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01 『魔塔の魔法使い』

2025/04/18◯


ちゃおちゃお!

二年前に思いついてだいたい10話分ぐらいで放置していた作品を書きました!

姉妹格差のざまぁものになります。





 時は、魔王復活により、大戦争が各地で行われていた時代となった。


 『魔塔の魔法使い』として、辺境伯領に派遣されていた私・シルは、辺境伯様も褒め称える魔法の腕と指揮で、活躍していた。

 うら若い小娘と侮られるのは承知していたが、そんなことは予想を超えて少なくて、『戦場の銀の閃光の天使』と呼ばれるようになった。『天使』だの『天使様』だの呼ばれて、正直嫌がったら、やめてくれた。

 卓越した魔法で騎士達をサポートし、迫りくる魔物を素早く葬る。時には、仲間を救えず、自らが葬る戦場で、靡く銀色の髪と凛々しい眼差しの白いローブの少女。それが『戦場の銀の閃光の天使』の由縁だとか。

 的確な指示と援助により、若くも侮られるこそなく、畏怖の念すら抱かれることで、戦いやすくなって大助かりだけれど、『天使』呼びはやめてほしいものだ。


 魔王復活の戦争が始まって一年近く経った、ある日の戦場。

 強力な魔物の群れの襲撃がやってきた。

 『魔塔』の主様も、自分を超える魔力感知だと太鼓判を押してもらったその能力で、いつも接近に気付き、戦場の騎士達に知らせている。


「敵は、巨大ワイバーンの群れだ! 飛ばないが、翼の攻撃に気を付けて! 風魔法で相殺しながら、援護する!」


 喉に人差し指と中指で魔法を当てることで、私の声を戦場に響かせた。魔力感知で戦場を把握しやすい私が、指示を下すには最適な魔法だった。

 もう慣れた一同は、固唾を飲んで、戦闘態勢に入る。迫りくる群れを待っていたその時。

 首からぶら下げたペンダントが熱を帯びた光を放った。『魔塔仲間』からの救援要請の合図だ。戦争が始まる前、みんなで持つことに決めた魔法道具。

 巨大ワイバーンの群れも、手強い敵だけれど、救援が必要な状況に陥っている場所があるのだ。

 これは……まさか。

 考えている暇はない。敵は目前。初めての救援要請だって、差し迫っているはず。

 私が取るべき行動は……。


「先程の指示は撤回する! 今すぐ戻れ!! 特大の魔法を放つから、後始末を頼んだ!! 他の地が、救援要請が必要なほど追い込まれているらしい! 後を任せた!!」


 もう一度喉に二本指を当てて、新たな指示を伝えてから、味方が離れたことを得意の魔力感知で確認した。その頃には、十分にワイバーンの群れが近付いていたので、ちょうどいい。

 バリバリッ。

 広範囲かつ強力な雷魔法を展開して、落雷の雨を降らせて、群れを一掃。

 大方、掃除完了。


「頼んだ!」と一言戦場に残してから、ペンダントの救援要請に応えて、テレポートを発動。



 そこにいたのは、腹を真っ赤にして、虫の息の『魔塔仲間』の青年。

「マジか……」と、思わず声を零す。


 虫の息の『魔塔仲間』が、かろうじて結界を保って閉じ込めているのは、とんでもない強敵の巨大魔物だ。


「少女!? 一人なのか!?」


 『魔塔仲間』の傍らにいる青年が問う。確かに、他に『魔塔仲間』は駆けつけていない様子。


「救援要請は、各地の『魔塔仲間』に届いたはず。でも応えられたのは、私だけということは……この大戦争の正念場ということですね。私の担当地も、とんでもない数の強力な魔物の群れが押し寄せてきましたので」


