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34.移り変わり

 ミズキがPさんとの契約を結ぶ意思を見せると、忙しいのかなんなのか、Pさんは「後は宜しく」…と、リチャードの肩をポンと叩いて、その場で突然姿を消し、残った連中での会話が始まる。


「慌ただしい人でしたねぇ。」


「いや…君…ふてぶてしすぎだって…」


「俺だって滅多に会わねぇのに、ルーキー相手に出張ってくるとは…」


「…ミズキちゃんはすごい子…」


 各自がそれそれの感想をぼやく中で、商業ギルドとしての話を進める。こちらも纏めればミズキのスキルを内緒にしつつ活用法を捜せと言うものなので、さっきの話の下位互換みたいな話である。


「まぁ、こっちの話も宜しく頼むわ。お互いに稼ごうぜ?」


「そうですね、色々考えてみます。」


「おぅよ、とりあえずは米の手配をしといてやるよ。他何かあるか?」


「味噌とか醤油とかあれば。他はまた思いついたらで…ってツケききます?」


「まぁ、金が無きゃ在庫として持っててやるよ。」


「それでは宜しくお願いしますね。」


 最後にエマに優しくお願いされて三人は商業ギルドを後にし、どこへとなく歩きながら会話を始める。


「君は…ほんと不思議な人だねぇ…僕は得するから嬉しいけどさ♪」


「…んふっ…」


「まぁ、適当にいいアイディアでも思いついたらメッセージ下さいよ。俺は俺で適当にやりますから。」


「……ぇ…?」


「あー…ねぇねぇ、メッセなんて味気ない事言わないでさぁ、僕らと定期的に遊ばないかい?」


「だからぁ…自由が大事だって言ってるのに、なんでそんな面倒な事を…」


「えぇー、ねぇ、るぅー、聞いたぁ?あの子、私達と遊ぶの嫌なんだってさぁ。」


「…いや…なの…?」


 るぅはメグミに話題を振られ、淋しそうな表情で悲しそうに尋ねてくる。その仕草を見ていると何故だか自分が悪い様な罪悪感に浸ってしまい、慌てて弁明を始めてしまう。


「うわぁ、汚いっ!あのっ、るぅねぇが嫌とかじゃないですからね!」


「…ほんとに…?」


「ご飯、まだ奢ってませんもんね。今度はちゃんと行きましょう!ねっ?」


「やったー、タダ飯~♪」


「俺、あなたに奢るなんて、一言も言ってませんからね?」


「うわぁ…ケチだなぁ…器が知れちゃうよ?」


 そのセリフにカチっ…とミズキの中のスイッチが入り、普段より低いトーンで抑揚のない言葉を発する。

 

「…Pさんにメグミ様は役に立たないんで、企画から外す様にメッセ入れますよ…?」


「えっ…嘘!?止めてよぉ…5せんえん貰えなくなるぅー…ごめんってばぁ…」


 るぅに話した時と同様に、言わなければ伝わらないのだろうと自分の考え方をメグミに話す。

 DREAMは遊びであって自分が自由に動きたい事、出会った時に声を掛けられて何かする分には問題ない事、約束は極力したくない事…これは約束を破った時がストレスになるから等々、淡々と一方的に伝える。


「もう…君の考えはわかったからさぁ…無理強いはしないからぁ…」


「るぅねぇ、何かあったらメッセ下さいね。俺も入れますよ。」


「…うん…あと、めぐを虐めないであげて…?」


「それは、メグさん次第です。」


「るぅと僕の扱いの差が酷くない…?」


「そうですかね?それじゃ、俺は今日はこれで帰ります。るぅねぇ又今度ね。」


 そう言って、機嫌を損ねたミズキは早足で去って行き、二人はその場に残される。


 過剰な干渉を好まず自由奔放に動くミズキに対して、メグミも自由奔放と言う部分では似ているのだが二人の自由奔放さには違いが有る。


 メグミは自分が干渉されても気にしない為に相手にもグイグイ干渉していくタイプだが、ミズキは感情や好奇心が爆発した時を除くと言う程相手には干渉しない。るぅと相性が良いとメグミが感じているのは、単にるぅが基本的には人の後ろを歩く性格だからでしかないのだ。

 そんなるぅは、自分の絶対防衛ラインを侵食されなければ流されやすいだけなのである。


「あちゃぁ…やっちゃったねぇ。」


 機嫌を損ねて去っていくのを見てメグミは失敗したなぁ…と思っていると、るぅが一言声を掛けてくる。

 

「…めぐ…ありがと…ごめんね…」


 自分のした行動をちゃんと理解してくれていた友人のその一言で、すぅー…っと癒される。


「なーに謝ってんの。これからガンガン稼いで楽しもうよ♪」


 そんな癒しも束の間、るぅから驚きの提示が発せられる。


「…あのね…めぐ…わたし、ギルド変わろうかなって…」


「いいんじゃないの?僕も一緒に移っちゃおっかなぁ。」


「…ぇ…めぐも…?…ダメだよ…?」


「なーにいってんの、僕はるぅの保護者だからねっ♪それに、あいつと居ると楽しませてくれそうじゃん!」


「…それは…わかるけど…」


「じゃ、決まりねっ!あいつの居ない内にリチャードさんに頼んじゃおうよ!」


 そう言って、るぅの返答も聞かないままに手を引いて商業ギルドに引き返し、リチャードにしれっと相談する。ついさっきまでギルド長に対して畏怖の念を抱いていたとも思えない行動ではあるが、プロデューサーまで目にしてしまった彼女には今更な相手でもある。

 虎Pの威を借りたつもりで、メグミは半ば軽いハッタリを交えつつギルドに加入したい意思を伝える。リチャードもさっきの今で…と、呆れつつも心の中ではきっちりとソロバンを弾き、自分の利益に繋がると判断してすぐに許可をだす。


「これから宜しくな。あと冒険者ギルドに対しては、続けるなり辞めるなりキチンと自分達で処理しろよ。俺の管轄外だからな。わかるだろ?」


 と、注意を受けて、ミズキの知り得ぬ処で彼女達もミズキ同様のノルマ免除のギルド員となるのだった。

可哀そうなメグミさんです。

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