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ミーミルの愚者・m  作者: 色夏
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4 手紙

手紙には、要約するとこうあった。


一つは、リタースは、この星では日常品から一般とはかけ離れた用途、希少な装置、軍事に使われている。昔からリタースの研究はされておりどの国でもリタースの謎を解こうと躍起になっている。


二つは、探索者のことだ。探索者は、国や会社、個人からリタースに関する依頼を受ける、国が運営する機関だ。依頼主によって研究や商品のための貴重なリタースの採取や調査がある。


三つめは、佳自身についてだった。この星では人一人にリタースの耐性があり、それは今のこの星では知られていない事実である。代わりに魔法適正と扱われる。魔法適正は、個人差がありその謎はまだ解明されていない。リタース耐性は普通に暮らすには問題にならないが、この先、佳が行かなければいけない場所で必要になると言う。


四つ目、ここからが重要だった。リタースは魔法と呼ばれているが、その使用は夥多な物では一般人でも扱えるようになっているが、希少なリタースは、その使用に個人の素質、つまり魔法適正が関わるらしい。佳は、常人よりも群を抜いた魔法適正を与えられたので大抵のリタースは、使用可能らしいのでその点は心配無用だとか。


そして最後に、森とは反対の平原に向かえばある国が見えてくるとあった。つまりは、佳にその国を勧めたいらしい。


紙には、その他にこらから向かう国の道中で必要な道具を送ったとあった。改めて辺りを見回すと佳の背後、色の薄い雑草に紛れていた。どんな物があるのかと期待を滲ませて漁る。すると、そこには剣と腰に付けるベルト、色どり鮮やかな結晶や荷物を入れるであろう袋が二三あった。


「これ、今すぐ使うわけじゃないよね。使い方分からなし。」


佳は、ヴァラヌスから強力な力を与えられたとはいえ肝心のリタースについては、この星の子供にすら劣る知識の赤子同然のはずだ。授かったであろう力を行使しようにもやり方すら知らない。この瞬間に何処かのゲームキャラとして登場する青いゼリー状の生き物に出くわしても勝てるかどうか怪しい。もしかしなくても逃げてしまう。


そんな、一歩間違えば危険な状況にも関わらすそれすらどこ吹く風という風に佳の関心は目の前の物に向けれれている。

一先ず、一番興味の沸いた剣を持ち上げる。


「おお、本物の剣だ。」


ゲームや漫画の世界では、よく登場人達が軽々と持ち上げている剣、いつか自分も振るってみたいと思ったがことはあるが実際はかなり重く、アニメのように素早く捌くことは困難だと知っていた。だから、剣を持ち上げた時、多少の重量は覚悟していた。しかし、手に取った剣は、それほど重くはなく、しっかりと腕に力を籠めれば難なく振えるようだった。


剣は、もちろん両刃だが、鍔は柄頭を中心に弧を描き宝石が埋められている。刀身は、鍔付近から先端にかけて銀色の光を反射させ、刃は、赤く光を閉じ込めたように鈍く色づいていた。

全く見たことのない剣は、おどろおどろしい、妖しい雰囲気を漂わせていた。少なくともこれは、よく聞く刃物を通り越して命を奪う凶器だ。佳は、軽々しく剣を振るって怪我をしてしまわないように、慎重に素振りのふりをした。


何か起こることを期待していたわけではないが、可能性があると思っていたので関心はあった。きっとあの男の事だ、あっちの方から頼んできたのだからちょっとは気前の良い力で驚かせてくれるだろう。立て続けに起こる目新しい出来事に好奇心が隠し切れずに尾を出していたのだ。


しかし、剣は、風を切る音を立て斜めに虚空を断つ。


何も、起こらない。


剣は、何も起こさず、ただ振るったという事実だけがぽつんと残る。


「まあ、さすがに剣だけじゃあな。一振りしただけでドカーンなんて危なっかしいだけだろうし。」


がっかりした様な感想を慰めるように独り言で納得する。


他の道具も見てみると、やはり、ベルトと袋、結晶だけであった。ベルトは腰に掛けて剣を備え付けて置くための物だった。


袋の中を見てみると布があった。銀を織ったのかと思うほど綺麗な銀白色の布、それが包帯のように何回も巻かれていた。柔らかく、微塵もざらつきなどない、神聖で触れると解けてしまわないかと佳は、思った。


もう二つの袋は、結晶の入れ物らしい。この星に贈られた際に誤って零れたのか、最初に落ちていたのは、袋にあった物だろう。各々の袋は、結晶の入れ物だが、片方は結晶でできているのか丸い、硬貨の形ををしている。用途は分かりかねるが、おそらくこの世界、またはこれから向かう国で使う硬貨と思うのが自然だった。


佳は、こちら側のどのお金も持っていない。いくら神のような者の使いでもスタートから無一文では、あまりにも前途多難である。知識が限りなくゼロに近いならなおさらである。この時代では、探索者と言う職業がある時点で科学技術そう進歩していないのかもしれない。ならば、佳の元居た地球の知識がそうすんなりと受け入れられるか難しいし、可能性として物理法則が異なっていることだってある。高校二年で得られた知識など口先程度で行く先々で変なことを言っては人と円滑なコミュニケーションをとる以前に孤立するのが予想できる。


つまり、この先上手くやっていくためには、努めて慎重に行動しなければならない。


「他に何も書いてない。」


紙を裏返したりして再三、隅々まで確認する。見落としていたわけでもなく、本当に何も書いていない。


自分で送り出したくせに満足した情報も教えず、残した紙は佳の中で消化不良。道具の説明が抜けた紙を眺めていると、だんだんヴァラヌスと言う男に対しての恨めしい感情が生まれつつあった。理知的な雰囲気は見せかけなのか、本当に頼みごとを達成してほしいのかと佳は、腹の中で呻く。


今は、朝なのか昼なのかはっきりしないが、夜があるなら動きずらくなるであろう。こうしていても事は解決せず、佳は、紙に書いてある文字を頼りに平原の奥に足を動かす。


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