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風呂上がり、夕食の準備にとりかかる。ここで、料理担当は無垢になるが、校長から言われている依頼を早く片付けて、執筆活動に戻りたい夜見は手伝いを申し出た。
「あり物でパパっと作りましょう」
冷蔵庫の中からキャベツと豚肉を取り出して、回鍋肉を作るようだ。ならばと、味噌汁を作り、サラダを作り、ご飯を炊く準備をして、キッチンから出ていく。
(さて、あの学校に居たのか、居ないのか。それすら判別できない現状、いくら同じ事をやっても無駄でしょうね)
かと言って、夜見には殆ど魔法の心得はなく、聞き込みなどコミュ障気味な夜見にはもってのほかだった。
彼女なら、そういうの得意でしょうけど、要らないことまで喋りそうなのよね。
仕方ないので、他力を頼る事になりそうだ。無垢がそういった類の魔法が使えるならばそれに越したことはないけど、あまり期待しないでおく。
「と、なると。アイツを頼るのか……」
「出来ましたよ〜。アイツとは?」
「そうね、貴女も無関係じゃないし、話しておかないとね」
いただきますと言い。味噌汁を始めにすする。家ではわざわざ赤味噌を取り寄せて黒色のお味噌汁にしている。
無垢は珍しいそうで、嫌気ではなく、好機の目で見て、飲んだ。ちょびっとだけ、感想が気になって、ご飯を口に運びながらチラッと無垢をみる。
(良かった、お気に召したみたい)
その見た目に有るまじき食べっぷりで、どんどん平らげていく。私が一口食べている間に、5口は食べていた。
「アイツって言うのは、その、自称錬金術士ね」
「自称なんですか?」
「あー、いや。校長のお墨付きがあるから本物らしいんだけど、私、見たことなくてね。彼の錬金術士とやらを」
「なるほど。だから自称。ご主人様は見たものしか信じないんですね」
なんだか馬鹿にしたような言い方だなと、眉を顰めるが、こんなにもニッコニコで悪意を込めているとは思えない。無意識に毒を吐くのかこの子、と何とも言えない思いをする。




