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魔の森の狩人  作者: 鳥飼泰
番外編
11/15

小話:調子に乗って叱られた

サモトラが、少しだけディープな戯れをしかけています。

苦手な方はご注意ください。

ルーヴは基本的に、サモトラが求める身体的な接触を忌避しない。

それがサモトラだからなのか、他の人間に対しても同様なのかは、確認したことがないので分からない。

もしも他の人間に対してもそうであるなら愉快ではないが、自分以外が触れることを許すつもりはないので、どちらでもいいかとも思う。

ルーヴの意志を変えることはできないが、外的要因を排除するのは得意だ。




その日は天気がよかったので、サモトラはお気に入りの木陰で昼寝をしていた。

ふと目が覚めたとき、横にルーヴが寝ていたのには驚いた。サモトラは気配には敏感な方だと思うが、さすがに森の王とまで呼ばれる狩人がその気になれば、こうも簡単に接近を許してしまうのか。


驚いて起き上がってしまったが、サモトラは再び横になって、こちらを向いて寝ているルーヴと向かい合ってみた。

両目を閉じてすうすうと小さな寝息をたてている様子を、じっと見つめる。


ルーヴも狩人として気配には敏感だが、サモトラやシュロには危険がないと判断してくれているようで、こうしていても起きることはない。

そのことを改めて確かめて、サモトラは心の奥がむずむずするのを感じる。この、よく分からないむずむずは、ルーヴと居るとたまにあることで、不快ではない。


「…………」


このままルーヴが起きるまで見つめていようかとも思ったが、気持ちよさそうに寝入っている様子を見ていると、悪戯心がむくむくと沸き起こってきた。


そこでサモトラは再び半身を起こし、ルーヴの髪を顔からそっと払って、そこに現れたふっくらした頬に唇を寄せる。

何度か繰り返すと、さすがに目が覚めたらしいルーヴがくすくすと笑う。


「ふふっ、サモトラ、くすぐったいよ」

「うん、…………」

「ふっ、…………ふふっ」


ルーヴの目が覚めたならと、徐々に唇を首筋へと下げていく。

ルーヴはサモトラの髪をぐしゃぐしゃとかき回してくるが、サモトラの髪の感触を楽しんでいるだけのようなので、止めなくても良いのだろう。

人間なら誰もが恐れるサモトラの黒髪を、ルーヴは好きだと言ってくれるのだ。そう考えて、またいい気分になる。


それでサモトラは少し調子に乗って、一度だけ痕を付けてみた。


「ん?」


わずかな刺激があったのか、ルーヴが声を上げたが、サモトラは口づけを止めなかったので、そのときはそのまま戯れて終わった。



翌日。

木陰で読書でもしようかと考えて家の周りを歩いていたところで、ルーヴがやって来た。


「…………サモトラ」

「ルーヴ?」

「ちょっと、おすわり」


ルーヴから逆らってはいけない何かを感じ取ったサモトラは、さっとその場に膝をついた。

よく分からないが、珍しく怒っているような気がする。



「これ、サモトラだよね?」



言ってルーヴが示したのは、サモトラが昨日の戯れで付けた首筋の痕だった。


「わざとやったのかな?」

「…………」

「わざと、だね?」

「………………ああ」


口づけは許すのに、どうやら痕を付けるのは駄目だったらしく、サモトラはルーヴにとても叱られた。

さらにお仕置きだと言われて罰まで与えられた。ルーヴがシュロと二人で二日間の狩りに行く間、留守番しているようにということだった。つまり、ルーヴと二日も離れなければならない。

それだけは嫌だと訴えたが、ルーヴは許してくれなかった。サモトラは少し泣いた。


シュロが呆れたように見ていたので八つ当たりで羽をむしってやったら、ルーヴに言いつけられて、また叱られてしまった。納得がいかない。




翌早朝、ルーヴとシュロはあっさり出発してしまった。

サモトラは最後までごねたが、同行は許可されなかった。


ルーヴに置いて行かれて何もする気が起きないので、サモトラは今後の対策を考えることにした。


サモトラの所有者は後を引くような性格ではないので、決められた罰を終えればその後は普通に接してくれるだろう。

この罰でサモトラは精神的にとても消耗しているので、帰って来たら労ってもらう必要がある。そのためには、いくらか気弱なところを見せるべきか。どうもサモトラが弱っているとルーヴは甘やかしてくれるようだと、今までの経験から知っていた。


(しかし、何故痕を付けるのが駄目だったのだろうか。口づけ自体は嫌がっているようには見えなかったが……)


それからルーヴたちが帰って来るまで、サモトラはルーヴとの触れ合いについての考えに耽って過ごした。




翌日夕方、ルーヴとシュロが帰って来た。

待ちきれなくて庭に出てずっと空を見上げていたサモトラは、ルーヴを乗せたシュロが降り立つのに、急いで駆け寄る。


「おかえり」

「サモトラ、ただいま」

「戻ったぞ」


ざっと見たところ、ルーヴに怪我はない。もちろん、怪我などしていればシュロが冷静ではいないだろうが。念のため、後で魔術をかけて他にも異常がないか確認させてもらおうと、サモトラは密かに決めた。


「ルーヴ」

「ん?」

「……その、触れても、いいだろうか?」


前日に考えていたように、サモトラは努めて弱々しい声を出す。

ルーヴはきょとんと目を瞬いてから、おかしそうに笑った。


「ふふ、お留守番で寂しくなったのかな。ちゃんと反省したなら、もう構わないよ」


おいでと言うように両手を広げてくれるルーヴを、サモトラは抱きしめる。抱きしめながら、抱きしめてもらっているような気がする。

やはりこの存在が側にないと駄目だと、改めて思った。


「……もう、ルーヴを不快にさせないようにする」

「うん、もういいよ」


そう。昨日から考えて導き出した結論は、こうだ。あれは、いきなり首筋に付けたから怒られたのだ。サモトラが性急すぎたのだ。

だがルーヴは適応力が高いから、徐々に慣らしていけば、きっとそのうち許してくれるようになるだろう。であれば、まずは手首あたりから様子を見ていけばいいだろうか。もう不快にさせないように、ゆっくり進めていこう。


これからもずっと一緒に暮らすのだから、焦る必要はひとつもないのだ。

今後のあれこれを考えて、サモトラは腕の中の存在を改めてぎゅっと抱きしめた。


暑中お見舞い申し上げます。

暑くなってきましたが、みなさま健康にはご留意くださいね。


*あまり気にしなくても良い補足*

これは、前回のお話より少し前の二人です。(ややこしくなるので、あまり時間が前後する投稿はしないようにしているのですが、今回は申し訳ないです。)

その後のサモトラの努力次第で、今ならルーヴの反応もまた違ったものになるかもしれません。


#さらにディープに戯れているものを、Twitter(@torikaitai_yo)からリンクしています。ちょっといかがわしい感じに年齢制限が付くのでフォロワーさん限定ですが、もしご興味ありましたら、Twitterの2020年7月24日の記事をご覧ください。R15くらいです。

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