70.一方的な逆提案
誤字脱字のご指摘、感想などありがとうございます。
色々、考えさせられます。
当初、特に感情を表さない…いや、穏やかにさえ感じられたミズキが突然豹変した事に焦り、理由が解らず狼狽するも、その後の会話でその理由も多少理解出来た事で改めて会話を試みる。
「エリザベスと兵士では、立場も扱いも違ってしまうのは理解出来ませんか?」
「…ふぅ…すいません…少し感情的になってしまいましたね…でも、まだ違いますね。」
多少落ち着きを見せたミズキに、リズは安堵する。そもそも、敵地とも言えなくもない砦に一人で訪れ、交渉に来たと問題を起こすわけはないだろうと落ち着きも取り戻すが、まだ完全にミズキの言う事を理解しきっていない。
「エリザベスちゃんごめんね…リズさんはそんな人じゃ無いと思うよ?今迄も優しくしてくれたでしょ?」
「うん…リズは優しいよっ!」
「リズさんが悪くも無いんでしょう…私がこの世界の住人を普通の「人」として見過ぎているのかも知れませんね…」
「それは…私もわかりますが…私の感覚と少し違いますね…」
「私が感情を出してしまったのは…NPCの命をモノ扱いした様に感じたからですかね…」
「指揮する側としては、勝つ為に非情になるものです。いや、ならねばなりません。」
「解るんですよ…戦争…なんですもんね。誰も死なない戦争なんて無いでしょうから。でも、だからこそ、死んでくれる人に…何と言うか感謝すべきだと思うんですよ…NPCはプレイヤーと違って勝手に生き返ったりしないんですから…」
「……そこが解らないんです。NPCをプレイヤーの様に扱えと?」
「私的には、プレイヤー以上に扱うべきだと思うんですよ。」
「…はぁ…価値観の差でしょうか…?」
端的に言えば、プレイヤーは死亡した際に自動で生き返るが、NPCは例外的に処置されなければそのままロストしてしまうとミズキは思っている。モンスターの様に自動生成されるでもなく、子供もいれば時も過ぎ、NPCも成長する為に。
更には他のプレイヤーと異なり、プレイヤーよりもNPCと関りだったり、コミュニケーションをを持つ頻度が異常に高いのだ。
考え方が人それぞれ違うにしろ、ミズキのDREAM内での対応は、DREAMを単にゲームと認識しているプレイヤーと比較しても異常な位に現実世界に近く、命…NPCを動かすAIを命と認識するかは個人差があるだろうが…に対して重きを置きすぎるのだ。
そして、相手が条件を言い切る前に、ミズキは条件を逆に言い放つ。
「そちらの条件を出し切る以前で恐縮ですが…私がここに交渉に来た理由を先にお伝えします。週末のワールドレイド…要は侵略の南下を中止して貰えませんか?エリザベスちゃんは領主の元にお連れしますし、停戦後の和平交渉辺りまでは何とかしますから。」
とんでもない事を言いだすミズキにあっけに取られたのも数瞬、それを理解し、今後の事を見据えてると共にそんな事が出来る訳が無いとも思いつつリズは反論する。
「はぁ?そんな権限が貴方にあるというんですか?」
「ありませんよ?」
「えぇ!?それじゃ、何を言っているんですか?あなたは?」
「そもそも、争う理由は何ですか?奪う事もせず、ただ、領地を広げる事ですか?それに何の意味が…?」
「それは…」
「想像は付くんですけどね…私は私の気に入った人を街を傷つけさせたくないだけで、自分勝手にやりたい事をやるだけです。そういう世界ですよね?」
「やりたいことをやるのは自由だけど、運営の方針をどうこうするのは…」
「やっぱり…」
「あ…」
「でも、戦争を止められると…私達の報酬が…」
「報酬…幾ら貰ってるんですか?」
「お金と言うか…貢献値なんだけど…」
貢献値…と言う言葉は以前メグミの口から聞いた覚えがする…ワールドレイドで活躍したら貰えるポイントで、そのポイントで特典だのを貰えるやつだ。
ただ、ミズキはその貢献値の分配方法を理解していない為にリズに問うと、簡単に教えてくれた。
1度のレイドで分配される値が予め決まっていて、まずは勝者・敗者で大きく分配される。その2者で分配された値を実際の争いの中での貢献によって再配分されるそうだ。ただ、上限はあるらしく言うほど想定外のポイントが貰える訳でもないが、仮に逆の立場で勝利するよりは貰えるポイントは多くはなるとの事。
「ふむ…運営によって依頼されたレイドに勝つ事と、プレイヤーが少ない条件で勝つことで、一人当りの貰えるポイントが大きいわけですね。ここのプレイヤー達的には?」
「相手は連携も取らないし、NPCは指示通りに動いてくれるから、ほぼ負けないのよ。」
「なら、ポイントが貰えるなら…今回のレイドを見合わせる検討は出来ませんか?」
「んー、楽にポイントが貰えるなら私は構わないけど…他の2人が何て言うかな…」
「その2人は今、居ませんか?」
「居るけど…どうするの?」
「検討の御願いと…断った際のリスクを知って貰おうかと思います。」
「リスク…?」
「えぇ。」
「強いんですよ、私?」
「あの二人に喧嘩を売るのはやめた方が…単独でも最高レベルに近いんだから…」
「強さの方向性が違うので、多分、問題ないです。」
リズは目の前のミズキにそこまでの脅威を感じない。ただ、先程の周辺の空気を凍らせた際のミズキには恐れを感じたのも事実。それでも、責任者の他二人の実力と比較した際にミズキが勝つとも思えない…どうするべきか悩んでいる処に2匹…と言うか2人なのか、人としては大柄な蜥蜴人が部屋に入り込んできた。
エリザベスを被せた…前話の件。所謂ニックネームの話になりますが、
エリザべス…だと「エリー」とか「リズ」…と呼ばれたりします。
そう言う意味で、エリザベスもリズと呼ばれている…と表現したかったという話。
解って貰えなかったようなので…補足デス。




