表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『戦場の銀の閃光の天使』は、返り咲く。~貪欲なあなたにはもう何も奪わせないので悪事暴きます~  作者: 三月べに@『執筆配信』Vtuberべに猫
悪女・シエルヴィア

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

12/13

12 シエルヴィア・ミューチャー。


悪女シエルヴィア・ミューチャーside




 あのね。ルヴィーはあいされているの。


 みんながかわいいといってくれるの。ちょうだいっていえば、ぜんぶくれるの。


 でも、おねえさまはちがうの。おねえさまは、どうしておねえさまなの?


 ルヴィーがわらえば、みんなわらってくれるのに。


 おねえさまは、こまったようなかおをするのよ。ひどいわ。


 はやく生まれたからって”おねえさま”なの。ずるいわ。おねえさまってずるい。



 おねえさまが、おたんじょうびに、しろくてもふもふしたブルーサファイアのお目めのぬいぐるみをもらっていた。

 ルヴィーがほしくなって「おねえさま、ちょーだい」っていったのに、おねえさまはくびをよこにふって、くれなかったのよ?

 どうして? なんで?

 なにかいっているけど、わかんない。ルヴィーがほしいのにっ!


 おとうさまとおかあさまにいえば、おねえさまをしかってくれた。

 しろくてふわふわしたぬいぐるみをうでにかかえて、ルヴィーはうれしい!

 おとうさまも、おかあさまも「よかったね」とわらってくれたのに。


 おねえさまだけがちがうの。いやそうなかおで、こっちを見る。


 どうして、そんなへんなかおをするの?

 おねえさまってば、どうしていつもわらってくれないのかしら? とってもワガママだわ!

 こらしめてあげなきゃ! さきにうまれて”おねえさま”だからって、ワガママになってはいけないのよ?

 ちゃんとルヴィーをあいして。わらって。


 ぜんぶぜんぶ、ちょーだい?




 あのね、ルヴィーは愛されているの。


 ”お姉さま”がいなくなって、ルヴィーは”お姉さま”のことも手に入れたの。せっかくだから、ちょうだいってしたの。

 だってもったいないでしょ。ルヴィーも”お姉さま”になるの。


 ”お姉さま”がいなくなって、なんだか物足りなさがあったけれど、これで満たされた。


 ルヴィーの髪は可愛い桃色だから、”お姉さま”の白銀になるように魔道具を買ってもらって、変装。

 昔は”お姉さま”と似ているって言われて嫌だったけど、今なら都合がいいわね。"お姉さま"の存在は、わたくしにとって、とってもとっても好都合なんだから。


 ルヴィーは、とってもいい子の令嬢。でも”お姉さま”が酷くて周りに心配される可哀想な子になるの。

 ”お姉さま”になれば、どんなことも許されるわ。自由奔放に振舞えるし、好きな異性と戯れることも出来る。もう最高だわ!

 殿方と遊んだら、婚約者という令嬢が怒ってきたけれど、全部”お姉さま”のせいに出来る。わたくしの評判は傷つかない。でも好き勝手出来る。本当に最高だわ!


 ちやほやされること、大好き。気持ちいいことも、大好き。だって、ルヴィーは愛されているのだもの。


 ”お姉さま”ばかりが責められていく。わたくしは悲しいと涙をポロッと落とすだけ。簡単に騙されてくれる。


 わたくしはなんだって出来るんだわ! あんな殿方ともこんな殿方ともお話して、可愛いって美しいって言ってもらって、いっぱい愛してもらうの!



 戦争帰りの騎士の殿方も素敵! いっぱい美形がいるわ! 身体も鍛えていて、とっても素敵!

 いつものように素敵な殿方と愛し合おうと探していたら、酔い潰れかけていた令息を見つけた。いい身体つきだって服の上からでもわかって、休憩室に入るところまで追って行って迫った。でも途中で婚約者の令嬢に叫ばれてしまって逃げるしかなかった。あーあ、失敗失敗。


 最後までしてないのに、なんでか被害届を出して慰謝料を請求された。わたくしは”お姉さま”がごめんなさいって泣いておいた。もう”お姉さま”は勘当したと宣言しているから、慰謝料請求しても無視出来るわ。

 本当に”お姉さま”の存在って好都合!


 わたくしって幸せ。何でも手に入る。愛され人生だから、とーぜんよね!




 愛らしい桃色の髪をハーフアップにセットして、おしとやかな薄い桃色のグラデーションのドレスを身にまとって、王家主催の夜会パーティーに参加した。

 注目を浴びるから、眉尻を下げて悲しそうな顔をしておく。”お姉さま”のことでヒソヒソ言われているはずだから、『悪女シシルヴィア』のせいで悲しんでいるふりをしなくちゃ。


 わたくしは”お姉さま”のせいで、傷ついている可哀想な令嬢。

 顔見知りの令嬢達が、口々に声をかけてくる。


「またそちらの姉君が騒ぎを起こしたそうですわね。心中お察しいたしますわ」

「本当に、迷惑ばかりかけられていますわね。可哀想に」

「とんでもない悪女ですわよねぇ」

「そうなんです……お姉さま……」


 目をウルウルさせて、やや俯きつつも、周囲をチラチラ見ながら、次に愛し合う殿方を探す。

 戦争から帰還した騎士達がいっぱい。初めて見かける素敵な人が多い。

 相手もこっちを見ているのは、気のせいじゃないはず。

 今日も素敵な夜を過ごせそう、と密かにほくそ笑む。



 王家主催のパーティー。会場に入ると名前が公表される。今回の戦争に終止符を打った勇者一行の名前が挙がって、一番の盛り上がりを見せていた。


 勇者様、素敵よね。聖女様と婚約して近々結婚もするとか。一度近付こうとしたけれど、その聖女様に追い払われてしまって、ルヴィー悲しい。勇者様と話せれば、いい夜を過ごせるはずなのにぃ……。

 あ、魔塔主様も素敵。でも年齢不詳なのよね。あまり歳が離れているのはなぁ……。

 戦士様の筋肉隆々な身体、素敵! あの腕に抱かれたいわぁ……。

 勇者一行になかなか近寄れなくて、残念。


 あら? 次に会場に入ってきた殿方、とっても素敵だわ! 金髪がキラキラしていて、青い瞳が印象的な美形! 体格もがっしりめで、高身長! あんな殿方に抱かれたいわ!



