変人と相合傘(1)
6月に入り、梅雨の季節がやってきた。
ただいまの天候はもちろん雨。
道には大きな水たまりができており、車が通る度に大きな水しぶきが上がる。
「きゃー!雨だー!」「やべっ!傘忘れたー!」「走ればいけるんじゃね?」「一緒の傘で帰ろ!」「うん!」
男女問わずたくさんの人が、この状態に困惑する。なんせ、朝はカンカン照りで雨なんて降りそうになかったからだ。だが、周りを見て違和感を覚える。
「あれ?傘もってきてる人多いな…」
そう、傘を忘れて困っている人が数えられるほどしかいないのだ。
「なんでだ?うーん……………あ」
そういえば、と今日の朝のことを思い出す。
朝は寝坊して急いでいたのでうろ覚えだが、最近人気が出てきた美人のアナウンサーが、
「今日は全国的に午後から大雨が降るでしょう」
なんて言っていた気がする。
だとすると………この雨、もっとひどくなるのか?どうしよう…」
親へ連絡しようかと思ったが、こんなときに限って公衆電話が修理中だし、雪菜はまだ部活だし堺もマサも美里も美紅も帰ってしまった。
「はぁ、仕方ない。部室行くか……」
嫌な予感しかしないが、雪菜のいる部室へと行くことにした。
●
俺と雪菜は同じ部活に入っている。
その名もテーブルゲーム部。
基本はオセロや将棋などをしているが、別に大会に出るわけでもないのでUNOや人狼、TRPGやキャット&チョコレートなんかもしている。
最近は、部長の命令により「親睦を深めるために王様ゲームしよう!」とか「ねえ、ツイスターゲームしない?」とか「よっしゃあああああああああ!!!ポッキゲームすっぞおおおお!!!」とやたら密着系のゲームばかりしまくるので部活には行っていなかった。というか行きたくなかった。
ため息を何度もしながら部室の前についた。
ノックをしようと手を伸ばした瞬間、扉が少し開き、手が尋常じゃないスピードで出てきて俺の手を掴んだ。
「ひっ!!!」と短い悲鳴を上げながらも逃げようとするも、手が全然離れない。
「くっ、くそ!!!」
両手で剥がそうと反対の手を伸ばすと、そちらも掴まれた。
「ぎぃぃぃやあああぁぁぁ!!!」
俺の悲鳴が聞こえたのか、部屋の奥から雪菜の声が聞こえる。
「ちょっと部長!!!それ、見学にきた生徒じゃなくて圭君です!!!離して下さい!!!」
「おっとっと、すまないすまない」
さっきまで全然離れなかった手がいきなり外れたせいでバランスを崩し尻餅をついてしまった。結構痛い。
「あーあ、なんだ。新入部員じゃないのか。がっかりだよ。ところで圭、久しぶりだね。もう1週間は部室に来てなかったんじゃないか?久々に何かゲームでもしないか?例えば……そうだ、野球挙なんてどうだ?楽しいぞ?」
「しませんよそんなの!!!」
うちの部長、正岡和葉は学校でも有名な変人である。