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バレンタインの謝罪

作者: 雅也


                  


 最近時々だが、妻は帰りが遅くなる事がある。

 今日もその日だ。


「ごめんね、今日も遅くなるの」

 毎月の月末になると、決まって残業になる日があるのは分かってはいるが、最近になって、いつもより遅い帰りになる事が、週のうち数回ある。


「大変だな。 先月もだが、日は跨がないが、結構遅くなるから、連絡くれたらオレが会社に迎えにいこうか?」

 コレに妻は、拒否してきた。

「いいわよ。 あなただって疲れてるんだから、わざわざ車で15分くらい飛ばしてくる事も無いわよ」

「でも11時ちかくになる時だってあるんだろ? だったら....」

「あはは、ホントに良いのよ。 時間的に結構バスだってまだある時間だし、それにあなただって一人の時間が持てるでしょ? 気にしないで」


 そう言われてしまっては........。



            △



 最近の妻の行動が怪しいと思ったのは最近だ。 働きだして丸一年経ち、内容も慣れてきて、楽しいとも言っている。



 夫は 大橋おおはし 大優だいゆう 27歳の結婚3年目で、インターネット関連の仕事で、殆ど家に居る。 時々は勤務先の会社に出向くが、殆どが自宅でPCと睨めっこの業務内容だ。

 健康に気を使い、週2回、筋トレの為、ジムに通っている。


 妻の名前は  大橋おおはし 由香ゆか 26歳である。

 勤め先は、大型ショッピングモール内の、食品コーナーで、食材の陳列をメインに行っていて、シフトが午後4時から8時までの4時間の勤務だ。



 この夫婦、別段妻が働きに出なくても、夫の大優がそこそこの稼ぎなので、生活に困ることは無い、むしろ余裕のある生活を送っている。 なのに、由香は家の中にずっと居るのが居たたまれなくて、少しでも蓄えがあった方が、何かあった時に役に立つからと言う理由で、自分で職探しをし、好きな大型スーパーで働く事にした。


 そんな中、2か月前くらいから、時々仕事帰りが遅くなることが一週間に二度ほどある。 特に、月末に多いというのは聞いていた大優だったが、夜11時近くにもなる事に、少々の不安と疑念があった。


 ある日の夜、どうしても不審に思った大優は、由香が風呂に入った時をみて、スマートフォンのメッセージのやり取りを見ようとした。 だが、ロックが掛かっており、暗証番号も知らない事から、一切のスマホからの情報は取れなかった。

 大優のスマホはロックこそ掛かってはいるが、暗証番号を由香も知っている。 なにも疚しい事は無いので、いつ内容を見られても平気だ。 だが、この由香のスマホが見られない事に、不信感が心を埋めていき、気になり出した気持ちに歯止めがきかなかった。


 由香が就寝した後、しっかりと寝入った事を確認して、由香の右人差し指を使い指紋認証を解除し、由香のスマホのメッセージのやり取り、証拠になるであろう、写真・動画などを見て見たが、一切の疚しいことは無く、むしろ、献身的な妻の役目を果たしている良心的な由香の日常があった。

 それでも生活のパターンはそのまま続き続けるので、コレはコレでそう言う職場だと思っていたのだが、ごく偶に、日付が変わりそうな時間に帰宅する事も月に一度はあったので、さらに怪しいと思った大優は、興信所に相談してみる事にしたのだが、インターネットで下調べしてみると、自分が思っていたのとは違う価格なのには驚いた。

 もし長期になると、さすがに自分の所得では払えきれない事と分かったので、それは諦めた。



             △



 由香が遅く帰宅するようになってから、四か月が過ぎた。


 あの疑惑からそれだけの月日が流れて、由香の生活態度は変わらないものの、大優との夜の営みは普通にあったので、そこは普通に対応した、 が、まだモヤモヤしている心中だった。



 それからも、やはり遅い帰宅時間が続く由香だが、いまだに怪しいと思う大優は、その後も何処かでポカをするんじゃないかと思っていたのだが、その後も全く証拠が掴めていないのが実情だ。

