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王子は浮気性のバカ王子

そんな入学式からあっという間に二年が過ぎた。私達は明日、最終学年になる。

お互いの関係性も良好周りからはエレノア嬢とルシルが仲良くなりルシルの婚約者である私も一緒に行動している、と思われているようだ。うんうん、いい感じ、想定通り。

反対に王子は相変わらずエレノア嬢を蔑ろにして美人に声をかけてばかりだ。

この二年、私は男子生徒として振る舞い続けた。もちろんバカ王子の数々の浮気の証拠を集めつつ、ね。

あのバカ王子は毎週のようにお気に入りの女生徒を変えてランチにデートにとフラフラしている。護衛のルーカスもそれを止めるどころか美人のリストを作って王子に渡しているらしい。国の未来が不安でしかない。

そんな王子なのに他の生徒がまだ安心できているのはエレノア嬢が婚約者で将来このバカを支えるから大丈夫だろう、と思っているからだ。それくらいエレノア嬢は優秀なのだ。

でもエレノア嬢との仲はすっかり冷めている。

噂で聞いたがエレノア嬢には王妃としての仕事はしてもらうが子供は愛人と作りたい、などとほざいているようだ。一回このバカの頭の中を作り変えてやりたい。


この国は一夫多妻制だ。ただし王族や上位貴族、優秀な家や人手のいる家に限るけど。

なのであのバカはエレノア嬢に仕事だけ押し付けて後は第二夫人とか愛人とか側室を作りまくる気なんだろう。

そんな一つの未来の可能性を以前エレノア嬢に話したら悲しそうに微笑まれた。


「それが殿下の性質であればきっと変わることはありませんわ。私が我慢すればよいだけですから」


って。健気すぎる。そんな健気なエレノア嬢に私もルシルも涙してしまい彼女をびっくりさせてしまったのは三人だけの秘密だ。

こんなことをいうエレノア嬢なのになんでゲームでは悪役令嬢になるんだろう。ストーリー上の都合とか強制力的なやつかもしれないし警戒しておかないと。せめて私やルシルが友達になったことで少しでも変わればいいんだけど。

それから話をして、もしもあのバカ王子がエレノア嬢に「婚約破棄だ!」なんてバカなことを言い出したらどうする? と聞いてみた。シナリオ通りならその未来だってあるからだ。


「その時は……辛いですけれど、受け入れますわ。その後はお二人が私の傍に来て助けてくださるでしょう?」


あっさりとそう言ったものだからまたしても私とルシルは感動で泣きそうになってしまった。感情の昂ぶった私とルシルはがっちりとエレノア嬢の手を握る。


「「もしそうなったら王子にキツイお仕置をしますから!」」


二人してそう言っていた。さすが親友だ。考えることは同じだった。

まぁ婚約破棄の可能性があることを知っていたからというのもあるけれど。


「でもそんなことがないにしても浮気癖はいただけないし……どっちにしても卒業前にお仕置きはしよう」

「ふふ、どちらにしても、ですの?」

「いくら一夫多妻といえどもあれでは国民に示しがつきませんもの。それにこんな素敵なエレノア様を蔑ろにするなんて国民が怒りますわ」

「そうですよエレノア嬢。俺とルシルは国民の怒りを代表してお仕置きするだけですから。なぁ?」

「えぇ、そうですとも。その時はきちんと根回しもいたしますわ」


私とルシルは悪い顔をしているのだろう。それを見てまたエレノア嬢がくすくすと笑う。その様子を見て安心する。

もしも、そんな未来が来た時は彼女へのダメージを最小限にしてあげたい。


「じゃあこれから王子の浮気現場を見つけたら写真を残しましょう。卒業までに誰が一番多く証拠を持ってるか勝負、ということで。負けたら言うこと一つ聞く、でどうですか?」


勝負事にすれば案外積極的にエレノア嬢も動くかもしれない。単なる思いつきだったけれど、次の日早速エレノア嬢は三人分のカメラを用意していたので乗り気だったらしい。

それから毎日のように王子の浮気現場を発見しては写真を取り放課後のティータイムで報告し合う日々が続いた。

エレノア嬢はドミニク王子と一緒に一年の時から生徒会に所属していたので毎日三人揃ってのティータイムではなかったけれど。

エレノア嬢曰く「生徒会のメンバーにも手を出しているのでその証拠が集めやすいですわ」とのことだった。まぁ生徒会室での密会とかいちゃつきは私達一般生徒には見ようがないからなぁ。基本的に用事がないから入室許可もないし。


さて、それではそのバカ王子の浮気のほんの一部を紹介しようと思う。


一年の春、同じクラスの中で一番に美人のローレッタ嬢にしつこく声をかけていた。その他の女生徒にも同じく声をかけランチにティータイムにとデートを繰り返していた。


一年の夏季休暇、三日おきに移動し夏季休暇中カミラ嬢を始めとする何名もの令嬢の別荘で過ごしていた。エレノア嬢には誘いの声掛けすらなかった。また、当然夏季休暇中の課題は未提出だ。王子相手では教師陣も強く出られなかったのである。


