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腹八分目が適量です

安定の見直しなし!


「知らない天井だ」


いつもと違う天井をみて、そんなありきたりなセリフを吐いてしまう。どうして俺はこんなところにいるんだろう。俺は昨日起きたことを思い出す。


 そうか、95階層でエドワードの裏切りで魔獣と戦い最終的に隠し部屋にある転移魔方陣で逃げだしたんだ。そこまでは思い出せるんだけどそれ以降のことが思い出せない。俺はふと胸の辺りを手でさする。 そういえば光の槍で貫かれたはずの穴が消えている。正確には傷跡はあるが穴が塞がっているのだ。


 この傷、魔王が治してくれたのかな?少し考えて否定する、いや魔王は回復魔法は初級程度だったはず。だとしたら誰がこの傷を?


 いやそんなことより魔王は無事なのか?ここはどこなんだろう?


 そんなことを考えていると扉がゆっくりと開いた、俺は少し警戒しつつ扉の方を見る。


「あら!アンタ起きてたのかい?もう三日も寝たきりだったから死んじまったのかと思ったよ。」


 扉から出てきたのは魔王ではなく、少し太ったおばさんだった。人間だよな?角とかもないし。そんなことよりも聞き捨てならないことを言っていたような。


「み、三日も寝ていたんですか?俺は」


「そうだよ、アンタが森で一人倒れていたところをうちの旦那が拾ってきたのさ、それよりもアンタ立てるかい?飯がちょうどできたところなんだよ、三日も寝たきりだったらお腹も空いてるだろう、服は息子のお古があるから適当にそのタンスからなんでも着てくれて構わないから」


「あ、はい、大丈夫そうです、本当に何から何までありがとうございます。」


おばさんは少し驚いた感じで俺を見て


「礼なら旦那に言っておくれ、わたしゃなにもしてないから、まあ大丈夫そうならわたしゃ行くよ」


そう言って出て行った。


 魔王のことも心配だけど話を聞いた感じ俺が倒れていた所には魔王はいなかったようだ。確かに魔族の魔王が人間に見つかったら大変なことになる、いつもの変装セットは魔王城あるはずだしな。案外近くに隠れているのかもしれない。


 とりあえず難しいことは後で考えよう。俺は言われた通りタンスからてきとうな服を取り着る。部屋を出ると先ほどのおばさんと恐らく旦那さんが食事をしていた。


「おう!起きたか坊主、体の調子はどうだ?まあ元気がなくても、うちのカーチャンのシチューを食べれば元気になるからなカッカッカ」

 

「ほら、あんたがうるさいからビックリしているじゃないか、大した料理じゃないけどたくさん作ったからゆっくり食べな」


「すみません、いただきます。」


 空腹も限界にちかかったためシチューを口に駆け込む。


「美味しいです」

(うまいー)

「そうかいそうかい、たくさんあるから遠慮せずいっぱい食べな」


(なんじゃこのシチューはめちゃくちゃうまいではないか!ガクもっとじゃもっと食べるのじゃ)


「え、魔王」


突然魔王の声が聞こえてきて思わず声を出す。


「まおう?」


「う、うまおう!うまいと美味しいを組み合わせた故郷の言葉なんですよ、うまおう!」


「へ、へー」


 苦し紛れのうまおうは、若干引き気味な反応をされた。


 俺は誤魔化すようにシチューを駆け込む。


(いやーうまいうまい、違うか?うまおう!うまおう!ガクの故郷ではこういうのだな!)


 まただ頭の中で魔王の声が聞こえる。テレパスとかそういうのなのかな?


(魔王聞こえてる?聞こえているなら返事お願い)


試しに声に出さず頭の中だけで問いかけてみる。


(ガクおかわりだ!聞こえとるから)


(おかわりは分かったけどさ、俺が気を失った後どうなったか教えてよ)


(むーう……食べ終わってからでいいじゃろ)


 これはシチューを魔王が満足するまで食べないと説明しないパターンだ。


(なら食べ終わったらちゃんと説明してくれよ)


(まかせろ!なのじゃ!)



......


「あ、あんた大丈夫かい?こんなに食べてくれるのは嬉しけどいくらなんでも食べ過ぎじゃないかい」


俺は今、猛烈に後悔していた。魔王のおかわりがシチューが鍋の中からなくなるまで続いたからだ。おかわりが10を超えた辺りからは数えていないが食べ過ぎで流石に苦しい。


「すみません、少し食べ過ぎたので休ませて頂いてもいいですか?」


「そんなかしこまることないからベットで休んできな」


俺はベットに倒れこみ頭の中で魔王に話しかける。


(さて少し苦しけど説明してくれるかな魔王、あの後どうなったかを)


(ふむ、まだシチューが食べたかったのじゃけど、まあいいいじゃろ)


いやまだ食べる気だったのか実際食べていたのは俺なんだから勘弁してほいしものだ。


(転移魔方陣で移動した後……)



......


