第五話
朽ちた太陽神 が書きました。
「ねぇ、あれ見て。」
礼羅がとあるカフェを指差した。
「このカフェがどうかしたのか?」
「中だよ中。棚見える?」
そう言って神羅と目線を合わせようと礼羅は顔を近づけた。
「正面に棚があるじゃん。その上に置物があるのわかる?」
「ああ。何か置いてあるな。」
「あれ、貰えないか交渉してくる。」
そう言って、店内に入ってしまった。おいおいおいおい、マジか。急いで礼羅の後を追う。
「すみません!」
「--------」
思わず耳を塞いでしまうような泣き声が聞こえた。
「おい、礼!いきなり道場破りみたいに入るから泣いちゃったんじゃねーの?」
「俺が入った時から既に泣いていたよ。じゃあ、交渉してくるから、兄さんはそこで待ってて。」
「迷惑かけんなよ。」
「この時点で結構迷惑だよね。」
屁理屈野郎!!と思った神羅であった。
神羅が店内を見回すと、先刻から泣いている少女・・・少年?が目についた。
→神羅は『お人好し』を発動した。
「さっき、すげー泣いてたけど大丈夫か?」
「美味しいパンケーキ・・・。」
何のことだと思い、テーブルの上を見ると・・・絶句するようなブツが皿の上にのっていた。むこうの人が食ってるサンドイッチは普通なのに、こっちはかなり事故ってる。何があったんだ・・・。
「これが出てきたら、そりゃ泣くよな。」
少女(少年?)は今だにヒクヒク泣いているし、保護者っぽい女の子はブチ切れたのか、テーブルに手をついたまま動かずうつむいている。
「ここから50mくらい先にマジで美味いパンケーキの店があるから、良ければ行ってみてほしい。そこはアタリだから。オススメはキャラメル&クリームミルクアイス添え。」
泣いていた子が目を見開いてこっちを見ている。・・・驚いているのか?まあいいや・・・。
「俺さ、この辺の飲食店はわりと精通してるから。」
さっきから俺しか話してねぇ!!と思った。すると、少女(少年?)が何か言おうと口を開いた。その時、後ろからぎゅっと抱きしめられた。
「兄~っさん。」
礼羅だ。吐息がかかる。
「貰ってきたよ。」
「よかったな。」
「うん。早く帰ろ。・・・その子さっき道で見かけた子だ。」
「この子の事を言ってたのか。」
「近くで見れば見るほどポ〇モンのキャラに似てる。」
ゲーム脳め!!
「ていうか早く帰ろうよ。兄さん。」
礼羅が新羅の服の袖を引っ張る。
「なんでそんな機嫌悪いんだよ。」
「別に悪くないし。(ボソッと)なんで神羅って誰にでも優しいのさ・・・。」
礼羅がブツブツ言ってるけど、何も聞こえない。気にもならないが。
カランカラン♪(←ドア)
~礼羅side~
正直交渉は得意。今回は相手がオネェだったし、尚更楽勝だったからな。ちょっと上目遣いで微笑めばコロッとね。オネェの人のテンション上がってる・・・気味悪い。早く帰りたい。そう思って神羅を探すと、泣いていた子のところにいた。
自覚してるけど、俺、結構嫉妬深いんだよね。器も小さい、独占欲は膨大。でもこればっかりは、しょうがないよね?・・・だって原因は新羅なのだから。この『家族』て立場もうんざり。なんせ、これ以上先に進めないんだし。・・・とにかく、優しげに話してるのに苛立って後ろからホールド!!
何すんだよ・・・とか言ってたけど、幸せでした。ごちそうさまです。神羅の匂い・・・。安心する。この世で一番好きな匂い。実は幸せすぎて、店を出るまでの記憶がないんだよねWW
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「結局、礼の乱入でほとんど会話できなかった。」
「兄さん、疎まれてただけなんじゃないの?それか警戒の対象だったとか。」
「そうだったのか?余計なお世話だったかもな」
「むしろ、こっちを助けてほしかった。」
「何?交渉か?」
「違う違う。もう一組別のお客さん達いたじゃん。そのうちの女の人が怖い顔でこっちを見てたんだよ。」
「被害妄想はよくないぞ。」
「だから違うんだって。何か、好意じゃなくて敵意でもなくて、ターゲット・・・的な?俺は恐ろしかった。」
そう言って、自然と体を密着させてきた。
つくづく思う。俺は礼羅に甘い!!
・・・そういえばさっきの子はどうしたんだろうな・・・。それに礼羅が恐ろしいと言った人もきになるな。鋭い奴だからな・・・礼羅は。
・・・気にしても仕方ないな。うん。
「ところで何貰ったんだ?」
「ん?木彫りの熊だよ。くわえてるのが鮭じゃなくてPSPなの。」
「マジでふざけたオブジェだな。」
「これでも限定品なんだよ。」
「そ・・・そうか・・・。」
口ごもった。