叫び声だった。

 そしてミノタウロスの攻撃が激しさを増した。まるで旋風のように斧を振り回してくる。

「ホーリーシールド!」

 回避しきれないと見たサンドロが、またも魔法の楯でその攻撃を防いだ。その辺は見事な連携だとフラビオが感心する。

「ファイアボール」

 ついでとばかり、フラビオがまた魔法の火球を放った。それがミノタウロスの顔面を直撃する。それにより斧の動きが一瞬止まった。

「よし、ここだ!」

 アルドとモレノが再度斬撃を繰り出す。先程傷つけた場所をまたもや斬り裂き、その傷を深くしていった。

 それでもミノタウロスは倒れない。さすがにかなり頑丈である。傷にかまわず斧を振り回してきた。

「ウィンドカッター」

 フラビオが今度は真空の刃の魔法を放った。それがミノタウロスの腹部を直撃し、大きな傷を作っていた。それにより、ミノタウロスの動きが鈍くなった。

 このチャンスを逃さず、アルドとモレノが突進する。

「いくぞ!」

「そりゃあっ!」

 二人の斬撃は、彼らが大きくした傷をさらに広げた。さすがのミノタウロスも胴体が深々と斬られて、地に倒れた。

 そこへ二人がとどめの一撃を放つ。

 胴体を二つに斬り裂かれて、ミノタウロスが霧状になって消えていった。

「よし、勝った! みんな無事だな。異常はないな」

 アルドがメンバーの無事と異常の有無を確認する。

「もちろん大丈夫だ」

「問題なしです」

「よくやったな。俺ももちろん平気だ」

 フラビオがそう言って褒めた。威力が劣るのを腕でカバーしているのは評価できる。しかし、忠告も忘れない。

「次は厄介だぞ。覚悟しておけよ」

「キメラですね。頑張ってみます」

 そして四人は、次の魔物のところへと向かった。


「これがキメラですか」

 先の方に強力な獣型の魔物がいた。遠目に見ても強そうなのが分かる。

 キメラは合成獣とも呼ばれ、様々な魔物の合体した姿をしている。今回の相手は全長四メートル、獅子と山羊の双頭をしていて、蛇の尻尾を持ったやや大型の個体だった。

「どうする、止めるなら今の内だぞ」

 フラビオはそう言ったが、アルド達は首を振った。

「すごく強そうですが、何とか頑張ってみます。フラビオさんの援護にも期待してますから」

 さすがに三人では倒すのが難しいと自覚していた。それでもわざわざ王都まで出てきて、このカルスのダンジョンに潜って、戦わないという選択肢は彼らにはなかった。

「無理はするなよ。じゃあ、交戦開始だ」

 そして四人はキメラに接近していった。

 やはり魔物に知性はないはずなのだが、接近する相手は敵だと認識するようだった。キメラの口が開かれ、二つの頭から激しく炎が吹き出してきた。

 四人が一斉にそれを避ける。

「何て炎だ。これじゃあ接近戦に持ち込めないぞ」

 アルドの言葉に、サンドロがうなずく。

「私がシールドを展開します。その後ろからついて来て下さい」

 そして魔法の楯を発動させる。

「ホーリーシールド!」

 淡く光る魔法の楯が眼前に広がる。その楯は、二度目の炎のブレスを見事に防いでいた。

「よし、接近するぞ」

 四人がひと固まりになってキメラに接近する。

 三度目の炎がシールドに吹き付けられる。さすがにレベル十四のシールドは至近距離からの炎も防いでいた。

 そして、ようやく剣の間合いにまで近づいた。

「ストレングス!」

 サンドロが強化魔法を二人に掛ける。

「エンハンスウェポン」

 フラビオも援護を惜しまず、武器強化の魔法を使った。

「いくぞ、闘気剣!」

 アルドとモレノも惜しまずに武器強化の技を使う。これで三重に攻撃が強化されたわけだ。

 アルドとモレノは楯の後ろから左右に飛び出し、アルドはキメラの右側から、モレノは左側から斬りかかった。

 しかし、キメラの素早さは二人の予測を上回り、後足だけで立ち上がって斬撃を避けると、前足を振るって二人に殴りかかってきた。

 攻撃が不発に終わった二人は、一旦間合いの外に出る。

