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 ……掌の中の温かい感触を感じる。



 重い瞼を開くと、陽が落ちて闇に染まり始めた廃遊園地が90度ばかり傾いているのが見えた。

 鈍い痛みのある頰は、どうやら僅かに熱の残るアスファルトに密着しているようだ。


 生きてる、みたいだな。


 握り締めたままの手の先を見ようと首を捻る。

 ……ぱっちりとこちらを見つめる双眸と、至近距離で目が合った。



「……おい」


「……ん、なぁに?」


「顔が近い馬鹿」


「…………ダメ?」


「恥ずか死ぬ却下」


「ちぇっ」



 手を離して身体を起こすと、ウカも起き上がって再び手を繋いできた。



妖精の輪(フェアリーリング)、壊れちゃってるね」


「元々廃墟なんだから、別にいいだろ?」


「いや世界遺産とかに登録を」


「やめろ絶対やめろ」



 繋いだ手にぎゅっと力が込められたのを感じた。

 そういうときは、オレも同じように返すことにしている。


 暫く、沈黙があった。



「……ひとつ訊くけど、さ」


「あ? なんだ?」


「ユキって誰?」


「……聴こえてたのかよ……って握力! 握力ヤバい!」


「誰?」


「……あー、子供の頃この遊園地で会った、女の子」


「ヤマトは私以外の女の子とはまともに喋ったことないって」


「痛い痛い痛い痛い! いや、さっきまで忘れてたんだよ痛い痛い!!」



 少し騒いだ後、オレはその場に座り込んだまま……蘇った記憶を噛みしめるように、話し始めた。




 まだ幼かった頃、オレは家族に連れられて一度ここに来たことがあった。ちょうど今日みたいな蒸し暑い夏の日だったと思う。

 そこで、ユキに出会ったんだ。

 売店のある広場のど真ん中で大泣きしている、同い年くらいの女の子。彼女の足元にはソフトクリームが落ちていて、アスファルトの熱でゆっくりと溶けていた。

 そばには父親らしき大人が頭をボリボリと掻いて何事か話し掛け宥めている様子だったが、全く効果はない様子だった。


 しばらくそれを眺めていたんだが、それから何故か気まぐれにその女の子に近付いて、無言で手にしてた棒菓子を押し付けたんだ。ほら、あの10円の色んな味のあるスナック菓子。多分納豆味。

 すると彼女は泣き止んだ……んだけど、何故か菓子じゃなくてオレのシャツの裾を掴んでさ、ありがとうって言うんだ。

 まぁ、一口齧った菓子なんていらないだろうけどさ。


 んで何故かその場のノリで、オレと彼女……因幡淡雪で遊園地巡りをすることになったんだよ。いや睨むな、付き添いはどっちも居たからな?

 今思うとその時は既に廃園間近だったのか、やたら客が少なくてさ。だからそれに乗じて色々乗ったりして遊んでたら、気が付けば夕暮れだった。

 んで最後にメリーゴーランド乗ろうって話になったんだけど……ほら、コレってキノコの形してるだろ? オレそれが凄く嫌でさ。

 うん、今もキノコは食べられん。うるせぇ、そういう格好悪い話はしたくなかったんだっての。

 まぁとにかく、それでオレは拒否したんだよ。そしたらユキの奴さ、どこで聞いたんだか……。



 ねぇやまと、夕暮れに1人で妖精の輪(フェアリーリング)に乗るとね、妖精に連れて行かれるんだよ?。



 そう笑いながら話してさ、そのまま本当に1人で乗ってったんだよ。他の客もちょうど誰も居なくて、親たちもなんかカメラ失くしたとか騒いでて……。


 オレ1人が見守る中、ユキを乗せた妖精の輪(フェアリーリング)は動き出して……その瞬間、空気が変わった。

 ああ、彼奴らの気配だった。間違いない。

 その異常に泣きそうになってたオレの前で……ユキは忽然と消えたんだ。

 オレは訳が分からなくて、親たちにも説明出来なくて……まぁ当然なんだが……で、それっきりって訳だ。

 今までこの遊園地の存在ごと忘れてたのは、きっとそれがオレのトラウマだったんだろうな。




「うん、それだけの話だ。断じて初恋じゃない。……あの、ウカさん?」


「……でも、可愛かったんでしょ?」


「あー、まぁ、そう、かも? 長い髪にプリント付きのワンピースで、きっと将来美人に……いやでもウカの方が可愛い! ウカ最高!」


「んむぅ……」



 スマホのライトが道を照らす中、オレたちは手を繋いでバス停へと歩いていた。手を繋いで。

 でもいつもと違うのは、その繋ぎ方が指を絡め合っての繋ぎ方だってこと。こんなのは初めてで、ちょっと動悸がする。

 あ、でも恋人繋ぎって指に変な負荷が掛かって微妙に痛いんだな。長時間はちょっとつらい。



「なぁ、次があれば……なんだが」


「んぅー?」


「ちゃんと次からは、さ。オレも一緒にメリーゴーランドに乗る。……もう、離さない」


「えっ、やった!!」


「ちょっ手を振るな痛い」


「じゃあ次は馬車のあるメリーゴーラウンドにしよう! どーこが良いかなーっと♪」


「それよりまたプールとか……」


「え、顔が気持ち悪かったからもうヤダ」


「えー…………」


「メリーッゴーッラウンドゥッ!!」

最後まで読んで頂きありがとうございました。

……ええ、これはホラーの皮を被ったナニカですね、よくある話です。


今回は企画参加として初のホラーに挑戦してみましたが、普段は異世界転生モノを連載したり、謎の短編を書き散らしたりしております。

そちらの方も、気が向いたら是非訪ねてみてくださいませ。



最後に

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あ、「爆発しろ」って感想ボタンはないですよ?

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