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彼女にとって書く事こそ力となる。
人に読まれ、利益を産む。その利益は自身へ還元される金だけではなく、読者へ楽しさ等の欲求を満たす。
夢中になりすぎたみたいだ。辺りは真っ暗だ。
彼女が居たところは書斎だ。
壁一面に本がびっしり詰まっていて、中には外国の本も混じっている。
机ひとつしかない部屋はレトロな雰囲気が漂っていた。
部屋の明かりはキノコ型のランプ1つ。
人の技術の進歩が著しい昨今、建物は大抵二階建てだし、太陽の熱をエネルギーに変えるのは当たり前のような時代だ。
そんな時代において平屋は珍しいかもしれない。
都会では無いが、田舎すぎても居ない。
空を見上げれば必ず山が見える。
そんな町において一風変わった家だと度々話題になるのがこの家だった。
無駄に広い敷地に昔ながらの平屋。しかし、所々最新のテクノロジーが駆使され快適さはよその家と遜色ないだろう。
なぜか鴬張の廊下を歩き、居間、いや、今はリビングと呼んだようが適切なご時世かも知れない。
リビングへ行く。
「筆が乗るとどうしても時間を忘れちゃうな」
その声の主は眠気が襲ったのか欠伸をしながら独りごちる。
ふと、園庭を見れば空からはチラチラと雪が降ってきた。
「もう、1年が経つのか」
懐かしむ言い方。
彼女にとって生活が変わった1年目であり、感慨深さも湧いたのだろう。
真っ暗な空に月明かり。雪は光の玉のようで美しかった。