 職場で遅い帰りの時に、嘘を言って、どこかの男と会っているのかと思い、由香の終業後に、後をつけて見たのだが、全く普通に帰宅していたものだから、疑いようもなかった。


 色んな事をネットで探していると、メッセージアプリと言うものは、ウラアカと言うものがあると言う事に気づかされた。

 そこには 裏垢 に関する事が、事細かく説明されていて、設定の仕方・裏垢の見つけ出し方法などが載っていた。


(裏垢って言うの、あるのは知っていたんだけど、こんな、なんだな)

と思い、取りあえずPCで探しはじめた。


 ところが、コレが中々で、苦労して探してみるものの、全くもって探しきれない。 それでも何とか根気よく探してみる........が、全く成果なく、でも日々は過ぎていくばかり。

 数日探してみるが、全く結果が出ず、とうとう諦めてしまった。


 それでも毎日の生活は、坦々と過ぎていき、由香は普通な日々を、大優と共に過ごしている。


「最近何か探しているの? ず~っとスマホとかPC触っていて」

 夜、テレビを見ていた由香が、不意に大優に話しかけた。


「別に。 ただ調べたい事があるから、触っている時間が増えたんだと思う」

「そうなの? まさか、大優、浮気しているんじゃないの?」

 冗談染みた口調で、由香が問いかけてきた。


「オレが仕事の事で、良く検索している事は知ってるんだろ? 何で今聞くの?」

「なんか真剣だし、PC画面だって、こっちから見えないようにしてるから」

 コレに大優は驚いた。

 確かに最近、裏垢 を探すためにPCを触っている時間が増えたのは確かだと思う。 だが、まさか反対に 浮気 と言う言葉を先に口にされるとは思って見なかった大優なので、その浮気と言うワードに、若干だがキョドッってしまった。


 その一瞬を見逃さなかった由香が。

「ねえ、見せて見なさいよ、そのスマホ」

「.......」

 何も言えなかった。


「ほら、何も言えないじゃない。 浮気しているの、認めているようなものよ」

 そこまで言われたら、見せるべきだろうと思い、由香に大優はロック解除したままのスマホを渡し、暫く由香が大優のスマホをチェックしていると。


「何にも無いんじゃない、だったら何で最近スマホを弄っている時間が長いの?」

 まさか、反対に言われるなんて、思っても見なかった。


「だから検索って言ってるだろ」

 そう言いながら大優は、PCの検索履歴を削除した。


「ノート(PC)も見せてよ」

 履歴を削除した後に言われたものだから、内心 ホッと した。


 由香は、PCの画面をワイアレスのマウスを握りながら、食い入るように見ている。 



 暫くして、何もないことが分かると。

「う~ん....」

 と言いながら、大優にPCを返した。

(今のはヤバかったな。 とっさの判断で、履歴削除は我ながら、名案だったな)

 と、大優が安堵した。



 その時に、由香が。


「ねえ大優。 もうじきバレンタインだね」

 意外な一言だった。

 少し拍子抜けしている顔を見た由香が、続ける。


「今年は何が欲しい?」

 と、聞いてきたので、一瞬間が空いたものの、今度は自分の頭を検索して、そう言えばと思い、由香に告げる。

 この夫婦は、プレゼントする物は、サプライズ的な事はしなく、前もって欲しい物をいくつか言い合って、プレゼントする二人だ。

 全く的を得ないプレゼントは、貰っても嬉しくないから、だそうだ。


「腕時計かな。 今のも好きだけど、もう一つGASHIOスポーツタイプが欲しいかな」

「わ、高そう....」

 そう言うと、由香は、斜め天井を見て、思案しているみたいだった。

 そこへ、今度は大優が、由香に聞いてみた。


「じゃ由香は、ホワイトデーに何が欲しいの?」

 今の言葉に由香の目線が、大優に向かう。

 焦点が合ったところで、すかさずに。

「靴。 パンプスが欲しい!」

 即答だったのには、大優が驚いた。


 少し前、二人でショッピングモールに行った時に、専門店街のシューズショップで、由香が釘付けになって見ているパンプスがあったのを覚えていた。

 結構な価格をしていたのを覚えている。


     ・

     ・

     ・


(ん? これって、)

 と、今までのやり取りで、不意に大優が 思った事があった。


(プレゼント........ねぇ....)