 そこへ二つの頭から炎が吹き出されてきた。二人がさらに大きく回避し、炎の範囲外に逃れる。

「アイシクルランス」

 フラビオがここで援護の魔法を放った。それも二発。獅子の口、山羊の口にそれぞれ直撃し、炎を吹き出す口を塞いだ。

「今だ、喰らえ!」

「せいっ!」

 その隙にアルドとモレノが突進して間合いを詰め、強力な斬撃を浴びせる。それがキメラの胴体を斬り裂き、大きな傷をつけた。

 しかし、傷の二つ程度ではキメラは倒れない。

 そんな攻撃などなかったかのように、また前足を振るってきた。最初にアルドを襲い、アルドは回避を余儀なくされた。続いてモレノの方にも前足が襲い掛かってきて、モレノも同じように大きく回避する。

 そこへ二人が忘れていた尻尾の攻撃が来た。先に着いた蛇の頭が噛みついてくる。アルドはその攻撃を剣で払ったが、斬ることはできなかった。

 モレノがその隙に胴体へと反撃しようとしたが、前足の一撃で防がれてしまった。

 そして氷の槍の魔法が解け、キメラの口が自由になる。

 キメラがまた二つの頭から炎を吹き出してきた。

 アルドとモレノがそれを避け、一旦サンドロのシールドに身を隠した。

「これがキメラか」

「何て強さだ」

 斬撃を与える隙がなかなか作れない。それでも、まだ二人は諦めない。

 炎が止んだ直後、二人が魔法の楯から飛び出し、左右へと回り込む。

 そしてキメラの前足の攻撃を避け、そのまま突進して、二度目の斬撃を浴びせる。

 キメラの胴体の傷がまた広がった。それでもキメラは倒れない。

 それから五分ほど、二人は奮戦していた。サンドロのシールドがあったおかげもあるだろう。炎を避け、前足の攻撃を避け、わずかに生まれた隙に斬撃を浴びせる。その繰り返しで、少しずつキメラの傷を大きくしていったのである。

 その間、フラビオは援護の魔法を数発放っただけで、後は二人の奮戦に任せていた。しかし、常に動き回っている二人の体力もそろそろ限界だろう。これ以上無理をさせれば、二人の身に危険が及ぶかもしれない。

 これで何度目か、アルドとモレノがシールドの陰に身を隠した時、フラビオは二人に話し掛けた。

「よく頑張った。ここまで戦えれば十分だろう。後は俺がやる。とどめは任せる」

「どうするんですか、こんな頑丈な相手ですよ」

「まあ見てろ」

 そしてキメラの口が開き、炎を吐き出そうとする瞬間、フラビオは魔法を発動させた。

「エクスプロード」

 一発目の爆発の魔法が獅子の頭を一撃で吹き飛ばしていた。続けてもう一発、爆発の魔法を放ち、山羊の頭を吹き飛ばした。

「よし、とどめを刺せ」

「分かりました!」

 頭部を失い、キメラの動きが止まっていた。アルドとモレノが全力の斬撃を胴体に叩き込む。キメラの胴体が両断され、霧状になって消えていった。

「全員無事だな。異常もないな」

 いつものように無事と異常の有無をアルドが確認する。全員からの返答を受けて一安心する。

「それにしても、一撃で頭を吹き飛ばすなんて」

「これが威力の重要性ってことか」

「とても納得しました。確かに一撃の強さも大事でしたね」

 三人がフラビオの魔法に感心していた。

 しかし、それでは終わらない。フラビオが冷静に言った。

「マンティコアとミノタウロス、キメラ、それが一体ずつじゃあまだまだ赤字だ。この際だから、魔物の数が多いのを狙うぞ。キリキリ戦えよ」

「うへ。この激戦の後に、まだ戦うのか」

 そうして彼らは、弱い魔物を中心に三十体ばかり討伐して、ようやくギルドへと戻れたのだった。

 新規パーティの戦闘編その2です。比較的面倒な敵と連続で戦います。キメラは何度も登場していますが、やはり戦力不足だととても強敵なのです。苦戦する様子を描きつつ、やはり最後はフラビオが手を貸します。そしていつものまだ赤字発言が出るのでした。

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