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一年生も虜にします

ヒロインちゃんはドミニク王子を最優先にルーカスとも適度に友好を深めている。王子のそばにいるからにはどうしても関わりが増えるのは仕方がないだろう。

アルとも同じクラスなので話しかけてくるそうだがアルは入学後に出来た友人であるベンジャミン・リーツエルと一緒に行動することが多いのでそれを理由に躱しているそうだ。


ここで紹介しておこう。

このアルの友人のベンジャミン・リーツエル。

アメジストのような紫の髪に深い青の瞳でツンデレ系だ。言い方がぶっきらぼうなのであまり友人が多くない。けれど授業開始の際に隣の席のアルが落としたペンを拾ってくれて『お前そそっかしいやつだな』と言いながらも丁寧にホコリを拭って渡してくれたそうだ。それがなんだか面白くてアルは気に入ったらしくそれから一緒にいるようになったとのこと。

私やルシルとの初対面でもツンデレは発揮されていた。


「アルバートに似て兄上殿もさぞ腹黒なんでしょうね」

「アル、こいつは友人か? 殴ってもいいか?」

「友人ですが殴らないでください。口が悪いんですこいつ」


なんて会話もしたなぁ……。

その後ルシルのことも『葉っぱが生い茂っているのかと思いました』なんて言っていてルシルが紅茶をぶっかけそうになったりもした。

その後『目はブルーベリーみたいに綺麗ですけど』と褒めていたので紅茶は無事にルシルの胃に収まった。なんとなく、褒めた時のベンジャミンはもごもごと言いにくそうにしていたがツンデレだからそうなるんだろう。

ちなみにアルが早々に巻き込もうと思ったらしく兄ではなく姉で男装して婿探しに来ているのだとバラしていた。そうしたら『それ、腹黒じゃ……』と呟いたのでベンジャミンの紅茶に砂糖を五つ入れてやったら黙っていた。

結局ルシルにはデレも見せたのに私にはなかったんですが……。

解せぬ。

さすがにエレノア嬢との顔合わせでは失言はなかった。まぁ公爵家だし今はまだ王子の婚約者だし、何より飛び抜けて美人だもんね。

それからお茶会にはベンジャミンも参加するようになっている。


「それで兄上、あのお花畑とバカが何かやらかすのはやっぱり卒業パーティーでしょうかね」

「多分。その頃にはもっと花が咲いてるんじゃないかな」

「それまでもっと必要な物を集めませんとね」


カフェテリアでいつものようにエレノア嬢やルシル、アル、ベンジャミンとそんな会話をしている。近くを通りかかった女生徒が嬉しそうにこっちに向かって手を振ってきたのでにっこり笑って振り返す。女生徒は嬉しそうにキャーキャー言いながら去っていった。


「兄上殿は相変わらず女性におモテになっていますね」

「嫉妬かいベンジャミン君、その紅茶に砂糖がもっと必要なんじゃないか?」


わざとらしく兄上殿と未だに呼びつづけるベンジャミンをあしらいながらミルクティーを一口。うん、今日も美味しい。


「ふふ、ノアのファンクラブに一年生の加入者も増えているらしいわね。アルバート様の人気もあってかしら」


そう、ルシルの言う通り順調にファンクラブの会員は増えている。つまり情報源やもしもの時の味方が増えているということだ。大変ありがたい。

ファンの中には『ノア様とエレノア様、ルシル様をまとめて応援する会』なんかもこっそり出来ているらしい。うーん、これもいい傾向だと思う。その人達は我が家やルシルの家とも懇意ではないので私の事情を知らないんだろうな。でも都合がいいのでまだまだ隠す予定だ。


「殿下はすっかりシャーロット様の虜ですわね。お二人の仲を教えてくださる匿名のお手紙が私の元にも何通も届きましたの。殿下をお諌めしてほしい、王妃に相応しいのはあなただから、と」

「匿名なのがいやらしいですね。まぁ王族相手に諫めるなんて家族や婚約者しか出来ませんけど……」


ため息をついたエレノア嬢をフォローするようにアルバートが応えている。その小さなフォローにエレノア嬢は小さく微笑んだ。

……なんとなく、アルバートの耳が赤いのは見なかったことにしておこう。でも姉は応援してるぞ弟よ。


「ではノアは今学期も他の女生徒達のハートを掴んでいてくださいますわよね」


ケーキを食べきったルシルがそう言って今日はお開きになった。明日からも皆をメロメロにさせてやるぞー!

