やなものがある
ぜんぶやなものに、見えてくる。
あたしのむねのなかに やなものがある
おなかがすいてるとき
やきいもをたべちゃったみたいな
ほどけない ごわごわのわたがしを
のみこんじゃったみたいな
あたしのむねのなかに やなものがあるんだ
あたしのあたまのなかにも やなものがある
コーヒーでめをさましながら
つくえにむかった よなかの3じみたいな
とげとげのこんぺいとうを
みみから いくつか ほうりこんだみたいな
あたしのあたまのなかにも やなものがある
しってるかな?
むねや あたまのなかに やなものがあると
たいへんなことに なっちゃうんだ
あたしのなか だけじゃない
あたしのそとにまで やなものがみえてくる
あそこのおとこのひとは あたしをきらってるし
あそこのおんなのひとは あたしをばかにしてる
あそこのいぬは わんわんほえるし
あそこのねこは おなかをなでさせてくれない
あのこは ほんとはわるいやつだし
あのひとはきっと あたしにうそをついてる
あのこどもは ぜったい ろくなおとなにならないし
あのおとなは ぜったい ろくなこどもじゃなかった
ああ なんて やなせかいだ
やなものが ひだりがわつうこうで
びゅんびゅん じそく60kmをまもってはしってる
やなものが じどうはんばいきで
ひとかっぷ 150えんで うられてる
すとんとおちた かみこっぷのなかに
みずましするための がりがりのこおりをつめたあと
きれいな みどりいろなんごうかのいろをして
そそがれたものを のむんだよ
こおりで みずましされてるから
これじゃたりないやって
がりがりのこおりまで くちにいれて
ぼりぼりするんだよ
ああ ほんと やなせかいだ
でも こんなふうに
せかいを やなふうにみてるのは
ほかでもない このあたしだ
だったら きっと やなあたし
そうね せかいがどんなに やなものだったとしても
そんな せかいで いちばん やなものは このあたしだ
やなあたし やなあたし やなあたし やなあたし
やなあたし やなあたし やなあたし やなあたし
やなあたし やなあたし やなあたし やなあたし
ひとやすみ
やなあたし やなあたし やなあたし やなあたし
やなあたし やなあたし やなあたし やなあたし
やなあたし やなあたし やなあたし やなあたし
あそこのおとこのひとが あたしをきらってるのも
あそこのおんなのひとが あたしをばかにしてるのも
あそこのいぬが わんわんほえるのも
あそこのねこが おなかをなでさせてくれないのも
ぜんぶ あたしが やなあたしだからだ
あたしのむねのなかにある やなものを
あたしのあたまのなかにもある やなものを
のこらず だしちゃえれば こんなふうに
やなせかいには みえなくなるかもしれない
そしたら あたしは やなあたしじゃなくなるのかな
でも まって!
やっぱり それはやめとくよ
あたしは やなあたしのままでいいから
あたしのむねのなかにある やなものも
あたしのあたまのなかにもある やなものも
このままに しておいてほしい
もし むねや あたまのなかに あるやなものを
のこらず だしちゃったのに こんなふうに
せかいが やなせかいにみえていたとしたら
それは やっぱり あたしが やなあたしだからだ
むねや あたまのなかにある やなもののせいには
もうできなくなっちゃう
いくら あたしが やなあたしでも
それは ちょっとこまる
だから いいよ このままで
せかいを やなふうにみてる やなあたしは
あたしの むねや あたまのなかに
たくさん やなものがあるからだ きっと そのせいだ
うん そうしておこう
あたしのむねのなかに やなものがある
あたしのあたまのなかにも やなものがある
そのせいで あたしは やなあたしだし
せかいまで こんなに やなせかいなのだ
そう見えているひとが、いちばんやなものなことは、よくあるはなし。