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1、凶なる誓い

 暗雲を貫いて轟く稲光が室内を照らす。そこでは1人の青年が、雷鳴にも劣らぬ程の癇癪を起こしていた。



「有り得ない、こんな事が有り得るか! この僕が負けるだなんて!」



 額縁に飾られた賞状も、数多のトロフィーや盾も、全てが絨毯の上に散らばる。特に銀のトロフィーは、執拗なまでに踏みつけられた。


 台座に『輝け! 第56回次代を担う帝王コンテスト』というタイトルの上には、靴底の跡が刻まれていた。執拗な程、幾重にも。



「僕の対策は完璧だった。能力や資質、血筋については言わずもがな! だから惨敗を喫したのは、あの一件が原因だ! 土産だとか言って、あんな腐った豆なんか食わせるだなんて! それで僕のエレガンスパワーに狂いが生じたに違いない……クソッ!」



 癇癪は留まる所を知らない。ナイフを握りしめては絨毯を滅多打ちにして、ベッドに駆け寄ってはシルクのシーツを裂き、果ては羽毛の枕に突き立てた。裂け目から吹き出した白羽が視界を埋め尽くす。さながら北国に舞う粉雪のようだ。


 そうまでしてようやく、激情は一時ばかり静まる。しかし腹の奥底で蠢く憎悪は、むしろ肥大していく一方であった。



「何が地方色だ、地域文化だ。消し去ってやるぞ、この世から……」



 青年の瞳は狂気の色味を帯びている。



「遠くない未来に全てを根絶してやるぞ。茨城からは納豆を、栃木は餃子、埼玉のウドンに千葉のなめろう! そして群馬からは、その、アレだ!!」



 喚き声は次第に甲高くなり、どこか笑うようでもある。彼の真意が何にせよ、抱いた狂気だけは明瞭だった。



「全部だ! 次世代の支配者たる僕が、この手で、あらゆる独自文化を消滅させるんだ! それこそが僕の使命! 天から与えられた宿命なんだ!」



 そう叫ぶと、今度は高らかにと哄笑を響かせた。


 このあまりに暗い情念は、後に現実のものとなってしまう。関東地方の全域が「東京」によって支配、管理される事によって。






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