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神殻の神駆り  作者: 我有一徹
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二章 3

 お昼のニュースは九州での震災の悲惨さがこれでもかと紹介され、見る者を恐怖させようとしていた。


 カレーの残りを平らげてテレビを眺めていると、玄関のインターホンが鳴った。


 先輩が来たのだ。


 私は食器を流しへ置いて先輩を迎え入れた。



「あ、お父様は?」

「地震で職場から呼び出しが掛かって、仕事に行きました」

「そう。良かった、というべき?」

「はい」



 私は先輩の気遣いに改めて嬉しさを噛みしめた。


 家族の悩みを打ち明けたのは、後にも先にも先輩だけだった。その先輩に回復の兆しを認めてもらうのは、医者から病気の完治を告げられるようなものだった。



「でも地震がきっかけというのは複雑な心境ね」

「はい」

「だとしても、喜ぶべきことだと思う」

「ありがとうございます」

「それじゃ常世の国へ……、行く前に」

「先輩?」



 リビングまで来ていた先輩がきびすを返してキッチンへと入っていく。私のエプロンを手早く身につけ、そうかと思うと蛇口を捻り、私が置いた食器を洗い出した。



「それは私がやりますから!」

「気にしないで。私が気になるだけだから」

「そんな」



 家事を教えてもらったり、やってもらったりする代わりに洗い物は私の担当だった。


 父が仕事に行ったことで気が抜けたのか、先輩の目にとまり、あっという間に洗い物を片付けられてしまった。


 私が呆然と眺めていると、銀色の蛇口を締めた先輩の濡れた手が止まった。



「先輩?」

「佳那は怖くないの?」



 先輩の手は震えていた。常世へ行くとき、先輩は家族との別れを覚悟しているのかもしれないと思った。



「私は」



 父親の復活もさることながら、神様でFPSができるというのが、新しいゲームを始めるみたいに楽しみになっていて、怖さを感じるどころではなくなっていたのだ。


 私は目を伏せて、正直に言うまいか迷っていた。


 エプロンで手を拭いた先輩が正面にやってきて、私の肩を掴んだ。先輩からは想像もできないほど力強く、私をなにかから引き戻そうとしていた。



「これはゲームじゃないの。失敗できないし、負けてもいけないんだよ?」



 先輩の目は真剣な涙で濡れて、鋭く研ぎ澄まされていて暖かい。


 先輩という人間の本質がすべて混ざった色をしていた。


 先輩の目は心を覗けるのだろうか。私が心の奥底でワクワクしているのを見透かしていた。そこまで気持ちを汲み取ってくれる人間は、母以外では初めてだった。



「なぜ嬉しそうな顔をするの?」



 先輩が信じられないという顔をして、離れた。


 少し寂しかった。肉体だけではない部分でも距離を取られてしまった気がした。



「先輩は、私が守りますから」



 私はなにも言わなかった。実戦を楽しみにしていることも、心配してくれたことに感謝していることも、言うべきではないと思った。言えば、先輩は混乱させてしまう。実戦を前に精神を不安定にさせるのは悪手だ。先輩には落ち着いてもらって、私はフォローに専念する。目的の達成より生還を目指すつもりだった。



「そろそろ行きましょうか」



 私は明るく振る舞い、先輩の追及をかわした。



「そうね」



 先輩の目は諦めていなかった。まだまだ私を真人間にしようと説得する気でいる。それはそれで嬉しかった。先輩の手で真人間になれるものならなりたかった。


 でも、それは今じゃない。いくら先輩の願いでも優先順位を変えることはない。


 私と先輩は、私の部屋に閉じこもるとカムナオヌシから預かっている木製のゴーグルを持ち、向かい合って立った。これはもう、神の国へ行くための儀式だった。深い海へ潜る前に深呼吸するような、そんな面持ちでお互いの顔を見た。



