表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『戦場の銀の閃光の天使』は、返り咲く。~貪欲なあなたにはもう何も奪わせないので悪事暴きます~  作者: 三月べに@『執筆配信』Vtuberべに猫
断罪

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

13/13

13 悪事暴きます。


三人称視点。




 王家主催の夜会パーティーは、魔塔主の口添えで開催されたものだ。

 用意された舞台なのである。


 シルは、ライオネルから贈られたドレスやアクセサリーで着飾った。

 ライオネルの髪色を連想するドレスは、煌めく金色のラメの生地。腰に巻き付けた純白のリボンは、二つ名に合わせて天使の翼のように垂れ下げた。

 白銀の髪はサイドに流し、軽くカールさせる。あとはまとめて結わせて、ライオネルの瞳を連想させるブルーサファイアの宝石をあしらった髪飾りを差し込んだ。

 たたでさえ美しい少女の顔立ちは、ゴールドシャンパンのアイシャドウで華やかなメイクで仕上げた。薄紅色の口紅は、魅惑の艶やかさがある。


 シルを想って贈ったもので着飾ってもらったライオネルは、至福の気持ちで見惚れていた。

 魅惑の唇には吸い寄せられてしまいそうだが、シルの家の問題に終止符を打つため、この舞台に立っているのだ。キリッと気を引き締めた。


 ライオネルは、シルのドレスに合わせた淡い金色のパーティースーツ。シルのリボンに合わせた純白のネクタイ。シルの瞳を連想させる水色の宝石のブローチ。婚約者同士のペアルックスタイルに、正直浮かれてしまう。だが、標的と向き合ったので、やはり気を引き締めた。


 シルの妹、シエルヴィア・ミューチャー伯爵令嬢と、ミューチャー伯爵夫妻。


 シエルヴィアは、桃色の髪をハーフアップにセットしている。目が大きく愛らしいと思われるであろう顔立ちは、確かに美しい。薄い桃色のグラデーションのフリルドレス姿も、愛らしい。

 しかし彼女の悪行を知っている上、ライオネルはシルに一途なので、心は欠片も揺れない。


 ミューチャー伯爵夫妻も、それなりに着飾っているが、状況が状況のせいで顔面蒼白である。吹けば飛んで行ってしまいそうだ。


「お久しぶりです、お父様もお母様もお元気そうですね」


 そんな両親に皮肉を言うシルは、美しい微笑みを浮かべたままである。


「どうしました? 七年も会っていなかったので、私がわかりませんか? 私はこの七年、魔塔で修行させてもらい、立派な魔法使いとなりました」


 暗に七年も家にいなかったことを口にした。

 それを聞きつけて、ヒソヒソと話す令嬢達。

 その気配を感じ取り、ますます顔色を悪くするシエルヴィアと伯爵夫妻。周囲の厳しい視線が、突き刺さる。


「……っな、何をとぼけている! お前は、この前、勘当したはずだろう!!」


 ミューチャー伯爵は、悪足掻きをした。悪足掻きしか、選択肢がない。


「お姉さま!! 婚約者のいる殿方と口も憚ることばかりをして……! 慰謝料もたくさん請求されているのですよ! それなのに、どうして公爵様と!?」


 シエルヴィアも悪足掻きをしてウルウルと涙目で、悪評をわざわざ口にした。チラリとライオネルを伺うが、彼は微動だにしない。ひくりと口元が引きつる。あまりにも、分が悪いと感じ取れた。