             ◇ ◇



  バレンタイン当日。



 鼻歌を歌いながら、由香はキッチンに立っていた。 夕食の支度をしている。とても機嫌が良く、しかも、何かを期待するかのように、ワクワクもしていながらの、夕飯の準備だ。


 キッチンから聞こえる由香の鼻歌に、リビングの大優は、罪悪感に苛まれていた。


 いままで由香の浮気の事を疑っていたのが、最近になり妻のパートでの様子が、2月に入ってから最初に戻り、今では夕方になると、すでに家に居るシフトに切り替えたみたいだった。

 それに、以前よりも由香の態度が、バレンタインが迫って来るようになると、ワクワクを隠しているのもバレバレなくらいに、態度に出ていた。


 最近の由香の振る舞いが、一途に大優に向けられている事が見て分かる所作に、今まで自分のしてしまった事に、自己を嫌悪してしまい、由香に対しての罪悪感にどうしようもなく居たたまれなくなっていた。

(こんなんじゃ、折角のバレンタインが、変な空気になっちゃうかも)

と思った大優は、リビングから由香の居るキッチンに向かった。


 

             △



 キッチンでは、タブレットで動画サイトを開き、お気に入りの音楽を掛けながら、鼻歌混じりでキッチン作業をしている。その姿を見て、さらに気持ちが落ち込んだ大優。

 キッチンに入って来た大優を見て、面様・面持ちが普通じゃないと思った由香は、一旦すべての動作を止め、大優に近づき、顔色を大きな瞳からの上目遣いでのぞき込んだ。

 とてもいつもの態度とは違う大優の所作と面持ちに、 ? が絶えない由香。

 

 由香が大優に心配しながら声を掛けてみる。


「大優。 どうしたの? 何処か具合でも悪いの?」

 この優しさに、さらに落ち込む大優。

 しかも、由香の優しさから、さらに言い辛くなってしまい、口籠ってしまう。


「ねえ、どうしたの? 何か言ってよ大優」

「........」

「ねえ........」


 大優はこの優しい妻を疑った事に、中々言い出せなかったのだが、いつまでもこんな心配をさせるわけにはいかず、嫌われ覚悟で、意を決する。


「由香。 ごめん、すまない」

「?」

 あっけに取られる由香。 頭を下げた大優のいきなりの謝罪に、何が何だか訳が分からずに、ただ大優の瞳を見つめるが、大優からはとても目を合わせられない。

 これは大優にとって、意を決した事案だと思った由香は。

「ねえ大優、怒らないから、正直にちゃんと言って」

 この言葉に、大優は居たたまれない空気が少し和らいだので、正直に、全てを話した。


「ゴメンな、由香。 オレここ数ヶ月、由香の事を疑っていたんだ」

 こんな言葉から始まった。


「あの........」

 言い始めで躓く。

「いいから言って大優、ホントに怒らないから」

 躓く大優を促す由香、そこに怒りは感じない。


「実は、去年の秋頃からパートの帰りが遅くなって来たのを、最初は忙しくなって来たんだなと思っていたのが、年末になってからさらに帰りが遅い時が時々あって、心配したんだが、その裏側のオレの心中に、ひょっとして由香が....と、思う様になってしまったんだ」

