7.料理人でなく、商人に?
書いてるうちにどんどん料理が出来なくなると言う。
商業ギルドで希望・展望を語った後に、不動産の仮想世界での現実を突きつけられ憂鬱状態。
気付いてはいないが更に憂鬱になるであろう事実を耳にしたにもかかわらず気が付いていない状況で、テンに愚痴り始める。
(やりたい事をやるってのは…大変なんだな…)
『希望が簡単に叶ったら喜びも大きくない…んじゃない?』
(…そうかもしれん。)
『けど、器用になったじゃない。私と外で口調変わってるわよ。』
(あー、ビジネスモードと普段モードなら切り替えは出来るな…言われれば。でも、普段モードと女もどきモードはすんなり出来る自信はねぇっ!)
『あっそぅ。』
愚痴って会話しつつ、この後どうしたものかと考えているミズキに声が掛かる。
「ミズキ様のお話を伺った上で、展望に対する不動産への説明はさせて頂きました。そのうえで将来的にミズキ様が商業活動を中心にされるのであれば、商業ギルドとしてギルド証を発行させて頂きますよ。」
「それは、商業ギルドとして以外の活動に制限を受けるのですか?」
現実的に商売人でも取引で各地に赴いて仕入等をする為、基本的に活動制限などは行わず、自由に活動して商売をする事。
店舗を持たずに商売するには、屋台や露店で店を出すなり、別の地域に物を売りに行くなり、別の地域の名産品をこちらで売ったり、利鞘を稼ぐ方法は多岐に亘るという事。モンスターの素材も売買対象である為、買わずに自身で討伐して採集するのも手段の一つだと言う事等を説明してくれる。
「それでは、商業ギルド証と他のギルド証との違いは何ですか?」
「ノルマ…とでも申し上げましょうか。各ギルド毎でそのギルドに準じた活動実績を求められます。」
「活動実績…ですか?」
「えぇ。例えば、商業ギルドでは金銭の納付でノルマを免除する方法もありますし、ランクに応じてギルドの依頼する商品の納品でも構いません。納品と言っても商品代金をお支払い致しますよ。厳しい言い方をすれば、ギルドに貢献する活動をしない方にギルド員たる資格は無いとも言えます。」
「ランクによる差異はあるのですか?」
「ございます。Eランクから始めて頂きますが、D・C・Bと言う風に上位に上がるにつれて納付金もあがりますが、ランクに応じた権利も付与されます。将来的に店舗を出されるならCランクにまで上がるのをお勧めします。」
「先程の話からすると、冒険者ギルドに登録しても、商売をする事は可能なのではないですか?」
ここでも質問に対して的確に答えてくれた。
他ギルド所属でも商売をする人もいる事。仮に店を出す…と言う点では、商業ギルド以上に迅速に対応出来るギルドが無い事。販売許可証一つとっても、商業ギルド加入者は許可証発行の作業を商業ギルドに委任する事が出来るが、他のギルドは対応していない為に大変な労力もしくは対価を課せられる事等を簡潔に教えてくれた。個人売買や無許可の闇市みたいなものもあるが、それらの交渉などは自己責任でとの事だ。
その上でミズキは問いかける。
「私の希望にあうギルドは商業ギルドだと思われますか?」
「まず、登録と言う意味で多くの方はどこかしらのギルドに加入しています。どこのギルドにも所属していない人の信用が低いのです。加入していない人も居れば、複数のギルドに加入している方もいらっしゃいます。複数のギルドに加入すると、伴って複数のノルマが発生しますのでそうした方々は金銭的にノルマを免除する裕福な方が多く、これらを鑑みて、ミズキ様のご希望を伺うに、商業ギルドは向いているとは思います。」
「そうですか。他に私に向いてそうなギルドが有るとしたらどこでしょう?」
「自分で商売をせず、雇用されて調理をされる方は魔道ギルドに入られる方も居ますね。」
「私は魔道ギルドに向いていそうですか?」
「向く、向かないではなく、調理人は調理補助に魔法を用いたり、使う器具を魔道具として作ったりする人も多いですから、ミズキ様が何をしたいかによると思います。」
「では。私に商業ギルドに入って欲しいですか?」
「はい?おっしゃる意味がよく解りません。ギルドは御自身で選択する事ですから。」
「貴方個人としては、どう思いますか?」
「……正直に言えば入って欲しいと思います。ノルマもありますし。」
「はっはっはっ。ぶっちゃけたね。では、商業ギルドに加入させて頂けませんか。」
「は、はぁ…ありがとうございます。参考までにお伺いするのですが、何を決め手にされましたか?」
「んー…本音トークが出来るのは大事だと思っています。俗に言う御役所仕事的な対応だけでは無くやり取りできるんじゃないかなと思ったんですよ。私自身は言われないとわからない。何かをして欲しいと言う相手の意を組むのが下手なので。」
「そうですか…私は後でトラブルが起きるのを好まないだけなのですが…」
「メリットだけを伝えない。デメリット…利になる部分以外も相手に伝える…そういうのが私は好きなだけですよ。少なくとも貴方はそうですし。」
「そういうものですか?」
「えぇ、私は。ですので、これから宜しくお願い致しますね。えーっと…」
「エマと申します。ミズキ様。」
「様は…あれだから、さん付くらいにならないですか?」
「それでは、今後とも宜しくお願い致します。ミズキさん。」
「はい、こちらこそ宜しくお願いします。エマさん。」
やり取りの後に受付を受理され商業ギルド員になる事を決め、エマと名前を交わし、調理場を探していたのに、気が付いたら商人?になる事になった。成り行きで商業ギルド員になった訳だ。
このやりとりを傍から観察していたテンは着々とミズキの性格を読み取り続ける。本当に行き当たりばったりで物事を進めている癖に、人とのやり取りに関して懐に入る…というか、気に入ったら仲良くなるのが早いと認識する。
その反面、先程のライトとのやり取りの様に一度警戒するとまるで取りつかない部分もあり、またNPCと仲良くなるミズキを見て、テンの思考に何かを残した。




