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星に願いを

作者: すのーきゃっと

キラリと光る星。

私は待ってるあの人を。

何年でも何十年でも。

私の未来の旦那様。

きっと再び会える。


あれは10年前。

私がまだ10歳の頃の話。

流行り病に侵された私。

村の言い伝えで流行り病に侵されたものは森の奥深くの神殿へと連れて行かれる。

そこは死の神殿。

神殿の前には大きな十字架が立っていてそこらから神殿は聖域だという。

私は治る見込みがないと思われそこに連れて来られ。

最低限のお世話だけされる。

最低限の食料と水。

そして私の死を待つ人達。

お母さんと引き離されてこの村に来た。

なぜ引き離されたのかもわからないまま、知らない土地で朝から晩まで畑仕事や家事を手伝わされた。

お母さんは綺麗なヒラヒラの服を着て毎日祈りを捧げていた。

神殿の前にある十字架の前で。

この神殿の十字架に似ていたな。

そう思いフラフラな足で神殿から出て十字架の前に行く。

そして祈った。

「お母さんに会いたいから行きたい。生きてお母さんに会いたい。」

強く強く祈った。

目を開けるとそこは眩い光の中で私は一人の男の人と出会った。

その人は手を私にかざす。

温かいものが体中を掛け巡る。

そして何かと黒い物体が私の中から出ていった。

「呪いだ。あの村の連中はお前に呪いをかけて殺そうとしていた。」

「なんで私を?」

「お前が光の妖精の愛子だから。」

「妖精の愛子?」

「妖精に愛されし子だ。悪しき心を持つ者たちにはお前は目障りなんだ。だが妖精達が黙ってると思ってること自体がおかしいのにきづかない馬鹿な奴らだ。不作なのをお前のせいにして、お前を呪い殺そうとしたんだ。不作なのはお前をひどい目に合わせている報いだとも知らずにな。」

「あなたは誰?」

「俺は未来から来た。お前を助けるために。妖精達に言われた。俺の未来の嫁が大変なんだぞって。」

「未来の嫁?」

「そうだ。」

「私があなたの?」

「そうだ。」

「うーん。おじさん何歳?」

「おじさん!?俺は23だ!まだお兄さんだ!」

「私、10歳だよ?13歳差の旦那様?」

「ちがう!未来から来たんだよ。」

「すごい!未来から来れるんだ!」

「お前はこれからあの村を出て東にあるクイナっていう町にいるサシェっていう人を訪ねろ。夢見でお前が来るのをきっと知ってる。」

「夢見?」

「予知夢とかそんな感じでこれから起こることがわかる人だ。」

「わかった!足には自信あるし、妖精さんたちついててくれるなら無事つくよね。」

「物分りのいいやつだな。お前。」

「おじさんがいい人なのはわかったから。」

「おじさんじゃねえーよ。リクだ。ラン。」

「なんで私の名前?」

「俺の未来の嫁だからな。」

そう言って金色の髪ブルーの瞳の男の人はにっこり笑うと私の前から姿を消した。

私はそれから荷物もないからその足でそのまま東に向かって歩き出した。

いないのがわかればきっと追いかけてくると思ったから険しい道を選んだ。

こんな道10歳の子が歩いていけないような道を足にマメを作りながら途中で木の実や果物を食べて川の水を汲んで飲んでなんとかクイナに着いたのはどのくらいたってただろう。