 あぁなるほどと、由香は思う節があった。

「ねえ大優、もしかして私の寝ている時に、スマホの指紋認証を解除して、私のスマホ見てた?」

 コレに大優はタジッた。


「気が付いていたのか.......そうか、ゴメンな、ごめんなさい、由香」

「でもね、私のスマホのパスコード、確か大優に教えたはずよ?」

「え?」

「あれ? 忘れちゃったの? 〇○○○○〇だよ」

 数秒考えてから大優が。

「あ!」

 そうだ、由香の生年月日じゃあ危ないから、少しだけモジったコードにしたのだった事を思い出した。

「思い出した?」

「うん」

「で、何? 私のパートの帰りが遅いから、浮気でもしていると思ったの?」

 正直にコクりと頷く大優。


「はぁ....、あのね、私が大好きなのは、大優なの。だけなの!」

「ごめんなさい」

 頭を上げられない大優。


「ふぅ........」

 また溜息をつかれた。


 居たたまれない空気。 言わなければよかったと思う大優が、ようやく由香と瞳の目線が合った。

 そのまま暫く見つめ合う二人。



 すると........。


「あーははは........」

 突然、由香が笑い出した。

 しかも、なかなか止まらなく、それを目の当たりにした大優は、只々ポカーンと見ているだけだった。




 2~3分だろうか、由香の大笑いから破顔、微笑みになり、暫くしてやっと治まった。

 その後のスッキリとした由香の面持ちは、今までと変わらない優しい表情になっていて、何かを吹っ切れたという、スッキリとした感じが見て取れる風だった。

 そんな由香が。


「ありがとう」

「?」

「いやいや、だから、ありがとうね大優」

「なにが?」

 また破顔する由香。

「ウフフ....、嫉妬でしょ? 何か嬉しいよ大優、正直に言ってくれて」

「なんで?」

「なによ、さっきから なになに ばっかり言って、私の事、焼きもち焼いてくれていたって言う事なんでしょ? えへ、何だか大優が可愛く思えてきた。 今更だけど」

「あ、そうなんだ。 オレ、勝手に嫉妬していたんだ、由香が何にも怪しい事して無いのに」

「そうだよー、疑うなんて、ひどいよ大優。 わたしコレでも、一途な女なんだよ?」

「だから、ごめんなさいって」

「ウフフ、いいよ大優、それだけ私の事、好きなんでしょ? それに、そうやって、すぐに謝ってくれるところも好きよ」

「う!」

「えへ。 私の事 あ・い・し・て・る?」

「ぐ!」

「言って、大優」

「あ....、いしてる」

「何それ?、、、ま、いいか、許す」

 この言葉に、大優がようやくホッと、胸をなでおろした。


「でも、もう疑ったりしないで。 わたし浮気する様な器用な事出来ないし、言い寄って来た男には、キッパリと言ってやるんだからね。 心配しないで」


 そこで疑問になっていた事案を、由香に聞いてみる。


「じゃ、なんでパートが数ヶ月遅かったの?」

 コレに、待ってましたと、答える由香。


「へっへーん。 仕方ない、もう少し黙っていようかと思ったんだけど、このタイミングで、披露しまーす」

 そう言うと、キッチンの食器棚の引き出しから、10cm角くらいのリボンがかけられた箱を取り出してきて、大優に渡した。


「はい、大優。バレンタインのプレゼントだよ」

 渡された箱は、軽くも重くもなく、何だろうと疑問が沸く。

「開けていい?」

「いいよ」

 そう言われ、大優が渡された箱の包みを丁寧に開けていき、最後に蓋を開けると、そこには大優が近日インターネットで購入しようかと、迷っていたスポーツウォッチがあった。

「何で? コレって....」

漫勉の笑みを掲げながら、由香は事情を話し出す。


「実はね、以前二人で浮気だ、何だっ・・って言ってた時に、大優のPC見たでしょ? その時、色んなサイトを見たんだけど、とある通販サイトの検索履歴に、このスポーツウォッチがあったの、しかも、カートに入っていたから、コレはプレゼントは決定だ、と思ったの、大優も自分から言ってたし」

 確かその時、ちょっと険悪ムードだったのに、由香は立腹していなかったのだ。 むしろ、このプレゼントの事が分かって、ラッキーだと思ったくらいだった。


 数ヶ月の間、夜が遅くなったと言うのも、ただ大優に、自分が働いた所得の中から、プレゼント品を購入してあげたいと思う心境からの行動であったのだ。

 この由香の 寛大な 心が無かったら、普通の夫婦であれば、疑いを掛けられた側が怒り、離婚の危機になっている事だってあっただろう。 もしくは、離婚が避けられたとしても、残された夫婦生活は、冷えきった、とても切ない夫婦生活になるだろう。

 その事を考慮すれば、いかに由香が 寛大で包容力があり、雅量が豊かな妻である事が分かる。 

 大優は、その事がとても嬉しく、自分がしてしまった事に対して、自分の嫉妬心の範疇が狭い事に情けなくなり、滅多に涙腺が緩まないのに、とうとう瞳から涙が止まらなくなるのであった。