「ガク大丈夫か」

「ガク死ぬなよ、死んだら許さないんだからな」

「クソッ、死なせんぞガク!絶対死なせないからな」


 私はガクの心臓が止まったことを確認する。ここからガクに回復魔法をかけても傷が治るだけで心臓は動きださない。ましてや私にはそこまで高度な回復魔法は使えない。せいぜいかすり傷を治せる程度だ。


 落ち着け私、まずは魔法を使わずガクの体を治す方法を考えよう。


 冷静になって思いついたのは、不死のスキルをガクにもう一度与えることだ。だけどここにはスキルを身に着けられるスクロールもガクにスクロールを読ませることができない。


 まてよ?私がガクと融合すればいいじゃないのか?人間と魔族の融合なんてきいたこともないが、できればガクの傷は治せるはずだ。


 いや、魔王である私に不可能はない!ならやるしかないじゃろ!


 魔王はガクの胸に空いた傷口に両手を置く。魔王はそのまま傷口に吸い込まれるように消えていく。


 クッ、なんとか融合には成功したが心臓が動き出さん、それに私の不死のスキルも消えている気がする。このままではガクも私も死ぬ。何とかして心臓を動きださせないと。


 パラパラと雨が降り出してガクの体を濡らす。


 そ、そうだ!昔ガクが故郷の話をしていた時、心臓が止まった相手に電撃系の魔法を使いとどめを刺しつつ生き返らすとか言う訳の分からないことを言っていたな。


(雷神:トール)


一つの雷がガクの体に落ちる。曇り空が一瞬で晴れる程の魔法。


ドクッ……ドク……ドクドク


おおー何とか心臓も動きだしたな。


ただガクを宿主として融合したから体が動かせん。魔力もいまので尽きたし何もできんな


・・・・・・・・・・


(……そこで現れたのがさっきの人間だったというわけだな)


(なんかいろいろとツッコミたいことはあるけど、ありがとう魔王!)


(気にするでないガク、それにこれからはガクに私の手助けしてもらうことになりそうじゃしの)


(どういう事?魔王)


(なあに、簡単なことじゃ、実はの今の私は魔王であって魔王ではないのだ)


なるほど!サッパリわからん!


(ごめん俺にもわかるように教えて)


(つまりじゃ、今の私はガクと融合していて魔王という称号と不死のスキルを失ってしまったみたいなのじゃ、このまま1年以内魔界に私が戻らなければ次の魔王が生まれてしまう。だからこれから私たちは、魔界に帰らなければならない)


(なるほど、魔界に帰るのには結界が邪魔で帰れない、だからダンジョンを俺たちで攻略して結界をなくさせるってことでいいか)


(そうなのじゃ!私は今できるのは魔法を打てるだけと、感覚共有でめし飯を食べるだけだからな)


確かに魔王の魔法と俺のダンジョン知識があれば攻略も不可能じゃないかも。


(よし、それならまずは王都に行かないとね)


(おうと?なんでそんなところに行かないといけないのじゃ?そんな寄り道せずさっさとダンジョンを攻略したいのじゃが)


(え……もしかして魔王知らないの数十年前にダンジョンのシステムを変えて『星』を5つ持ってないとあのダンジョンには入れないんだよ。一度に多くの人間をダンジョンで死なせないようにする制度だったけど、それが裏目にでちゃったね)


 この制度は後付けで取り入れた制度だけどわりかし上手くいきダンジョンに入る人間が増えたほどだ。


(それは知らなかった、なら1年以内に魔界に戻ることは厳しいのか?)


(いや俺の考えでは順調にいけば半年であのダンジョンまで行けるよ。残り半年あればダンジョン攻略できると思うよ)


 基本的に『星』はダンジョンを攻略していればダンジョンが自動的にくれるシステムになっている。

 俺が考える最速で星を増やす方法があれば半年で5つ集めることができる。


(ならば、目的地は王都じゃ!)


まさか自分で造ったダンジョンを攻略することになるとは、思ってもいなかった。


こうして俺たちのダンジョン攻略の旅が始まるのだった。


(あ!そういえば夕食は何がでるのかのう)


今からお腹の心配をする俺であった。





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