クイナの町に入ると綺麗な女の人が待ち構えていた。

「ランね。ようこそクイナへ。妖精達の愛子よ。疲れたでしょ?まずはお風呂に入ってゆっくり休みましょうね。」

わけもわからず言われるままにお風呂に入ってふかふかなベッドに案内されてすぐに寝てしまった。

『ここに10歳くらいの少女は立ち寄ってないか?銀色の髪に緑色の目をした子供だ。』

そんな声が聞こえてビクッとして目が覚めた。

『そんな小さな子がこんなところまで来れるわけないんじゃないか?あの深い森を抜けてくるとは思えないね。』

『匿ってはいないだろうな?』

『匿ってるとは?その子どういう子なんだい?そもそもヒシャの子供たちがこの村にくるメリットなんてないだろ?』

『お前には関係ない。もしそういう子見かけたらすぐヒシャに連絡くれ。絶対に匿うなよ。』

『なにが匿うなよだよ。本当に。』

布団の中に隠れてブルブル震えている私。

呪いをかけた人達が私を探しているんだ。

見つかったらまた呪いをかけられてしまうんだろう。

そんなのやだ。

カチャっと音がしてビクッとすると

「なんだ。起きちゃったのか。さっきの声もきこえちゃったね。大丈夫だよ。お前のことは私が守るよ。」

布団ごと私を抱きしめてくれる。

「大丈夫。大丈夫だよ。」

優しい声。

何度も何度も繰り返してくれる声にすっかり安心して私は眠ってしまってんだ。


それからもヒシャから何度も人が私を探しにきた。

そのたびにクイナの人々が追い払ってくれた。

5年もたてばもうヒシャの人達も私を死んだと思ったのかそれともヒシャは酷い不作が続きどうにもならなくなっているとも聞いたので人々は離散して私の事どころではなくなったのかもしれない。


さらに5年たった。

夢見であるサシェさんは結婚して子供もいるから私は独り暮らしをしている。

薬草を取りにいき調合して薬屋を開いている。

リクにはまだ会えていない。

あとどのくらいで会えるんだろう。

未来からきたリク。

あのときは23歳だった。

おじさんなんて言ってしまったけど。

私もあと3年でリクと同じ年になる。

おばさんになってしまう。

教会にある十字架の前で毎日祈りを捧げる。

この村のみんなが幸せであるように。

そしてリクに会えますようにと。

祈り続けて10年。

リクにはまだ会えてない。


夜空に星がたくさん出ている。

「綺麗。なんで会えないのかな。」

「それは俺が王宮魔法騎士団長だからだよ。」

「そっか。王宮魔法騎士団長……え!?」

目の前には金色の髪にブルーの瞳の昔と変わってない姿のリクがいた。

「全然変わってない。」

「ランは髪の色と瞳の色は変わらないけど綺麗になったね。女性らしくなった。」

そう言われて頬が熱くなる。

「少しは俺の魅力に気づいてくれたみたいで良かった。」

そう言って笑うリク。

「おじさんなんて言ってごめんね。」

「まぁ10歳の子から見ればおじさんだし。」

「光の妖精の愛子に見合うように王宮魔法騎士団長になって迎えに来た。」

「ただの薬を調合して売ってる薬屋だよ。」

「いや。ランの売る薬の評判は聞いてるよ。」

「気にかけてはくれてたんだ。」

「もちろん。未来の花嫁だしね。」

「私はどこにいるかもわかんなかったのに。」

「ランが俺のことを想って10年も祈ってくれてて嬉しいよ。サシェさんから聞いてたよ。」

そう言って私の頭をポンポンとする。

「リクは今何歳?」

「23歳。」

「10年たつのに変わってないの?」

「俺はつい最近10歳のお前を助けたからな。物心ついた頃からランが嫁になり俺は助けに行かなきゃいけないの知ってたから頑張って魔法騎士団長になった。ランの呪いを解くためにね。サシェさんの亡くなったお母さんから俺はそれを聞いた。」

私の手を握るリク。

大きな手。

私はその手をギュっと握る。

頬にその手をあてる。

温かい。

「ラン。そういうこと気軽に他の男としちゃだめだぞ。」

「リクとしかしないし。リクの手が好き。大きくて安心する。」

そう言ってリクの手を頬にあてる。

リクは笑ってそんな私を見ていた。


「助けてくれてありがとうリク。」

「覚えてくれててありがとうラン。」


私達は星空の下でそっとキスをした。

その瞬間、キラキラ輝く花びらがあたり一面に舞っている。

妖精達が笑顔で杖を振っているのを私が見つけるとパッと消えてしまった。

恥ずかしがり屋の妖精達なのかもしれない。

「妖精さんたちいつもありがとう。」

私がそう呟くとより一層強い輝きを放つ花びらをあたり一面にふらせた。

私とリクはその光景を一生忘れないだろう。

私達は顔を見合わせてもう一度キスをしたんだ。

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― 新着の感想 ―
[一言] 穏やかなお話の展開にほっとしながら読みました。 運命に導かれたふたりが幸せに過ごせたらいいなと思います。 すのーきゃっとさん、素敵な作品をありがとうございました。
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