「なんの話かしら? 婚約者のいる殿方達と口も憚るようなことを繰り返して、慰謝料請求される事件を起こしているのは、あなたでしょう? シエルヴィア」


 シルは微笑んだまま、そう切り返す。


「なんでも私の名前を使っているそうね? しかも魔道具で髪色を私の白銀にして、濃い化粧もして『悪女シシルヴィア』を演じていたのでしょう?」


 こちらもわざわざ口にした。周囲もしっかり聞きつけるほどに、声を大きめに張る。

 令嬢達は目の色を変えて、シエルヴィアから距離を置く。


「な、何を言うのよ!? お姉さま!! 酷いわ! そんな嘘を言うなんて!!」


 震える声で被害者ぶるシエルヴィアだったが、手応えは感じなかった。


「『悪女シシルヴィア』の被害者達には、もう話を通しているわ」

「えっ」

「皆さん、私が例の『悪女』じゃないとわかってくださっているの。だから、改めて真犯人はあなただって知ってくださっているわ」


 ニコリと笑みを深めるシル。


 ポカンと呆気に取られるシエルヴィアは、言葉の意味を理解することが少し遅れる。


 周囲に距離を取られていたが、何組かの男女が前に出てきた。誰なのか、シエルヴィアはわからなかったが、女性の方はシエルヴィアを睨みつけてくる。とりあえず、怯えたふりをして縮こまった。


 すると、パシンと弾ける音を響かせてセンスを閉じた一人の令嬢が口を開く。


「その反応、覚えていらっしゃらないようですね。あたくしは婚約破棄の元凶のあなたに慰謝料請求をした者ですわ。まだ慰謝料を支払ってもらっておりません。加害者だと思っていた『シシルヴィア・ミューチャー伯爵令嬢』を勘当したと仰るので、行方がわからなくて困っていましたが……そもそも『シシルヴィア・ミューチャー伯爵令嬢』ではなく、あなただったのですね」


 心底冷め切った侮蔑の眼差しを向けられる。『悪女』がシエルヴィアだと、確信していた。

 それはその令嬢だけではなく、騎士にエスコートされている令嬢達は皆が『悪女』の被害者だったのだ。


 思い出したシエルヴィアも、ミューチャー伯爵夫妻も蒼白の顔になる。のらりくらり慰謝料請求をかわしていた相手達は、真実を知ってそこに立っていた。


 エスコートしている騎士一同も、厳しい眼差しを注いでくる。しかし、会場中が同じ視線だった。


 真の『悪女』を見ている目だ。


「ど、どこにそんな証拠があるのですか!! 酷いです!!」


 崖っぷちに追い込まれたシエルヴィアは、金切り声を上げる。真っ青に震えるが、あくまで被害者ぶらないといけないと必死に演技をしていた。


 すると、シルが人差し指を伸ばす。途端に、シエルヴィアの耳飾りが光り、桃色の髪は白銀色に変わる。シルが魔力を使って、髪色を変える魔道具を発動させたのだ。これが、証拠である。


 シエルヴィアは、今度は真っ赤な顔で震えて立ち尽くす。


 そんなシエルヴィアの髪色を戻して、シルは腕を組んで見下すように見やる。


「あなたが騙った『悪女シシルヴィア』の真実は明らかになりました。これからは慰謝料はあなたに請求されますよ、シエルヴィア。ちゃんと罪を償って支払いなさい、悪女のシエルヴィア?」