味方は多いに限る!

気合の入れ過ぎでカフェテリアを出る際に他の子達に投げキッスしたら何人かが倒れてしまい皆に怒られたのは内緒である。


が、収穫はあった。


「ラハンス先輩!」

「……えっと、誰かな?」

「あっ、ごめんなさい。私一年生のシャーロット・トルタです。アルバート君と同じクラスで、お兄さんがいるって聞いて……」


一人で廊下を歩いている時にヒロインちゃんが私に突撃してきた。ファンクラブの存在を知ったらしい。転生者じゃなくても心境的にはイケメンに周りを囲まれていたい、ってタイプなのかもしれないな。

でもこれは悪くはないと思う。本人から誰が一番好きか聞けるかもしれない。ゲーム通りにいってないとか分かるかもしれないし誰ルートが確定すると作戦ももっと立てやすいから。


「トルタ嬢ですね。弟と仲良くしてくれてありがとう」

「トルタ嬢だなんてそんな……シャーロットと呼んでください」

「うーん……あまり女性の名前を呼ぶことにはしていないのだけれど……」

「呼んでください先輩……お願いします!」


うるうると小動物を思わせるような目で見つめられたので仕方ないなという顔をして了承しておいた。

その後手を振って去っていったのだがそれからちょくちょく声をかけられるようになった。私、攻略対象じゃないんだけどなぁ。まぁ好かれるなら上手く使うだけだ。

こうして私は時々ヒロイン本人からも情報を集めることに成功するのだった。

何度か話すうちにどうやら本命は王子。他の男子生徒は気持ちは嬉しいけれど王子の気持ちに応えないわけにはいかないの、みたいな思考らしい。

私が王子との仲を気にするのも私がシャーロット嬢に気があるからだと思っているようだ。別に全く気なんかない。エレノア嬢の方が好みの美人なので。

ヒロインちゃんはお花畑ですね。


このお花畑、私のファンクラブのことは知っているのに私とルシルの婚約説とかエレノア嬢との仲がいい話はどうやら耳に入っていないらしい。

都合がいいことしか聞かないタイプかぁ。面倒くさそう。でもいいか、ほしい情報はくれるのだから。

けれど最近になってようやく私がよくルシルやエレノア嬢と一緒に行動していることに気が付いたらしい。エレノア嬢はドミニク王子の婚約者、でも私と仲良くしている。ドミニク王子と結婚が決まっているのに他にもイケメンを侍らせているのがどうも気に食わないらしいのだとファンクラブの子がこっそり教えてくれた。


「ノア様とエレノア様は秘密の恋人なのかしら」


とこの前ぽつりと漏らしていたそうだ。ルシルも同じくらい一緒にいるんだけどそれは目に入っていないのか、それとも幼馴染だと知っているからなのかそれはなんとも思っていないらしい。やっぱり本命の婚約者だから目につくのかもしれないなぁ。

そうしてなんとなくヒロインちゃんには私とエレノア嬢はいい仲なんじゃないかという考えを持たせつつ私は着々と一年生のファンクラブ会員を増やしていったのだった。

ちなみにファンクラブの子からの贈り物は高価なものは受け取らずにお菓子や筆記用具のみを受け取っている。お菓子もファンクラブの子やエレノア嬢と一緒のお茶会で食べるようにしているので変な薬も盛られずに済んでいる。

……さすがにヒロインちゃんからのお菓子は怖くてこっそりポイした。アルバートも同じ対処をしたらしい。気に入ったイケメン全員に配ってるのかなぁ。

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