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突然の声に驚き、椅子から転げ落ちた。
心配そうに覗くのは今朝教室から見かけた少女だった。
未だに収まらない心臓に手を当てつつ1度ゆっくりと瞬きをする。
「えっと、アナタは?」
倒れた椅子を直し、座りながら尋ねる。
「紗永無垢、今日から転校して来たんだ!」
「そ、そうなのね……」
声量が思った3倍ぐらいあって怯んでしまう。
じー、とこっちを見てくる。何か用かなと思ったが名乗らせといて名乗ってないことに気づいた。
かなり、印象の悪い女になるところだった。別に構わないけれど。
「明亜夜見。宜しくしなくてもいいわ」
結局感じの悪い受け答えになっている事に本人は気づかなかった。
それが、友達が出来にくい事とは理解できないのは対人関係を自分から築かなかった事が起因するのだが、人を遠ざける言動のせいなのが救いがない。
突っぱねられた無垢はポカーンとしたが、それも一瞬。
「うん、よろしくね!」
とびきりの笑顔でそう言うのだった。
これには夜見も苦い顔をする。
ああ、もう。こういう時どうすればいいのよ。
帰ってもらうにも失礼かなと思うし、かといって場を和ませるような話をするキャラでもない。
夜見的には物凄く気まずい空気の中そう言えばと思い出したことがあった。
そもそもこの子の事を覚えていた出来事だ。
「そう言えばアナタ朝転んでたわよね、盛大に」
「あっ、はははー。見られちゃってたかー」
「その、怪我とかは大丈夫なの?」
私は彼女が言ったその言葉に冷や水を浴びせられたかの様な気になった。
だってそれって……。
「あー、うん。私なんでか怪我とか一瞬で治るんだ」
まるで魔法使いの様なことを言うものだから。