「準備はいい?」



 先輩の目は切り替わっていた。迷いや執着をそぎ落とし、俗な願望も捨て去った人間の極限。神事に挑む巫女の顔を見たことはないけど、こういう顔なのだと想像できた。



「いつでもどうぞ」

「行こう」

「はい」



 私と先輩の息が合っているのかまだわからない。でも木のゴーグルをするときの動作は揃っていたと思う。


 水分を含んだ木の肌にはまだ慣れなかった。しっとりとして冷たいのに、よく研磨されているからさらりとも感じた。冷血動物のようなさわり心地だった。


 ゴーグルの鏡に小さな光の粒があり、それが大きくなってトンネルの出口になる。トンネルを抜けてしまうと足は雲を踏んでいた。鏡に映るのは一面の雲と。



「よく来てくれた」



 顔を習字紙で隠したカムナオヌシだった。


 カムナオヌシがいることを確認した私は、すかさず気色の悪い木のゴーグルを外した。


 先輩もゴーグルを外して、青ざめた顔を晒した。実戦への恐怖や家族のための覚悟がせめぎ合っているのだろう。


 なお、前回の失敗を踏まえ、今日の先輩はパンツスタイルである。


 これはこれで可愛らしい。



「神殻と蛭子さまが待っている」



 カムナオヌシは、人間の小娘がどれだけの葛藤や覚悟を抱えてここへ来ているか察することもなく、くるりと背を向けて雲の上をすーっと移動していった。



「気になってたんだけど、どうして神殻だけ呼び捨てなの?」



 私は大して興味もないのに尋ねた。



「可愛くないときに可愛いと言われても嫌だろう」



 カムナオヌシの即答に私は思わず先輩の方を見た。予想だにしない回答に面食らったので先輩の意見を聞いてみたくなったのだ。先輩も目を丸くして私を見ていた。意図しない形で緊張がほぐれ、私と先輩は吹き出した。



「なに、今の?」

「わかりません」



 二人で頬を緩ませて、不可解な説明を追求してやろうという気分を共有した。



「神殻って女の子?」

「男だと聞いている」



 質問してからマヌケだと気付いた。昨日見た腕や脚の筋肉の付き方からして、女性を想像するのは難しかった。筋肉を鍛える女性がいるのも事実だが、神の世界でそういう女性がいるのかというとややこしいことになる。多様性と不自然という言葉を、私が重なり気味で捉えているからかもしれない。