 言いながら『魔塔仲間』の怪我の具合を確認する。重傷だけれど、治せることに安堵する。

 私の言葉に、一同は息を呑んだ。


「それは……本当か?」とやけに響く低い声に、振り返らないまま答える。


「我ら『魔塔主』様の側近である魔法使いが、仲間の危機に駆け付けられないほど、手が塞がっている状況です。これを乗り越えれば、終わりのはずです」


 魔王復活大戦争も、終盤ということだ。


「とりあえず、私はここに来る前に魔物の群れを大量の魔力を消費して葬ってきたので、魔力を譲っていただけないでしょうか?」


 魔力感知で、付近で一番相性のいい魔力の持ち主を探す。


「そこのあなた。魔力をください」


 近くにいたので、目を合わせて声をかける。


「なっ! 何を言っているんだ!? 君は!」

「この人が一番相性のいい魔力を持っているので、譲っていただけないと私の『仲間』が死に、結界は破れ、アレが暴れて被害が多く出ます」

「わかった。どうやって魔力を渡んだ?」


 先程のやけに響く声の主だ。


「ああ、口から吸います」

「く、口!?」


 流石にギョッとされた。つまり、キスだ。


「君!! 相手を誰だと!」と、傍らにいる青年は、やけにうるさい。


 よくよく見れば、低い声の持ち主は、戦場に関わらず、キラキラしたような雰囲気と容姿。どこかのお坊ちゃまだろう。あいにく、貴族に詳しくない。


「知りませんが、身分が高いからと選んでいるわけではありません。犬に噛まれたとでも思ってください」


 シレっと言っておく。

 危機的状況の戦場なんだから、さっさと決断してほしいと、彼の前に立つ。


「わ、わかった。……やってくれ」


 緊張した様子で覚悟を決める青年。

 たかがキスで、大袈裟だと思いつつ両手で顔を包んで引き寄せる。

 ……何故、うっとりしたような瞳で見つめてくるんだ。

 唇を重ねて、魔力を吸う。

 ……何故、私の頬にも手を添えてくるんだ。


 よく馴染む魔力をもらったところで、『魔塔仲間』の治療。

 傷が塞がった『魔塔仲間』は息を切らした病み上がりで。


「シル……オレが死にかけてる時に、ラブロマンス、してんじゃねぇよ……ふざけんな」


 と、言い始めた。


「感謝を言えないのか。唯一駆け付けてやったこの私に」


 コツン、と瀕死だった『魔塔仲間』の青年キースの額に拳を軽く叩き付ける。


「他の奴ら、一生恨む」

「そう言ってやるなよ。コレぐらいのレベルの敵に阻まれているということなんでしょ」

「……はぁー。とりま、どうしてやるか、コレ」


 起き上がる力を出すのがやっとな『魔塔仲間』と一緒に、結界の中の魔物を見上げる。


「いいよ。私が仕留める」

「は? 今オレに治癒魔法かけたのに?」

「まだある」

「え? あの方から、どんだけ魔力取ったわけ?」

「四分の一は残した。治癒魔法用と、魔物駆除用の分。もらった分は、使わないとね」


 ニヤリと笑って見せる。


「今すぐ結界から離れなさい!」

 声を響かせて、キースと合図を交わして、結界を解いてもらったあとに、私は大爆発の魔法攻撃を繰り出した。

 一度は倒れた魔物だが、仕留め損ねて、私に手を伸ばす。が、あのキラキラの青年が剣を振り下ろして仕留めた。

 膨大な魔力の持ち主の上に、剣術にも優れている。

 とんでもない青年だ、としげしげと感心してしまう。


「ありがとうございます」と笑顔でお礼を告げる。

「い、いえ……そ、その……」と、頬を赤らめる青年。


 妙な反応だと首を傾げつつも、切り替える。


「とりあえず、周囲に魔物はいませんね。ご存知の通り、傷は塞いでも体力的に消耗が激しいですので彼を休ませてください」

「あ、わ、わかった。そ、その……」

「……? 私も持ち場に戻ります。あちらにまた追撃が来ないとも限りません」

「あっ」

「こちらも油断しないようにお気を付けを」

「あ、ああっ」

「じゃあ」


 青年が何かを言いかけていた気がするけれど、呑気に待つことなく、さっさと転移魔法を使って辺境伯領に戻る。『魔塔仲間』に、じゃっと軽く手を振って見せて。


 私の持ち場の辺境伯領は、先程葬った魔物の処理に追われているだけで、新たな魔物の接近もなかった。それに安堵しておく。


「戻った。後始末をありがとう。どうやら各地に手強い魔物が出現して、皆が戦っているようだ。つまり、戦争も終盤に差し掛かっている。これまで以上に気を引き締めてくれ。終わりは近い」


 とまた二本指を喉に当てて、声を魔法で響かせて告げた。


 大丈夫だったのか、と声をかけてくれる二つ年上の騎士ブライアンと軽く話す。

 この戦争で幼馴染を亡くした彼は、想っていた婚約者を託されたらしく、話は通しているが、直接会って婚約を申し込むそうだ。だから生きて帰れよって話をする。

 招待状を送ると言ってくれるから、喜んでおく。

 私の身分は一応平民。ブライアンは子爵の身分だったはずだし、相手は伯爵令嬢だったはずだから、結婚式に参列するための招待状ではなさそうだけど。婚約式ぐらいなら、参加出来るのかしら。


 戦争は、もうすぐ終わる。だから。油断せず、気を引き締めないと。


 その予言が的中したかのように、一週間で、勇者一行が魔王を仕留めた知らせが轟くように響く。


 ホッと、一息ついた。


 各地に派遣された『魔塔仲間』も、誰一人として命を落とさずに生き延びて魔塔に戻って来た。

 さらには、勇者一行の一人である『魔塔主』も帰還。



 

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