てのひら
道端に
黒いてのひらが
落ちていた
片方だけで
さみしそうに
こちらに
手招きしている
だけども
知らない振りして
通り過ぎる
後ろ髪を引かれる
何本かの
髪の毛が
引きちぎられて
黒い手には
何本かの
髪の毛が
残っている
それが
誰かの髪の毛で
それが
わたしの
髪の毛で
それが
誰のものでもない
髪の毛で
それが
黒いてのひらの
髪の毛で
空にぶら下がって
ふらふらと
風になびいている
苦い心で
遠くを見て
苦い気持ちで
近くにいて
明るい夜に
暗い昼間に
歩いている
狭間の傘をさして