「あらら? どうしたの大優。 何で泣いているの?」

「........(涙)!」

 見る見るうちに、いい大人の男が、妻の前で声無く泣き始めた物だから、由香は大慌てである。


「ほん....とに....、ごめ........」

 涙する夫の姿を見て、本当に心からの反省と、且座の核心を見た由香は、そんな夫の姿を見て。

「大優。 いいんだよ........、もういいんだよ....、いいから」

 そう言いながら、棒立ちの状態の夫を、小さい体なのに由香は大きな体系の大優を抱擁した。



「ごめんな....、ごめんなさい....由香」

 そう言う夫を、さらに優しく抱擁したまま、背中をさするのであった。


「でも、今度疑ったら、怒るからね」

「分かった」

 そう言うと、どちらかともなく、深く長いキスをした。



             △



 由香が時間をかけて作った夕飯を美味しく頂いた二人は、食後そのままキッチンテーブルに座ったまま、話をしている。

 内容は先ほどの事で、大優は最後の方で罪悪感からの涙を見せた事を、由香にからかわれていた。


「もう勘弁してくれよ」

「えへへ、大優の弱みを掴んだぁー....」

 と言いながら、ウシシ顔になっている。

「もう言うなよ」

 そう言いながら大優は一旦席を立ち、リビングに行ってから、すぐに戻って来た。 

 その時に、手に箱みたいなものを持っていた。


「はい、コレ」

 そう言いながら、その箱を由香に渡す。

 今日はバレンタインなのに、一体なんだろう? と、思いつつ。

「ありがとう。 で、なに? なんなの?」

 と、不思議な面持ちで受け取った。

「開けて」

 と大優が言ったので、さっそく包みを開けていく。

 箱だけになった蓋を開けた途端に由香の瞳が輝いた。

 

「大優!」

 そう言って、座っている由香はすぐに立ち上がって、テーブルを回り、大優の後から抱き着いた。

「嬉しい、ありがとう大優。  大好きよ」


 箱に入っていたのは、以前ショッピングモール内でのシューズショップで由香が暫く見入っていた、黒のパンプスだった。

 エナメルブラックのカラーで、7cmヒールの、正にショーウインドウ越しに見入っていた靴だった。

 

   ・

   ・

   ・


「でもなんで? 今日こんな日なのに、私にプレゼントしてくれるの?」

 不思議な面持ちで、大優を見る由香。 それに答える大優だが、不思議な顔をしている妻の顔が可愛いと思ってしまった。


「最近じゃ、女の子からだけじゃなく、反対に男子からの逆プレゼントもあるんだってさ、だから、由香に買われるよりも先に、プレゼントしたいと思ったんだ」

「えー....じゃあ、来月のホワイトデイの事、プラン考え直さなくっちゃ」

「へぇ、来月の事、考えてくれていたんだ、それって今度は反対の逆プレゼントだな」

「でも、今日で先越されちゃった、ちょっと残念」

「でも、由香のしてくれる事なら、何でも嬉しいよ」

「もう!ほんっとに、大好き!大優」


 サプライズのプレゼントに、上機嫌の由香、そんな妻の姿を見て、大優が調子に乗り、由香にして欲しいことを言う。


「由香....、久しぶりに、一緒にお風呂入ろ?」

 その言葉に、一瞬で固まった由香、だが。 

 出した答えは。



「........い、いいよ」

 か細い声での返事だった。

 やったーと言わんばかりに喜ぶ大優。 

 新婚当時は良くしていた事だが、最近ここ1年では全く無い事で、久しぶりに声掛けしたものの、拒否られる前提での誘いに、了解が出て、嬉しい大優だった。


「でも........」

でも が出た由香に、何だろうと聞いてみる。


「でも、お風呂内でのエッチな事は、ダメだからね」

 先に杭を打たれた。

「分かった」


 言わざるを得なかったが、大優がそんな事を守るなんて、思ってもない事など分かっていながらの、せめてもの由香からの抵抗だった。



            ◇



 その日、夜までに、色んな事があったのだが、この年の冬には、二人に似た、可愛い家族が出来た事は、その後の事実である。



            □ □ □



 お読み下さってありがとうございます。


 急遽作成した話ですが、いかがでしたでしょうか?


 一日で完成した作品で、添削含めて、あーすれば良かったなどと思う箇所が多かったと言う事が、今更ながら思う所です。(いつもですね)

 何しろ、バレンタインに合わせて急いだ内容ですので、不出来な内容なのは、勘弁してください。


 内容的には最後にハッピーエンドと言う定番にしたかったので、それに向けて取り繕うことが大変でした。


 最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。


 近日にはまた新たな連載が始まります、そちらもよろしくお願いいたします。




  ※お詫び


 投稿時に、間違えまして、全2話としてしまいましたが、短編での 1話です。 ごめんなさい。  






   雅也






 


 

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