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「こんにちは」
「あら、こんにちは」
ジト目になってノックもせずに校長室に入って作った様な声で挨拶をする。
すると、ニッコリと胡散臭い挨拶が帰ってきた。
仕事が忙しいのは机の上に束になっている書類から見て取れるが、私に関する事になんの通告もないのは如何なものか。
「生徒の見本となる立ち居振る舞いとしては、目を見張るものがありますね。流石です」
「ねぇ、それ皮肉?」
「いえ、とんでもない。上に立つ立場の人がその様な事を言われる隙を晒すわけがありません。そうでしょう?」
「……先に言わなかったのは悪かった」
一転バツが悪そうに言った。
「この子のプロフィールも知らないんだけど?」
「どうも、この子です!」
「あら、元気でよろしい。はい、これ」
引き出しから2~3枚の書類を渡して来る。
近寄って奪うようにして受け取る。
校長は困ったような顔をした。
そうさせたのは自身の落ち度だろうと思ったが、言わないでおく。