201季 閉店前に花束を、そして始まる物語
「ゼミの自己紹介も終わったし、たまにはあそこでゆっくりしよう!」
と、勢いよく神楽阪の駅を出てまっすぐ行ったが、そこに待っていたのは衝撃の事実が書かれた看板だった
「あら、久しぶりね…」
「由依さん…ルーナは一体…」
「ごめんね。ちょっと待っててね。」
急いで店を開け、コーヒーを淹れるといつもの香りがした。
「いらっしゃい。ごめんね…久しぶりの営業なの。もう…やめようかなって。」
「…由依さん、悩みを聞くよ。」
「え!?そんな…私はお客さんだよ?」
「いいから…それで、悩みを教えてほしいんだ。」
「…実はね、この店をやめようと思うの。誰も来ないこの店が好きなの。でも…私以外誰もいないとなると…ちょっと寂しくてね。かおりちゃんもなつはちゃんもみんな学校に行くから…本当は私も行きたかったけど卒業してるし…」
「こんばんわ~あ!ひーと…もしかして…ゆい姉!?」
「由依姉…って、まりあんぬでしょ…本当に久しぶりだね…会いたかったよ!」
「…どうしてそんなにやつれちゃったの…昔はもっと美しかったよ…」
「ごめんね…夢を叶えられなかった…」
「まだあの子の夢、叶えようとしているの?」
「…んぬ、夢って?」
「…昔ね、私の一番の親友がいてね…その子の夢を叶えたかったの。」
「ちょっと待って!私のことはマリアって呼んでよ!一瞬わからなくなるじゃない!」
「マリア、ごめん。それで由依さん、その子の夢は?」
「…あ…あの子はずっと…っ…」
「…ひー、この話は私からするね。あの子の夢は喫茶店をやりたいということなの。でも結局その夢を叶えられないままお酒で亡くなったの…お酒に溺れたのはゆい姉のせいじゃないんだけどね。誰のせいでもない。」
「もしかしてここに緑茶や和菓子を置かない理由って…」
「ひーは鋭いね。その子の実家が和菓子屋でね、その子を思い出しちゃうからだよ…」
「…決めた。私はこの店を閉める。」
「いいの?その選択で。」
「マリア…私はここよりいい場所を知っているの。確かにカフェではなくなるけど…でも、いいの。」
「それで…どちらに?」
「浜中大学の昔弁当が売っていたところよ。」
「…それ学長と魔王に…」
「許可は取れると思うわ…」
「…それじゃあ学食対弁当となるのか…」
「むしろ助かるよ!」
「ひー!?」
「だって接客が減るでしょ?楽になるからいいじゃないか。」
「そういう問題!?」
そのあと、ルーナは閉店した。いや、“喫茶”ルーナは閉店したのだ。次の日の朝、“弁当屋”ルーナというのぼり旗が見えた。とうとう明日から昼飯が戦争になりそうだ。一方学食サークルは動き出すのか…