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ジェイミーは、一通り話し終えるとキャシーに目を向けた。
「フィンとはそれきり話していない。エイミーは、二週間後に山中で遺体になって発見された」
淡々とした口調で、事実を言った。
「……そうなの」
キャシーは、なんと言っていいかわからなかった。
「俺もその後、窓際に追いやられてSASを辞めた。食うために民間軍事会社に転職したよ。かなり危険な任務に駆り出されて、それはキツかったが」
ジェイミーは、夜空に目を向けて、遠い目をした。
「だが、彼女を殺したヤツを野放しにはできなかった。だから、俺を訪ねてきた刑事とコンタクトをとって調査したよ。そして、ようやくここを見つけたんだ」
C4爆弾を握る手に力がこもった。
気まずい沈黙が、二人の間に広がった。
しばらくしてキャシーが口を開いた。
「どうしようもない時って、あるんじゃないかな?」
か細い声で言った。
「そのフィンさんもあなたと同じで、戦闘能力の高い人かもしれない。でも、タイミングが悪くて気づけない時だってあると思う」
キャシーの視線は、ジェイミーを射抜くようだった。
「そんな事は、わかっているんだよ」
ジェイミーの冷たい目が、キャシーを睨み返した。
「では聞くが、頭では理解していても、感情が抑えきれない時だってあるだろ?」
握り拳を作って、地面に打ち付けた。
土が飛び散って、周辺を汚した。
「あの時、俺が彼女に警告しておけばよかった。すでに不穏な空気を感じていたんだからな」
打ち付けた腕が震えて、顔に青筋が立っていた。
「この煮えたぎった気持ちを解消するには、クソッタレのウォルター、そして愚かなフィンを殺すしかない」
ギラついた目をキャシーに向けて、威圧した。
「それでも……あなたたちはエイミーさんを」
キャシーの口を布が、覆った。
睡眠剤が染み込ませてあった。
「もう、何も言わなくていいんだよ」
ジェイミーは、胡乱な目でキャシーを見た。
「お前には、役に立ってもらう。それだけは確実だ」
彼は、淡々と準備作業に戻った。