194季 プロローグは選挙とともに
陽射しが朝を告げる時、窓を開けるとそこは転生世界だった。最初はまるでいつも通りの日常が始まると思っていたが…いつの間にか転生していた。
「…と、いうわけだ。」
「はいはい、用意ができたら魔王選挙行きますわよ。」
「はーい!」
「あ、今の話本当なんですか!?」
「そうだけど…千明は知らなかったのか?」
「知らなかったですよ!」
「でも知れてよかったじゃない。」
「そろそろ投票所に行きますよ~」
数か月前、魔王が亡くなった。そのあと戦争の影響で遅れたものの、次期魔王を決める選挙が今開催されている。
「駅前の公園だ…久しぶりだな…」
「確かに!緑が見えるっていいですよね。」
「その通りですわ。このまま平和が続けば心も身体も穏やかに…」
「結花さん!そっちじゃないです!」
「そっちは駅の方だよ!…というか僕が副天使長ってメールが来てるんだけど!?」
「…あ、それも言うの忘れてましたわ!」
「この話も1話できるぐらいの話なのに!?」
「…選挙所に着きましたよ。コロナ禍というぐらい空いてますが。」
「確かに人がいませんわね。しかも無人投票制ですわ。」
「ここで紙を受け取って、あそこのペンで誰に入れるか決める…感じだよね!?」
「その前に、今回の魔王候補と公約を見なくては!ですよ。」
「今回は4人か…」
1人目は神川篤史氏。冥界の王ハデスだ。魔王の右腕としての経験から有力候補とみられている。2人目は風早快斗氏。グリフォンだ。副学長の経験から対抗馬としては最強か?3人目は中村浩介氏。ミノタウロスの末裔で、この選挙のダークホースだ。そして最後の4人目は大空はるか氏。ゼウスだ。唯一の女性候補ということもあり、ここも強いのでは?
「結果は来週のようですわね…わたくしは…」
「あ、あまり誰々に入れたって言わない方がいいですよ!」
「公平な選挙じゃなくなるからね。」
「その通りです!」
「…でも、僕はあの人に入れたけどね。」
「わたくしも。」
「私も同じだよ。」
「…さぁ、新しい魔王は誰でしょうね!」
こうして4人は家に帰っていった。行きでは見つけられなかった小さな花やひなたの温かさ、道端の家の昼ご飯の匂い、そして帰り道の他愛のない会話…こういった日常が続くだけで幸せなものである。そしていつの間にかいつもの日常が始まる。それはきっと、時間になると家のチャイムが鳴って、ドアを開ければいつもの声が響いて、吸い込まれていくかのように始まっていく。そんな普段の日常が、楽しくて優しい日常が、今帰ってくる。
「…起きてください!」
「あと5分だけ…」
「…冷めても知らないですからね。」






