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豚と猫が二足歩行



「詐欺なのら・・・。極上のお肉食べさせてくれるって話だったはずなのら・・・」


「すぐに食えるなんて言ってねぇもん」



可愛い見た目と裏腹に肉食のカワウソに宿屋のチキンステーキを分け与える。



「ほら、カワウソは我慢してこれ食べとけ」


黙って両手を使い小さな手でお肉をつかんで少しづつ肉を食べる姿は愛らしかった。


「なんで僕のことカワウソって呼ぶのら?」


「俺の知ってるカワウソって生き物に似てるから」


「名前にこだわるつもりはないけど、もう少しかっこいい名前か、プリチーな名前がいいのら」


「かっこいいのが好きならそのなのらって語尾辞めればいいんじゃないのか?」


「キャラ付けのために仕方ないのらねぇ」


「メタい」


だが確かにコツメカワウソは品種名だから名前とは少し違う。



「じゃあ、候補上げるから自分で選んでくれ」


「わかったのら!」


「グル、グルタミン、グルタミン酸ナトリウム、丼、豚、アブラ、醤油、みりん、チャーシュー、メンカタ、コッテリ、ニンニク、味玉、メンマ、もやし、キャベツ、ラーメン、マシマシ」



ここまで言ってじんわり体が温かくなる。

なにが起こったのかわからず首をひねった。



「名前の候補になんで回復呪文入れたのら。しかも呪文発動したのらよ。ちゃんと魔力をコントロールするのら」



「回復の呪文?」


「マシマシは回復の呪文なのらよ。そんなことも知らないのら?先が思いやられるのらねぇ」


はぁ、とため息をつく。


「よし、お前の名前は今日からうざ野郎だ」


「辞めるのら!意味は分からないけど絶対良い単語じゃないことはわかるのら!!」


「じゃあ豚野郎」


「いじめなのら!!」


「なんならいいんだよ」


「もっと他にないのら!?」


小さい手をバンバンテーブルに打ち付けて抗議するコツメカワウソ。

見かねた宿の女将さんが声をかけてくれた。


「豚野郎なんて可哀そうだよ、キューキュー鳴いて嫌がってるじゃないのさ」


ハッとした。

まさか周囲にはこのコツメカワウソの声が聞こえてないのか。

つまり今までの会話は俺がこのぱっと見可愛い小動物に豚野郎と罵ってる危ない奴にしか見えていないということ。


恥ずかしい!!猛烈に恥ずかしい!!

酒!飲まずにはいられないっ!!


ジョッキを飲み干し平静を取り戻そうとする。


「プハーっ。すみません、なにかコイツにいい名前ないでしょうか」


「そうだねぇ、この子男の子?女の子?」


「男・・・だと思います」


「男の子ならナイト君とか、ありきたりだけど食べ物から名づけるなんてどうだい?今この子が食べてるお肉はキュービーのステーキ、ラタトゥイユソースだよ。添えはプラチナコーンのバターソテーにジャーマンポテト」


「僕ナイトかプラチナがいいのら!」


「だが断る」



そんなカッコいい名前つけてたまるか。妥協点はステーキかバターくらいだ。

コツメカワウソの声が聞こえない女将さんは、提案した名前を断られてしまったと思い不服気な顔をした。人に名前の候補を聞いておいて断るなんて失礼極まりない。



「おや、だめだったかい。それじゃあハンターらしく武器の名前からとるのは?銃ならレボルバー、短剣ならダガーとかね」


自分の失態に気づいて冷や汗ダラダラのカナメはとりあえず女将さんに同調しておくことにした。


「ダガーか、いいですね」


「僕もダガーならいいのら」


幸い、コツメカワウソ自身も気に入ったようなのでそのままダガーと名付けることにした。


ギルドの受付嬢から討伐した魔物にCランクが混ざっており、EランクになるかDランクになるか決めるのに少し時間がかかるため新しいカードは午後以降取りに来てくださいと言われたためこうして遅めの朝食を宿でとっていたのだ。


寝すぎたためもうランチメニューになっていたが。


昼過ぎにギルドを訪れ、無事にDランクに上がったギルドカードを受け取る。

これでフリーター証明書も発行してもらえる。

フリーター証明書がうれしいというのも変な気分だが、意気揚々と受付嬢に発行手続きを依頼した。


「では専属ではなくフリーター希望ということでお間違いなければこちらにサインをお願いします」


出された書類にサインをし、証明書は明日以降に取りに来るよう言われた。

午後から討伐に行っても時間が微妙なため、明日証明書を受け取ったらいつでも旅立てるよう準備をしようと買い物に出かけることにしたカナメは、おススメの武器や防具を扱う店を聞いてギルドをあとにした。


ギルドではさっそく上司に規格外がフリーターになる申請を出したことが知らされる。

幻獣が本物ならとんでもない逸材だが、嘘ならとんでもないアホだ。どちらにせよ厄介なことこの上ない。ことなかれ主義の上司はフリーター志望なら厄介な規格外にはさっさと出て行ってもらおうとDランクへの昇格を許可したのである。思った通り、無事に出て行ってくれるようで一安心だ。



出て行ってほしいと思われているなんて知る由もないカナメは、教えてもらった店へ行った。

世界を股にかける大規模な商店の支店だった。


カウンターに立っているのは人間ではなく、二足歩行の猫だった。


「いらっしゃいませにゃ。ここは武器のカウンターにゃ。ご用件をお伺いしますにゃ」


「牛刀みたいな短剣ください」


「短剣はこれぐらいにゃ」


カウンターに並べられたのは銅、銀、金、プラチナ、ミスリルの5種類の短剣だった。


「予算20万だとどれが買えますか?あと、大体の値段も教えてください」


「20万だと銀の短剣18万がおススメにゃ。銅は8万、金は30万、プラチナは50万、ミスリルは120万にゃ。短剣以外にも、長剣や棍棒、銃、斧、ナックルなど様々な武器を取り扱ってますにゃ。色々試すのもおススメにゃ」


ゴブリン討伐のかいもあって、所持金は35万ある。武器と防具以外にも着替えや食料など必要なものはいくらでもあるのだ。


「もう少し考えます」


「お待ちしておりますにゃ」


別のカウンターには二足歩行の豚が立っていた。


「いらっしゃいませブー。ここは防具のカウンターですブー」


「防具一式欲しいんですが、予算10万くらいでどんなのがありますか?」


「武器は何をメインで使う予定ですかブー?」


「短剣の予定です」


「では身軽に動ける必要があるですブー。例えば革の鎧に盗賊のバンダナ、盗賊の手袋で素早さを上げるブー。3点で11万5千コインブー」


「内訳は?」


「革の鎧が9万、バンダナ1万、手袋1万5千コインブー。予算に近いもので一番守備力を上げるのはこの鎧ですブー」


「もう少し予算をあげたら?」


「たとえば、同じ革の鎧でもオークやトカゲナイト、クロコダイル、ドラゴンとランクが上がるにつれて耐久性と防御力が上がっていきますブー。ドラゴンなら火属性の魔法耐性なんかもついてますブー。あとはお腹回りが心許ないけど金属製の胸当てもオススメブー」


「わかりました。もう少し考えてみます」


「お待ちしておりますブー!」



もう少し討伐依頼をこなしてお金を貯めて、良い装備品を手に入れてから旅に出よう。


そう決めたカナメは次の日受付嬢にしばらくお金を貯めたいから良い討伐依頼はないか聞き、カナメがしばらく滞在するようだと報告を受けたギルドの上司は胃を痛めた。



お察しの通りジョジョが好きです。

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