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魔の森の狩人  作者: 鳥飼泰
番外編
9/15

小話:ロードスを放り出した後の、ルーヴによる甘やかし

番外編「魔術師の幸福な日々」で、サモトラが魔の森からロードスを放り出した後の幕間です。短いですが、楽しんでいただけましたら。

ロードスを転移で放り出したことで、ようやく己の領域を侵すものを排除できたと、少し溜飲が下がる。

しかし、まだざわついた心は落ち着かない。なにしろサモトラは、ルーヴをロードスに会わせたくはなかったのに、結局二人は対面してしまった。その上、ルーヴがロードスの味方をしてサモトラを説得するような発言をしたのだ。


「ルーヴ……」


再びその存在を腕の中に収めて、少しでも心を宥める。


「仕事をちゃんと続けて、偉いね」


頭を撫でられたので、ルーヴの肩に額をつけてもっと大事にしてほしいとねだる。ついでに首筋に唇で触れる。安易に痕をつけたら以前ひどく叱られたので、軽く口づけを落とすだけに留めた。


「俺は、仕事は辞めたかったのに」

「うん。でも、続けてくれるのでしょう?」

「……ルーヴがそう望むから」

「そうだよ。私は魔術師としてのサモトラも好きだからね」

「………………」

「あら、まだちょっと納得しきれてないかな。まだご褒美が必要?」

「…………足りない」


首筋に埋めていた頭を両手でとられ、ルーヴと額を合わされる。


「サモトラはいつだって必要だよ。魔術を使えない時も放っておけない感じで微笑ましかったけど、今はその髪色も格好いいし、魔術を編み上げる時の真剣な顔もすごく好き。最近は杖を持つようになって、その魔石がなんとなく私の髪みたいな色でちょっと嬉しい。王宮の偉い友達がサモトラを必要としているのも、あなたの所有者として誇らしいよ」

「っ、………………」


至近距離で目を見て告げられた言葉にひとつも嘘はないと分かり、宥めようとしていた心がまた別のものに乱される。以前はあれだけ暇で麻痺していたサモトラの心を、ルーヴは容易く振り回すのだ。

サモトラの動揺を分かっているように、ルーヴは微笑む。


「目を閉じて……」


サモトラは、その柔らかい唇が触れてくれるのを期待して目を閉じた。


しかし、次に感じたのは、首へ回された手によって下へ引き寄せられた頬への、柔らかいぬくもり。それから、優しい音。

思わず目を開けると、サモトラはルーヴの胸へ顔を埋めるように抱きしめられていた。


「、………………!?」


状況を理解すると、顔に朱が上る。

だが、ルーヴのぬくもりに包まれ、その柔らかさに癒され、優しく響く心音になんだか離れがたくなり、サモトラも腕を回してルーヴを抱きしめた。

そうすると更にその柔らかさが感じられて、男としての欲が少しだけ頭をもたげたが、今はそれよりもこのぬくもりに癒されていたかった。

ルーヴと二人だけだったはずのここへ他の人間が、それも自分と同じ魔術師が入り込んだことを、サモトラは自分で思うよりも気にしていたようだ。


正直なところ、サモトラはルーヴからの口づけを期待していたので拍子抜けした。

だが、これはもしかしたら、口づけをもらうよりもこの場合は有効だった気がする。

この時サモトラが求めていたのは、ルーヴに必要とされることであり、側にいることを許されているという自信だった。

こうして胸に抱いてもらうと、とても大事にされていると思えた。

やはりルーヴは、サモトラの予想をいつも上回る所有者なのだ。



********************

一連の出来事を横で見ていたシュロ


「ルーヴ、甘やかしすぎではないのか」

「んん、そうかな?でも、拗ねたままだとかわいそうだし。それに、なんだかずっとイライラしていたみたい?」

「……そうか。では、帰りもわたしが連れて帰ってやろう。早く乗れ」

「シュロも仲良くしたくなったの?よしよし、仲間外れじゃないよ。じゃあサモトラも一緒に帰ろうか」

「いや、あいつは乗せないが」


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― 新着の感想 ―
[良い点] ルーヴ、サモトラ、シュロのそれぞれの視点がどれもほのぼのとしていて読んでいて心地良かったです。 [気になる点] サモトラは魔力ない状態で一体どうやってシュロの羽むしったんでしょうか…? …
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