一年の秋、同学年の令嬢にはほとんど声をかけたので上級生に手を出す。二年で一番の美人ソフィア嬢と三年で一番の美人ヴィオラ嬢を始めとしてどんどん声をかけていく。


一年の冬、冬季休暇、王家主催のパーティーや各家で開かれるパーティーに参加し学年関係なく上位貴族の女生徒らとべったり。エレノア嬢のエスコートは一度もなかった。


二年の春、新入生。特に成績一番の可愛らしいレベッカ嬢がお気に入りだった様子。その後も順次目をつけた下級生に声を掛けていく。


二年の夏季休暇、昨年と同じく三日おきに移動し夏季休暇中パトリシア嬢を始めとする様々な令嬢と別荘で過ごしていた。


二年の秋、生徒役員となったのでその権力も使い始める。ただでさえ王子というだけで皆声を掛けられれば断ることなど出来ないのに生徒会権限での呼び出しでは成績に影響が出ないとも限らない。応えるしかない。仕事が面倒だからと生徒会長にはならなかったことがまだ幸いだ。会長になっていたらもっと職権乱用していたことだろう。

この頃には特にお気に入りの令嬢を週代わりでランチやデートに誘っていた。もちろん証拠写真もたんまりある。


生徒会長であるヴィンセント・ウィズダム様にももし王子の王族らしからぬ振る舞いや逢引などを見かけた際はこっそりご連絡を、とお願いしておいた。「エレノア嬢が心配なのです」と言えばあっさりと了承してくれた。

一応「エレノア嬢には内緒で俺に連絡を」と伝えておいた。こう言えばこっそり私が動いているのだろうと思ってくれるだろうという期待を込めて。


二年の冬の各家を招いての王家主催パーティーでは来年入学予定の令嬢ら何名かに目をつけたらしく声を掛けていた。ダンスにも誘っていた。当然エレノア嬢は声を掛けられることもなく終始無視されていた。


と、そんな調子でかなりの生徒に声を掛けて手を出していた。

まぁ大半は既に婚約者もいる令嬢なので婚約している男性達はハラハラだったことだろう。想い合っているならば王子の浮気性は一時的なものだからと男性も女性も王子が飽きるまで、と考えていたらしい。

だが中には王子に気に入られている、側室になれるかもしれない、と思った令嬢やその親達もいて元々の婚約がなかったことになった令嬢もいる。婚約もなしになったのに飽きられてしまってその後声の掛かっていない令嬢は片手では足りない。けれど相手は王族だ。文句も言えず新たな婚約者探しに奔走したりまた王子に気に入られようと努力したりしてるようだ。

そういった証言も集めている。これはエレノア嬢は表立って確認したり証拠を集めたりするとまずいので私やルシルが証拠集めに動くことが多かった。女生徒の証言はルシルが、男子生徒の証言は私が集めた。

王子は学園の男子生徒からは裏で疎まれていた。もちろん皆そんなことおくびにも出さないが。自分の婚約者が狙われないだろうか、婚約者との仲にヒビを入れられないだろうか、と落ち着けなかったことだろう。

私は事情を知らない家の男子生徒からは同じく男子だと思われていたので皆ペラペラと喋ってくれた。そして何人かには「エレノア嬢と婚約する時は祝福するからな!」と言われた。どうやらもしバカ王子が何かしらやらかしてエレノア嬢との婚約がなかったことになったらこんなに親しいのだから公爵家から私にエレノア嬢との婚約の打診が行くのではないかと思われているらしい。

もちろんルシルという存在がいるが私達は三人での行動が多かったので仲は良好なため、エレノア嬢が正妻、ルシルが第二夫人になるのだろうと思われているようだった。家柄的にも公爵家に婿入りするなら一夫多妻が可能になるしね。

これはルシルが集めてきた女生徒からの発言にもあったらしい。王子からの声掛けに困っている生徒などは早く王子が何かやらかさないだろうかと思っている人も多いらしい。そりゃあんなに声を掛けまくっていたらいくら見目が良くても次第に幻滅する女生徒が多数だろう。


こうして王子の評価は学園に入学して二年であっという間に落ちた。もちろん裏でなので表立っては誰も口にしないが。


「さて、次の入学式ではきっとヒロインちゃんがやってくる。彼女は誰狙いなんだろうね。王子狙いならエレノア嬢の解放が楽なんだけど……」


ポツリと寮の自室で呟く。ルシルは今エレノア嬢と図書館だ。


「下準備は上々。例えヒロインちゃんが誰ルートに進もうともエレノア嬢は幸せにしてみせる」


明日はヒロインの入学式。気を引き締めなければ。

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