「どうして可愛いという言葉で説明をしたんです?」

「わかりやすいと思ったからだ」



 私と先輩が交互に質問をぶつけるも、カムナオヌシは予め質問を知っていたかのようにサクサクと答えていった。



「他の神様はどうしてるの?」



 私はなんとなしに訊いた。日本には神社がたくさんあり、家単位で神棚を設けているところもある。



「常世の政をしていらっしゃる」



 カムナオヌシは変わらぬ即答をした。ただ、今までと違って歯切れの悪い回答だった。


 結局、他の神はなにをしているのだろう。わからずじまいだ。


 カムナオヌシと歩いていると小山のような社が門を開いて待ち構えていた。


 カムナオヌシが入り口で一礼して入る。私と先輩もそれに倣って一礼し、踏み入れた。


 木組みの介護ベッドはすでに起こされており、神殻と蛭子がひな人形のお内裏様とお雛様のごとく揃って出迎えた。



「巫女たちよ、よく来た」



 蛭子の嬉しそうな声が木霊した。決して大きくはないのに反響する不思議な声だった。


 蛭子は以前見たときより、さらに改造が進んでいた。腕や腰に金属のパイプが張り巡らされているのだ。改造と言って差し支えないと思う。



「蛭子がとんでもないことに。それに、あそこにいるのはだれ?」



 二柱の間で、カムナオヌシとよく似た格好の存在がいた。


 黒子ならぬ袖なしの白黒子で、顔に習字紙を垂らして隠していた。カムナオヌシより大柄で、立派な上腕二頭筋の持ち主だった。直立不動で待ち構えているのに威圧感がある。



「オオナオヌシだ。武器や強化外骨格を作っている」

「へー」

「戦はオオナオヌシの言葉が役に立つだろう」



 カムナオヌシはそう言って紹介を済ませると、私と先輩を置いて社の奥へと引っ込んでしまった。



「汝らの戯れを見た。そして、汝らの好みとする武器を作ってみた」



 オオナオヌシは、カムナオヌシに輪を掛けて無愛想だった。


 オオナオヌシの言葉のあと、神殻と蛭子の傍にARとSG、LMG二丁が介護ベッドの横へふわりと現れた。神殻と蛭子はベッドから足を降ろし、背中に武器を背負い始めた。



「二柱とも自然に動いているように見えるけど?」

「戦の動きは難しい。汝らの支えが要となる」

「そうなんだ」



 オオナオヌシは太い腕を組んで、武器を装備する二柱の神々を見上げた。自分の作った武器を身につけられるのが嬉しそうだった。


 プライバシーの侵害ではあったけど、そんなことが気にならないくらいワクワクしていた。先輩が心配するのもわかる。私はFPS中毒になっていたのだ。



「それで今日はなにをすればいいんですか?」

「地に降りて黄泉の者どもを討ち果たしてもらう」

「黄泉の者を倒せば、地震は収まる?」

「否。黄泉の者を率いる女神を止めねばならぬ」

「わかりました」



 先輩は目的を確認し、木のゴーグルを付けて姿を消した。


 それに合わせて蛭子の首がキョロキョロと辺りを見回し、私を見た。



「帰るときは?」

「こちらで二柱の神を引き上げる綱を降ろす。それに掴まってくれ」

「わかった」



 帰り道の確認をしてゴーグルを頭に付け、ようとしてやめた。



「もし女神を止められなかったら?」

「その時は吾かカムナオヌシを呼べ。綱を降ろす」

「撤退もありってこと?」

「然り」

「了解」



 少なくとも無謀な挑戦ではないことを確認しておく。でないと、責任感の強い先輩を言い含めて引き上げることができないからだ。



「あ、大事なことを聞き忘れた。黄泉の者って反撃してくる?」

「してくるだろう」

「彼らに捕まったりしたら、私たちはどうなる?」

「黄泉へ連れて行かれるだろう」

「つまり死ぬってこと?」

「然り」



 オオナオヌシは、大きく頷いた。


 私はゲーム感覚だった。でも、死ぬ気なんてさらさらない。先輩だって殺させない。生還が第一だった。


 オオナオヌシの言葉をそれなりに重く受け止めて、木のゴーグルを付けた。


 ゴーグルの中の鏡に神殻の視点が移ると、神殻の内部にある雲の椅子へ腰掛けていた。左右の手元を確認すると軽い叩き心地の木のキーボードとマウスがある。武器は背中にあるが、キーを叩いてもマウスをクリックしても構えることすらできない。昨日の入念な設定が反映されているか気になるところではあった。



「備えよ。地に降ろす」



 どこからともなくオオナオヌシの声が聞こえた。



「地に降りたら、吾がなすべき事を示そうぞ」



 今度は蛭子の声が聞こえた。



「先輩、大丈夫ですか?」



 私は試しに呼びかけてみた。



「あ、私たちも喋っていいのね。ええ、大丈夫。練習したもの」



 先輩の声は落ち着きと緊張を兼ね備えていた。私との練習で自信を付けているのは嬉しいことだった。



「天下り、天津神の威を知らせ給え。ぉぉぉおおおおおおおおお!」



 オオナオヌシが突如として雄叫びを上げ、思わず肩が跳ね上がった。



「う、いやあああああああああああああ!」



 次いで先輩が悲鳴を上げた。



「うううう、リアルすぎいいいいいっ!」



 私も思わず叫んだ。


 社の床が抜け、神殻と蛭子は空から自由落下していた。凶悪な風の音が神殻の中にいる私の耳元で巻き上がる。ゴーグルの中には真っ逆さまに落ちる視点が広がり、終端速度で近づいてくる地表は凶器のようにも見えた。