「っ~!!」


 もう暴かれた。シエルヴィアこそが、男を次から次へととっかえひっかえして、婚約者の令嬢とキャットファイトもし、数多く慰謝料請求をされている悪女だということを。

 悪女の姉の存在に悲しむ可憐なシエルヴィアのイメージは崩された。



「もう何も奪わせないわよ、シエルヴィア」



 勝ち誇った笑みで、シルは宣言する。

 貪欲な妹に奪われ続けた冷遇された姉はもういない。


 シエルヴィアはこれ以上無理なほどに、顔が真っ赤に染まった。

 ミューチャー伯爵夫妻は、今にも倒れそうなほどに真っ青を通り過ぎて白い顔になっている。


「~~~っ!!! ずるい!!!」


 そうしてシエルヴィアが絞り出したのは、そんな言葉だった。

 シルは、冷めた目を向ける。


「ずるいずるいずるい!! お姉さまはずるいわ!! 魔法使いになったし! 公爵様の婚約者にもなって! ずるいわ!! ちょうだいよ!!」

「昔から変わらないのね。いつまでも貪欲。でも、もう何もあげないから」


 地団駄踏む勢いの妹に対して、シルはしれっと冷たく返す。

 怒りのあまりの涙を滲ませて睨みつけるシエルヴィアだが、猫被りのただの令嬢相手に百戦錬磨のシルにはダメージなんて微塵もない。


「育児放棄の証拠も揃えている。七年前から捜索願も出さず、養育費も出していない。シシルヴィアの親権は、このオレがもらおう。シシルヴィアは、オレの養女にする」


 魔塔主が、その場に声を響かせる。


「そしてオレの後継者、次期魔塔主にする」

「え、それは認めてない」


 ついでに付け加えられた言葉に周囲がざわめくため、ポロッと拒むシルの声は掻き消された。


「私との婚約関係にありますが、もう籍も変わります。フェナールド公爵家は、援助しません。娘さんは、私が幸せにします」


 ライオネルは改めてシルの隣に立つと、胸を張って告げる。ケジメとして、告げたかったのだ。


 シルの肩を大事に抱えて、愛おしく見つめた。

 シルも目を合わせると、優しく微笑み返す。


 視線が外れた隙に、シエルヴィアは逃げ出そうと踵を返した。しかし、行く手はすぐに塞がれる。

 ブライアンとエスコートされたエヴァだ。


「またお会いしましたね、シエルヴィア嬢? 悪質な嘘をついたと明らかになったので、慰謝料は上乗せして請求いたします。お覚悟を」

「っ!!」


 エヴァが厳しく言い放ち、ブライアンもしっかり見据えて対峙した。

 ブライアンの件は、立派な強姦未遂。罪に問われる。絶体絶命だとパニックを起こしたシエルヴィアは、ブライアン達も避けて会場から抜け出そうとしたが。


「取り押さえろ!」


 ライオネルが声を上げて指示を飛ばした。


 公爵家の騎士が素早い動きでシエルヴィアと、同じく逃げ出そうとしたミューチャー伯爵夫妻も取り押さえる。そのまま別室に連行されるが、シエルヴィアも愛らしい姿に似つかない暴れっぷりをし、ミューチャー伯爵夫妻も罵詈雑言の言葉を喚き散らした。

 しかし、公爵家の騎士は速やかに口を塞いで連行していった。それに何組かはついていく。至急慰謝料請求を改めてしたい者達が、詰め寄るのだろう。


「『悪女シシルヴィア』の名は忘れてくれ。これから我が婚約者は、近いうちに『シル・フェナールド』となる」


 会場に響かせるライオネルの声に、パーティー参加者達は祝福の拍手を送る。


「次期魔塔主としても、覚えておいてくれ」


 魔塔主も明るく付け加えると、シルはジト目を向けたが、本心では後継者指名もまんざらでもないのでもう拒む態度は見せない。

 王族も勇者一行も拍手喝采をして、祝福してくれる中。


「改めて、結婚してくれ。シル」

「喜んで」


 ライオネルとシルは、手を取り合った。


 

 

 


まだ続けそうですが、一先ずこれにて完結にします。

戦場で『天使』と称されるシルの家庭問題を解決し、ライオネルと結ばれるお話でした!

ここまでお付き合いいただきありがとうございました!

よかったら、いいね、ポイント、ブクマをよろしくお願いいたします! さらなる励みにしますね。


最終話の執筆動画はこちら→ https://youtu.be/jCmQKqrKM58?si=N51fMA44l75r4tIf

高評価を押してくださるとこちらも励みになります! よろしくお願いいたします!


執筆動画をキッカケに、二年ぶりに書けてよかったです。


2025/04/27

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

『執筆配信』するVtuber★よかったらチャンネル登録お願いします!4dd343899d708783cb0612ee69cc788c.jpg
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