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第1話「ネガイビト」

初めての投稿で分からない事や出来が悪いかもしれません。

随時最新話を更新しながら修正していく予定なので見守って頂けると幸いです。

用語辞典…ネガイビト(願いを音に込める事で叶える事が出来る、他の人の願いは届けられるが自分の願いは同じメロディアムの人が居ないと叶わない。)

メロディアム(感情や風景が音のように聴こえる特別な共感覚、)

天の川システム(電子情報によってあらゆる事を電子化する事が出来る、これにより便利な機能や効率化を図ったがその結果人間の感情や交友関係が希薄になってしまった。)

生体コード(要は健康診断の結果の様な物で自分や管理者しか見られないプロテクトがされており様々な身体情報がひと目でわかるシステ厶)


私、星宮 奏は物心ついた時から感情や風景が音楽として聴こえていた。

生まれてすぐに身体に埋め込まれる生体端末には私の全てが記載されている生体コードと生活を豊かにする便利な機能が詰まっている電子端末が刻まれていて、手をかざせば大抵の事は出来てしまう。

ふと生体コードを確認するとどうやら私はメロディアムと呼ばれる特別な共感覚の1つらしい。

共感覚というと1つの情報を複数の情報で処理する為数字や文字を色として認識する事が出来たり音楽に色が付いているように感じたり、味を形として捉えるようなイメージから記憶力が強いかもしれないけれど私の場合は感音性感覚異常症と呼ばれる難病のせいで情報が全て音に変換されるから思い出や記憶はメロディーとしてしか覚えられない。

23世紀……高度な技術によって私達の生活は大きく変化した。電子情報を活用した新技術である天の川システムが広まった事により手をかざせば機械の遠距離操作やチャットが出来て……こんな一通りの便利な機能が皆使える様になったからなのだろうか、不必要な会話も余計な感情の多くは機械的に処理されて排他された。

友達との会話とか遊んだり学校等多くの事はオンライン上の仮想空間の中で行われるから記録が残ってしまうチャットでは皆感情を隠しているんだろう。

嘘をついている言葉は音が濁っていて、繕った表情は重低音の様に心を締め付けて苦しくなる。

聴こえなければこんな想いをする必要は無かったのにな………。


「機械音は心が乱されて、情報の波に飲み込まれそうになるのよね」

「見渡してもノイズしか聞こえないこんな世界なんて大嫌い」

「文献によると、昔は自由に旅行が出来て自然豊かで色んな人と交流する日々があったとか言うけれど本当なのかな……チャット画面だけが広がる今とは大違いだよ」

いつからこの世界には無機質な雑音ばかりが広がってしまったのかな、天の川システムは本当に……私達の願いを叶える為に作られたんだろうか。

便利な世の中なのかもしれないけれど、時には喧嘩をしたり、失敗して次どうするかを考えたり……壊れかけのオルゴールが奏でる途切れ途切れの音を聴くような、そんな不自由を楽しむ事も私達には必要な事だったんじゃないだろうか。

少し気分が悪くなった雑音の中、私はStellar と呼ばれる電子図書館に向かう。

ここにある電子情報としてまとめられた文学は少し濁っているけれど、まだ綺麗な音が残っていて、歴史の綴られた資料集は新しいメロディーを紡いで私の心を楽しませる。


いつもなら静かな音しか聴こえないはずなのに、何か大切な物があるようなアクセントで強調された音が聴こえてくる。

「これは本……だよね? 」多くの情報が電子化されたこの世界にはもう殆ど紙媒体は残って居ないはずなのに、どうしてここに……?

「ねぇ……何かを訴えてるの……?」

私は恐る恐る汚れて埃を被ってしまった表紙を捲ると……そこには聴いた事も無いような音が重なって、和音の様に心地よいメロディーを奏でる。

「これは……日記? 色んな感情が流れて込んで来る……」

(もぅ……遅いよお姉さん。やっと見つけてくれたんだね)

「君は……? それにこれは一体……」

(私の名前は音羽 咲、咲って呼んでね! 私がこの日記を書いた張本人だよ)

「咲ちゃん……? この音は一体何なの? それに咲ちゃんはどうしてこの日記を……? 」

(ねぇ……お姉さんってメロディアムだよね?)

「どうしてそれを……?」

(私の込めた音は願いを叶える特別な共感覚らしいんだけれど同じ共感覚を持つ相手が見つからないと願いが叶わないんだよね……その代わり願った事は必ず叶うの!これでもネガイビトって呼ばれる位なんだからね)

(だからね奏お姉さん……私のお願い聴いてくれないかな? )

(一緒にこの世界の失われた音を取り戻さない? )

「……無理だよこの世界に残っているのはもう雑音だらけ、私達の音は掻き消されて消えちゃうから……」

(それは違うよ? 感情が完全に消えてしまった訳でも話す事や娯楽が0になった訳でも無くて、昔は普通だった雑談や遊びに出かける事、音楽鑑賞やアナログ品を扱う事等は今や趣味としてたまに嗜む程度の扱いになってしまっただけなんだよ。)

「そんな訳……?!」

(気付いたんだね奏お姉さん、日記に書いてあるのは全部真実の音だって)

「……わかったけれど私は音として聴こえるだけで何も出来ない、咲ちゃんみたいに誰かに伝える事なんて無理だよ……」

(ううん、私のネガイビトの力でお姉さんはきっと音のイメージを形にして残せる様になってるはず)

(だからね奏お姉さん……)

「呼びにくいなら奏でいいよ……?」

(分かったよ!じゃぁ奏……私と一緒に失われた音を取り戻そう)

「咲ちゃん私達どうしたらいいかな……」

(ふっふっふー! 咲に良い考えがあるよ……)

私達の作戦、それは依頼した人の言葉と感情を形のある音にのせて誰かに届ける事。メロディアムの中でも私達は特殊な例らしくて感情や風景を音に込め聴いた人に伝える事が出来るから同じ様な感情や風景を大切にする人に頼まれて依頼を受けるようにしている。

依頼と言っても簡単な物で、依頼人の感情を音にして瓶の中に詰める、そしたら後は願いを込めて歌にのせると送りたい人に届く。情報の波に囚われたこの世界で必要な事は全て電子情報として処理されるから願いを込めた瓶は電子情報を掻き分けて必ず送りたい人の元に辿り着く。

こうして送られた瓶を開けて音に触れると依頼者の込めた感情や言葉が音楽として伝わるという仕組み。


「無機質な言葉は星屑のように流れて…瓶は流れ星のように願いを届けて、悲しみは低く喜びは軽やかに……怒りは強く苦しみは跳ねるように。想いは奏で言の葉紡ぎ、音の欠片は星のように」

咲ちゃんは星の歌に願いを込めて、私は願いを形にして。

星屑の様に散りばめられた雑音の中に残ったメロディーを作り上げる為……私は心がほとんど失われたこの世界に嫌気がさしているけれど、電子の波でもがき続ける。

咲ちゃんと一緒にこの息苦しい世界に押し込められた感情という希望を誰かに届ける為に…。


次回更新は分からないのですがゆっくり制作中ですー!

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