「ライオネル・フェナールド公爵卿と並びに、婚約者のシシルヴィア・ミューチャー伯爵令嬢!」



 ……え?


 素敵な殿方の名前を聞き逃さないように見ていたら、”お姉さま”の名前が読み上げられたものだから、ポカンとしてしまう。近くにいる令嬢達だけではなく、会場にいる半分の貴族が驚いて凝視していたと思う。


 あの悪女の『シシルヴィア』が、素敵な殿方の婚約者として、公表された……?


 ど、どういうことなの……?


 ちょうどわたくしの立ち位置では公爵様の陰で見えなかったけれど、確かに公爵様の隣にはエスコートされている令嬢がいた。


 白銀の髪はサイドを垂らしてカールさせているが、青い宝石をあしらった髪飾りでまとめてセットしている。涼やかな表情をしている水色の瞳の顔は、どこか見覚えがある気がする。ドレスは金色に艶やかに煌めいていて、腰に巻いた純白のリボンが翼のように垂れ下がって気品あって美しかった。


「シシルヴィア嬢……? 別人じゃなくて?」


 誰かが口にした言葉に、ハッとする。

 そうだ。メイクで印象を変えているだけだから、知れ渡っている『悪女シシルヴィア』の顔は、わたくしとそっくりだと認識されているのだ。

 あの『シシルヴィア・ミューチャー伯爵令嬢』は、別人にしか見えない。


 どうしよう。あれはまさか、”お姉さま”なの? 生きていたの?


 同じくパーティーに参加していたお父様もお母様も、わたくしを見つけ出して駆け寄った。


 どうすればいいかとオロオロしている間に、会場の踊り場に魔塔主様が立って「注目!」と声を上げた。


「今入ってきたフェナールド公爵の婚約者、シシルヴィア・ミューチャー伯爵令嬢は魔塔の秘蔵っ子だ。七年前の10歳の時、魔塔に一人で入ってきてそれから切磋琢磨しながら魔法を磨き、戦争では辺境伯領で活躍した。娘同然の自慢の魔法使いだ」


 え……と、絶句してしまう。


 魔塔……? 魔法使い……? お姉さまが……?


 お姉さまが魔法の使い手だったなんて。それにいなくなったのは、魔塔に入ったからだったの?


 ……ずるい! わたくしには魔法の才能がないのに! なんでなの! ずるいずるい!! ずるいわ!!


 顔が真っ赤になる自覚が出来た。身体がわなわなと震えてしまう。


「『戦場の銀の閃光の天使』、シシルヴィア・ミューチャー伯爵令嬢に拍手を!」


 魔塔主様がそう拍手を求めると、割れんばかりの拍手が会場から響き渡ってギョッとした。

 騎士の人達がキリッとした顔で、うるさいくらいに力強く拍手をしている。


 なんなの? どうして『悪女シシルヴィア』にこんな拍手をされるの……? なんで尊敬した眼差しを向けられているの?


 私もお母様もお父様も戸惑っていたけれど、他の貴族もつられたように拍手をしていた。


「『戦場の銀の閃光の天使』とは、辺境伯領で大活躍した魔法使いの二つ名じゃないか。彼女のおかげで被害が一番少なかったとか」

「ああ、辺境伯領の被害が少なかったのは、彼女が大きく貢献したのだったな」

「魔塔主様の娘同然の秘蔵っ子とは……さぞ優秀な魔法使いなのだろう」


 貴族の男性達がそう話しているのが聞こえた。

 それを同じく聞いた令嬢達が、ざわざわと騒がしくなる。


「魔塔主様の秘蔵っ子って……?」

「七年前から魔塔に入っているって……聞いてないわよね?」

「というか、別人じゃなくて? あの悪女と顔が違いますわよ。ほら、悪女の方は妹君にそっくりで……」

「別人ですわよね……」

「どういうことなのかしら?」


 あまりにも『悪女シシルヴィア』と違いすぎて、ヒソヒソと話す令嬢達の視線がわたくしに突き刺さる。

 背中に冷や汗が伝った。


 どうしよう……。『悪女シシルヴィア』が、偽物だってバレてしまう。


 わたくし達の嘘だって、バレてしまう……!


 どうしよう、とお父様達の顔を見やっていると、公爵様と婚約者『シシルヴィア』がこちらに歩み寄ってきた。


 周りはわたくし達がいることに気付くと、わざわざ道を開ける。

 迫りくる”お姉さま”を見て、ドクドクと心臓が嫌な音を立てた。


「久しぶりですね。七年ぶりかしら、シエルヴィア」


 目の前までやってきた”お姉さま”は、わたくしが嫉妬するほどに美しく微笑んだ。



 


いいね、ポイント、ブクマ、ありがとうございます!

励みになります! 感謝!


12話目の執筆動画→ https://youtu.be/uSatRzIIGso?si=ZnOKa_TOIDD8lvRo


次回、最終話です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

『執筆配信』するVtuber★よかったらチャンネル登録お願いします!4dd343899d708783cb0612ee69cc788c.jpg
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