「落ち着くのだ。地に降り立つまでは、吾と神殻の務め。怖れるものではない」



 蛭子が呼びかけ、先輩の絶叫が収まる。そのままずっと静かなので私は不安になった。



「先輩?」



 気絶していないことを願って呼びかけた。



「え、ええ。大丈夫。聞こえてる」

「よかった」

「絶叫マシンとか苦手ですか?」

「大嫌いな方ね!」



 先輩はヤケクソ気味に叫んだ。



「降り立つぞ」



 蛭子が言うと、視界がぐるんと一回転し、神殻が銀色の義足を地面に向けた。



「う、たっか!」



 私はあまりの視点の高さに雲の上に座っているのに脚がすくんだ。砂丘のある鳥取市に着地した蛭子と神殻は、小さな山を一跨ぎできるほど巨大だったのだ。


 予言された中国地方には、長い髪を乱れに乱れさせたぼろ切れに身を包んだ女が、ガリガリに痩せ細った腕の先へ刃物のような爪をぶら下げて佇んでいた。



「黄泉醜女どもだな。まずは、あの者たちを討つ」



 蛭子の指示を受け、私はマウスを右クリックした。神殻がARを構えると、ゴーグルに近代的なドットサイトが映る。



「すご、操作感は完全にゲームだこれ」



 私の中にある感動は、新しいゲームに出会ったときのものと同じだった。


 敵は黄泉醜女という黄泉の者。ゲームのノリで、ためらいなくトリガーを引いた。


 弾道は素直にまっすぐ。集弾率も高く、鉛玉の隊列が駆け足で飛んでいく。それらは棒立ちする黄泉醜女の頭へ襲い掛かり、墨色の血煙を飛散させた。



「黒い血しぶき?」


「おお、見事だ!」



 私の困惑に、蛭子は喝采を上げた。


 黒い血煙が空へ登った。それが彼らにとっての戦いの狼煙だった。



「気をつけろ、群がってくるぞ!」



 蛭子が固い声で告げた。


 黒い人影が、中国山地の向こう側に雨後の竹の子のごとく立ち上がった。山脈よりも巨大なくせにどこかに潜んでいた。悪質なリポップを彷彿とさせる。


 私はARを準備しながら、ゾンビサバイバルに近い戦いだと考え直した。



「先輩! 私が前方で引きつけるので援護をお願いします!」



 私は喋りながらシフトキーを押しっぱなしで神殻を走らせた。神殻は障害物を勝手に飛び越えて、中国山地を乗り越えようとしていた。



「わ、わかった!」



 先輩からうわずった了解を得て、私はマウスホイールを少しだけ回した。それに反応した神殻がARを背中へ背負い、次いでポンプアクション式の銃を義手で掴んだ。


 前進していくと長い爪を振り上げた黄泉醜女の一体が襲い掛かってくる。SGの照準を合わせてマウスをクリック。破裂音と共に黄泉醜女の胸が爆散した。


 黒い血の霧が視界を塞いだ。



「佳那の後ろ! 撃つから!」

「どうぞ!」



 先輩の警告を聞きながらスペースキーを押してジャンプ。



「えっ!」



 神殻の跳躍力が凄まじく、中国地方を飛び出して隠岐諸島まで飛んでしまった。



「どこに行く気だ?」


 私の操作に対し、蛭子が怪訝な声を出した。


 そう言わないで欲しい。神様のスペックなんて把握していないのだから。


 夏の日差しで青々とした波をうねらせる日本海の浅瀬に着地すると、私は再びスペースキーを押して、ジャンプで元の場所へと戻った。


 先輩のLMGが雨あられの銃弾をばらまき、私の背後から襲い掛かろうとしていた黄泉醜女を蜂の巣にしていた。


 私が倒した相手と、先輩が穴だらけにした相手、それぞれから血の黒煙が立ち上がってさらなる集団を誘き寄せた。空からの眺めをすかさず報告する。



