裏ステージ
何度も見直ししてません。
偶然だが俺とアリスは裏ステージへの条件を満たしてしまった。条件はこのダンジョンを一定以上の攻略と全員の合計が星4になると裏ステージに強制転移させられる。俺の星は0、アリスの星は4、先ほどまではゴンズ達がいたから強制転移は起こらなかったがアリスがゴンズ達を殺したので2人の合計が星4になる。
(ほう!ここが裏ステージか!特に変わった様子もないが?)
(そりゃあ、いくら裏ステージでもダンジョンでまで急に変えたらただの別のダンジョンになるじゃん!さっきまでのダンジョンと構造はそんなに変えずにモンスターだけ強くしてるからこそ裏ステージなんだよ!)
(私にはガクのダンジョンへのこだわりは分からんが、ここが楽しそうということは分かるぞ!)
「ごめんガク…………何かしらのトラップが起動したみたい、そもそもこのダンジョンに転移トラップなんて聞いたことがないわよ」
「まあ、トラップなら仕方ないでしょ!それよりここからどうやって帰るかが問題じゃない?」
「ガクの言う通りね!このトラップが普通の強制転移なら、出口からだいぶ離れた所に飛ばされているはず、まずはマッピングしながら出口に繋がる通路を探しましょ!」
アリスがペンと紙を取り出す。
「へーアリスはマッピングができるんだ」
ゲームならマッピングは自動的にできてたし現実で自分のダンジョンをマッピングしているところを見られるのは感動だ。
「…………私も初めてだけどよくパーティー組む子がやってるのを見たことがあるだけよ」
アリスが恥ずかしそうにそう言った。少し残念だけど、そもそも俺はこのダンジョンなら大体の道は覚えてるのでマッピングはそもそもいらない。
(ガクよ、裏ボスは倒さないのか?裏ボスと戦いたいぞ!)
(安心しろよ魔王、この裏ステージに出口はない!ここから出るには裏ボスを倒すしかないから)
(おおーそうなのか!それはナイスじゃな!ムムム⁉ガク前からモンスターが来るぞ)
魔王に言われて正面の通路を見るが何もいない。
「ガク、剣構えてモンスタよ!」
少し遅れてアリスもモンスターの気配を感じたようだ。暗闇から見えるまで俺は、モンスターが近づいてきている事がわからなかった。
「なんでこんなやつが⁉ガク下がって!こいつは星4ダンジョンにいるモンスターよ」
暗闇から出てきたスケルトンドラゴンにアリスは驚いていた。そして暗闇から出てきたスケルトンドラゴンは1体ではない、後ろからさらに2体増えた。
(魔王身体強化お願い!)
流石にスケルトンドラゴンを俺の力だけでは倒せないので魔王の力を借りる。
「左は俺がやるからアリスは右をよろしく!真ん中のは早い者勝ちな!」
そう言って俺は走り出す。
「ちょ⁉そのセリフ!待ちなさいガク」
スケルトンドラゴンに対し俺の剣では恐らく致命傷を与えることができない、技術的な面でも性能的面でも。なら何で補うか、答えは魔王だ。
(魔王!剣の火のエンチャントを)
(それをするくらいなら私の魔法で倒した方が早いのに…………仕方がないのーその代わり真ん中のは私が倒す!)
