17:任務6 -親友の過去ー
「目標沈黙」
抑揚の無い冷静なバリーの声が、無線機から聞こえた。
スコープ越しに、浅黒が吠えているのが見える。
「まさか、帽子が飛ぶとは…… ナイスショット、バリー」
思わぬ状況に戸惑ったジェイミーだったが、単独狙撃ではなかった事を幸運に思った。
「バッカス。ちゃんと目標の死体は、撮影したか?」
「バッチリ撮ったぜ、リーダー」
バッカスの無線機から物音が聞こえる。おそらくカメラをベルゲンに入れているのだろう。
「ベン、回収部隊の依頼を作戦本部に伝えてくれ。回収場所は、国境付近で頼む」
「オッケー、やっとくわ。ちょっと時間ちょうだい」
狙撃の観測手をやった後とは思えない調子で、ベンは通信機を用意した。作戦本部に連絡する為、手慣れた様子で、無線機のチャンネルを合わせている。
その時、輸送機から降りてきた連中にチームの面々は、注目した。
「おっと…… こりゃ厄介な奴らが隠れていたな……」
バリーの指摘に皆も同意見だった。
「全員が野戦用迷彩服、AKタイプ小銃、周囲への素早い警戒態勢の動き…… 相当現場慣れしている奴らだろうな……」
ジェイミーは、苦々しい顔をして、言葉を発する。
「えー、マジ聞いてねえよ、あんなのがいるなんてよ~ 情報部員マジ使えね~」
ベンの愚痴が、ジェイミーの耳に入る。
「ぼやくな。情報が違うなんてのは、日常茶飯事だろ。現場で対応するしかない。それよりも早く作戦本部に連絡しろ」
スコープの十字線に浅黒の顔を捉える。目を血走らせ、激を飛ばし指示する姿が、印象的だった。
キツネは、先ほどの怪しい動きとは対照的で、うまく指示を出し。
作業員達にAK47を武器庫から出させて、武装させている。
「これは、はやくずらからないと、ジリ貧になりそうだな」
カメラをベルゲンに入れ終わったバッカスは、自分の荷物の片づけをすでに始めていた。
「ゼロ、こちらタンゴ17。作戦終了。回収を要求する。場所は、国境付近のポイントA」
ベンの通信の後、数秒後に返信がきた。
「タンゴ17。こちらゼロ。了解した。明日の朝、○六二○時に国境のポイントAまでこられたし、回収部隊を送る」
ベンが通信機を切る。
「迎えにきてくれるって♡」
ベンは、親に学習塾の迎えをお願いして、待ち焦がれる子供のような声を出した。
「よし、全員撤収準備を整えろ」
時刻は、一六四○時。
日の入りまで、約一時間ある。
闇にまぎれて、行動を取るのが、得策だ。
ジェイミーの指示で、チームは動き始めた。