「西側からわらわら来ました!」

「マガジンが空になるまで撃つからフォローをお願い!」

「わかりました!」



 先輩の提案にしたがい、私は射撃を控え、先輩に射線を譲るために背後の警戒をした。


 LMGは装填数の多い銃で、かつ射程もそこそこある。遠くから面に向けての射撃が一番活躍できた。先輩は初心者ながら武器の長所を捉えていた。


 大挙して押し寄せる黄泉醜女の先頭がばたりと住宅地に倒れ込んだ。家屋を押しつぶすこともなければ、その身体で潰しているであろう自動車の走行を妨げることもない。よく見ればベビーカーを押す歩行者の姿だって黄泉醜女の身体の下にあった。



「現実に干渉してない……。見えない戦いなんだ」



 誰にも知られず、評価もされない。オフラインゲームと同じだった。


 先輩のLMGが順調に敵の数を減らしていた。


 彼らの身体から出る黒煙が入道雲のように空で固まっていた。



「SRがあれば先輩の手伝いができたなー」

「考えておこう」



 私の一人反省会にオオナオヌシが答えた。



「そろそろリロードする!」

「いつでも!」

「撃ちきった!」

「スイッチします!」



 私は先輩の後ろから走って敵の大群へ迫った。持ち替えたARのトリガーは引きっぱなしで、正面とその後ろの敵が倒れるのを確認してSGへ切り替える。先輩のリロードが終わるまで相手の進軍を妨害するのだ。注意を引きつつ少しだけ数を減らした。


 SGの最大の欠点はその射程だった。近づかないとまともなダメージが出せない。私は大群の正面に陣取り、正面と左右にテンポ良くSGを撃ちながら、少しずつ後退した。



「先輩、まだですか!」

「あと少しなんだけどっ! 頑張って蛭子ぉ!」



 なにかトラブルがあったのか、先輩が悲鳴にも似た叫び声を上げた。


 嫌な予感を憶えていたら、SGのマガジンが空になり、Rキー、装填のキーを押した。



「あれ?」


 SGのリロードが始まらず、私はもう一度Rキーを押した。


 神殻がマガジンを持った手をブルブルと震わせていた。



「ここまでだ。綱を降ろす」



 オオナオヌシの声で、二柱の神に限界が来たのだと悟った。


 忘れていたが、彼らは今まで眠っていたり、海を漂っていたりしてまともに身体を動かしていなかった。ここへ来てリハビリを始めたばかりなのだ。


 鳥取砂丘に二本の綱が垂らされた。


 私が操作しなくても、神殻はそれに向かって走り出していた。


 ゴーグルを外すと、中国地方を神殻の目線で一望できた。黄泉醜女たちは背後から追いかけてくる。あと一時間くらい掛かりそうな数が残っていた。



「まだ全然倒してない」



 惨憺たる結果だった。ゲームの腕だけではどうにもならない要素はストレスである。



「私、蛭子はもっと動けるものと思ってた」

「骨のない吾はこんなものだ。あまり気にするでない」



 先輩と蛭子は反省会を始めていた。



「ごめん、無理させた」



 敵前でのリロードは危うかった。神殻を犠牲にするところだったのだ。



「神殻は喜んでいる」



 蛭子が通訳してくれた。その通りだったら嬉しいと思う。


 二柱の神は砂丘に下ろされた綱を掴み、高天原へと退き上げられた。



「地震、止められなかった」

「……ですね」



 先輩の悲しそうな声につられて、私の声も暗くなった。

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