魔王の魔法で剣に炎がまとわりつく。俺は振りかぶるようにスケルトンドラゴンに斬りかかる。スケルトンドラゴンは尻尾で防ごうとするが炎を纏った剣はまるでバターを切るようかのように尻尾ごと本体を真っ二つにした。
アリスも大剣で無理やり防御を無視して俺と同じように真っ二つにする。
残り1体となったスケルトンドラゴンに容赦なく魔王が魔法を打ち込んだ。スケルトンドラゴンを飲み込むように出た炎はスケルトンドラゴンが魔石になるまで燃えていた。
「ガク‼あなた実は私みたいに新人のフリをしていたの?明らかに星4以上の強さだし!それにその魔法!」
戦闘が終わってアリスに詰められる。
「だから企業秘密って言っただろ?あと俺は正真正銘、星なしの新人だよ」
「なによ!私にだけ秘密を明かさせておいてガクは教えてくれないの?」
「いや、秘密も何もアリスが勝手に俺についてきて勝手に自分から言ってたんじゃん!」
「グッ…………まあいいわ!冒険者の詮索はご法度だしね」
意見が180度変わったアリスである。
「それよりもこのダンジョン星4はあるわよ、ガクがそこそこ強いのは分かったけどダンジョン自体は初心者同然なんだから油断してたらダンジョンで命を落とすわ、ここからは慎重に行きましょ」
まあ何だかんだ言って俺の心配もしてくれているアリスはいい冒険者なんだなと思い、そんなアリスに対して隠していることに罪悪感もある。
ともあれその後も俺達は、次々と出てくる星4モンスターを倒してようやくボス部屋の前までたどり着いた。
ここに来るまでに大体8時間くらいだろうか?アリスが途中で同じ通路をグルグルと回ってマッピングしていたのが一番のツボだ。あの時は魔王と二人で大爆笑だった。
「ガク恐らくこの扉を開けたらボスの部屋よ!時間的にも体力的にも出口を探して歩きまわるよりボスを倒したら出てくる転移魔方陣に乗って帰る方が成功率が高いわ!ガクは強いしそんなガクよりも強い私なら二人ででもボス倒せると思うけどどうする?」
「(もちろんボスを倒す、のじゃ!)」
「じゃあ装備を整えてからボス戦よ」
・・・・・・・・・・
アリス視点
私の所属しているギルド、ワールドナイツに来ていた依頼は最近王都で新人潰しがあるかもしれないから調べてほしいという曖昧な依頼だった。こんな曖昧な依頼をギルドランク3位のワールドナイツにすること自体おかしかった。
だがギルドリーダーは私に行けと命令した。リーダーにそう命令されたなら仕方がない。私はギルドではまだまだ新人で星も4、最前線で戦っている先輩たちのお荷物にはなりたくなかった。
聞くところによると闇ギルドが関わっている可能性があるとのことだ。
私が調査に入ると確かにここ一か月で新人の死亡率が高い。そしてほとんどの新人が星2のダンジョンで死んでいる。
そのことに目を付けた私は、王都の冒険者で新たに登録する新人とパーティーを組み撒き餌さにしようと考えた。
そしてガクに出会った。美少女の私の誘いをガクに断られ、ムキになりダンジョンまでついて行く。
ガクは新人とは思えない動きでゴブリンを倒していた。大体新人は普通、新人どうしでパーティーを組み複数人でダンジョン潜るのだ。決してガクのように一人で入ろうとはしない。
ムカつく新人だと、最初は思った。だが依頼料は半額を私にくれるし意外と義理堅いところもある。
そして私達に話しかけてきた冒険者達が来た。
私はこれを逃すまいと全力で媚びた結果ダンジョン行くことになった。それも星2のダンジョン。
ガクには悪いと思ったが私なら守れる自信もあったし奥の手もある。
その結果闇ギルドの連中の目的を聞き出すことに成功したところまでは良かった。
だけど何故かダンジョンのトラップに引っかかるしこれからボスに挑まなければならない。
隣で休んでいるガクを見る。剣の扱い自体は素人。だが身体能力と魔法は星4の冒険者を超えている。
ガクのレベルならいずれどこかのギルドにスカウトされるだろう。こんな有望な新人を他のギルドには盗られたくないという気持ちもあったし、私自身ガクと一緒にダンジョン攻略したいと思った。
「ねえガク…こんな時に言うのもおかしいけど、私のギルドに入らない?」
・・・・・・・・・・
アリスが突然そんなことを言うから驚いた。俺みたいな新人はギルドに声をかけられることがまずないと聞いた。相当有望な冒険者でも星3は持ってないとギルドの誘いはまず来ないらしい。
「俺みたいな新人誘ってもなんのメリットもないぞ?」
「確かにアンタは星なしだけど、それ以上にその新人離れした強さよ!ガクアンタならいずれ星5に成れるわ!」
アリスに言われるまでもなく俺は半年以内に星5になる予定だ。だがそれにはギルドに入るなんて寄り道になる。
(ガクギルドに入るのか?私はどちらでもよいぞ!)
(いや、今はまだ入る気にはならないよ)
「まあこの話は、このダンジョンを出てからでいいわよ!さあ行くわよ」
俺が悩んでいると思ったのかアリスは後でいいと言う。
(今回は魔王の魔法だよりになりそうだからよろしく)
(はっはっは!やっと私のターンじゃな!)
俺達はボスの部屋に踏み込むのであった。
次回ボス戦です