7:任務1 -親友の過去ー
任務の地は、中南米某国のジャングルだった。
そこで、麻薬工場の偵察と工場視察に訪れた麻薬組織の幹部の一人、ホセを写真に撮り、チャンスがあれば狙撃する事だ。
ジェイミーは、四人のチームを組みジャングルをかき分け、途中で自然の猛威や、カバやワニなどの大型動物の襲撃を回避しながら、麻薬工場へ向かった。
目標付近に到着すると、潜伏場所を決めそこから人間の動きを観察した。
工場は三棟で、北に向かって伸びており、長方形の形をしていた。
素材は粗末なトタン板で作られていたが、転々と取り付けられている窓からは、麻薬を精製する最新の機材がひっきりなしに稼働しており、その周りを作業員が慌しく動き回っているのが見えた。
毎月トン単位で精製され、敷地内の東にある未舗装滑走路から飛行機を使い出荷されている。
見回りがAK47で武装し昼夜と三交代制で、工場付近をうろつき、獰猛な犬であるドーベルマンを連れている。
迂闊に近づけば、すぐに発見される可能性が高い。
「情報よりかなり警備が固い……まずはこのまま監視を続行し、奴らの幹部が来るのを待つ」
ジェイミーは、チームの四人に冷静に指示する。
情報が正しければ、明日の午後一三時に幹部がここに現れるはずだ。
最低限の写真撮影を行えばそのまま撤退しても良い事になっている。
しかし、ジェイミーには病院通いの母の顔が頭に浮かんだ。
もし、狙撃に成功すれば、追加手当がもらえる可能性がある。
少しでも家計の助けになれば、父も喜ぶだろうし、なにより自分の部隊内の評価も上がり、昇進への近道ができる。
「何を難しい顔しているんだ? さては狙撃を考えているのか?」
チームメンバーの一人、バリーからズバリ指摘され、ジェイミーは内心焦る。
「まあ……な……ただ、危険が伴うからな、皆の同意が必要だ」
ジェイミーは申し訳なさそうな顔をする。
「けっ、水くせえな。おい! お前ら! イカレポンチの額に一発ぶち込みたいか?」
彼のその一言が発せられた瞬間、長時間の監視活動で、少し退屈していた隊員たちの憂さ晴らしの返事がオウム返しのように返ってきた。
「ぶち込みたい! 別の意味で巨乳女にw」
お調子者で、数ヶ月ごとに女を取り換える男、ベンが答える。
「鉛玉ぶち込んでも、俺気持ちよくないw 風俗代奢ってくださいよw」
ロンドンの風俗と酒のマスターといえば、バッカスだ。
さっそく奢りを要求してくる。
危険地帯に潜入しているにも関わらず、性欲だけは忘れない特殊部隊の鏡のような男達である。
「まっ、こんな反応だ。別に気に病む必要はないんじゃねえか?」
この場に似つかわしくない、満面の笑顔でバリーは言った。
結果を出せば、彼らの評価も上がる。
ましてや彼らは、慎重派ではなくどちらかといえば、好戦派である。
しかし、無鉄砲に突撃するほど彼らはバカではない。
敵との交戦の場合は心得ている。
「皆がその心構えなら、可能であればそうさせてもらおう」
荒くれ共を見て、口の端を上げニヤリとし答えるジェイミーだった。
彼も同様にこれから行う事を考えて、血が静かに騒いだ。