日常の中で 前編
大幅に編集を加えました
プロローグはそのままですが、この話以降の話は大幅に文章を書き直していくつもりですので、よろしくお願いします
元の話の題名を
行動開始! 前編 から変えました
次の話も書き直し出来次第変えて行こうと思っておりますので、指標としてお使い下さい
「──それでね?」
お喋りな友人の声を上辺で聞き流しながら、私は二人で並んで学校へと歩みを進める。
「ねぇ、聞いてる?」
「聞いてる聞いてる。」
「もう、また考え事してたでしょ!」
「ばれた?」
口を膨らませながら、そんな事ぐらい分からなくてどうするの、と中学校からの付き合いで、現在高校二年まで一緒にいる彼女はそう言った。
「毎回思うんだけど、そんなに毎日考えなければならならない様な事ってあるの?」
「まぁ、あるから考え事してるんだけど……。」
「む……じゃあ、華梨花の好きそうな話を一つ!」
これなら聞くだろう、と自信満々に言う姿に私はつい笑ってしまった。
「じゃあ、私の好きな話じゃなかったら、考え事していいの?」
「良くない!それとこれとは話は別なんだから!」
「えー……。」
私が冗談でそう言う反応を取ってみれば、彼女は表情を曇らせ、隣にいた状態から私の前に走り出て向き合う形になる。
「そんな反応しなくてもいいじゃん。こうやって話せるのなんて、登下校の間しかないんだから。」
「いつもいつも、お疲れ様です。人気者は時として辛いねぇ……。」
「何お婆ちゃんみたいな事言ってるの。」
「いや、実際そうでしょ?」
「別に私一人が人気者な訳じゃないからね!」
そんなに思いっきり否定しなくても、と苦笑すれば、彼女は頬を膨らませた。きっと彼女に浮かんでいる人気者は、彼の姿であろうと想像が出来た。いかにも、分かりやすいと心の中でぼやく。
「はいはい……それで?」
「うむ!よく聞いてくれた!実はですな?ここ最近怪異が起きるって噂が校内で歩き回っているのですよ!」
私が聞く体勢に入ったのを見て、彼女は私の横に戻り、また歩き出した。
「うんうん。」
「で、その内容が、ある場所を黄昏時に通ると女の子の声が聞こえるんだって!あまりにも小さい声だから、その言葉の内容はよく分からないらしいんだけど、その場所のどこにも女の子はいないのに、声が聞こえる……どう?」
「成る程……噂の発信源は?」
よし、食い付いた!と私の返した言葉にガッツポーズをする彼女。私の気をそらせた事がそれ程に嬉しいらしい。……私はそんなに淡白な人間ではないのだけれど?
「私もよく分かってないんだけれど……多分、うちのクラスの副委員長さんだよ。」
「ほうほう。」
「華梨花って、そういった話によく食い付くよね。好きなの?」
「まぁ、好きって言えば好きかなぁ……。」
「なんか曖昧な言い方だね。好きなら好きって言えばいいのに。」
「いや、好きかと言われると……うーん。」
第一、怪異の噂を集めているのは自分が楽しむ為じゃないし。
私はそっと視線を左手にしているブレスレットに移し、最近増えてきた怪異の噂に辟易とした。まぁ、抗争が激しくなってきてるし、仕方ないと言えば仕方のない話ではあるのだけれど。
「嫌いだったら、そんな事しないでしょ?」
「そうだね。」
じゃあ、好きなんじゃん、と彼女は笑う。
もし、彼女がその怪異の原因を知ったらどう思うだろうか、とふと思った。一般人には知られてはいけない裏の話など、絶対にしてはいけないものであるから、一生彼女達は知る事はないのだろうけれど。
きっとある人は目を輝かせ、ある人は顔を歪ませたり事であろう。そうだなぁ……彼女は言えば後者の方に入るのではないだろうか?戦いは特に好まない、優しい子だから。
学校に着き教室に入れば、まだ来ている人は少ないのかまばらに聞こえてくる挨拶の声。
私はそさくさと窓際にある自身の席に座り、安堵の息をはいた。毎度毎度彼女の隣にいるだけで突っ掛かってくる人がいるので、学校は気が張って落ち着ける場所が少ない。
そう言う人って本当に面倒な人間だと思うんだ。相手の為だ、なんて言っているけど、結局は自分がその人の近くにいたいだけ。結局は独占欲だし、自己中心的な欲望。そう言った人って、案外人としては小さい人間だと思うんだ。
自分のやりたい事に対して邪魔な人間がいると蹴り落としていくタイプ……まぁ、何かしらの戦いに置いてはそう言った性格の人が案外生き残っていったりするんだから、不思議なものだ。かと言って、負ける気はさらさらないけれど。
「HRまで、後二十分か。」
大概の人は五分前とかに一気に教室に入ってくる。まぁ、高二だし勉強するとかそう言った思考はまだないのであろう。
私は大きく口を開けて欠伸をしながら、彼女の方へ視線を向けた。
「朝から元気そうで何よりです。」
彼女の周りには友人が多く集まり、賑やかに話をしている。夜遅くまで働いている私は眠気で頭が未だにぼぅ、として女の子の甲高い声が頭に響いてくらくらする。
「……ねむ。」
私は机の上にうつ伏せになり、小さく呟いた。ちゃり、と左手首のブレスレットと机が擦れる音がする。それに合わせて右手でブレスレットを触り続け、ちゃりちゃりと弄りながら親指で刻印をなぞる。
乳白色の丸い石を連ねて作られたそれには、私の施した刻印が施されている。……ブレスレットそのものは貰い物ではあるのだけれど。
そっと顔を上げもう一度時計を見やるが、あまり時間は経っていない。
こう言った時に限って時間が経つのが遅いんだよなぁ、なんて思っていれば、私のクラスの担任が顔を出した。
「おーい、朝霧いるか?」
先生の呼び声に彼女が先生の元に駆け寄り、何ですか?と聞いているのが聞こえ、先生は苦笑しながら彼女に話の内容を話している。彼女の表情は途端に曇り、私の方をちらりと見てきた。
何かあったのだろうか、と彼女の視線の意味が分からず、私は見返しながら首を傾げた。黒色でポニーテールにしている髪が首筋にあたり、気持ち悪くて直ぐに傾げている首を元に戻したが。
先生は一度職員室に戻ると言う事なので、教室を出て行った後、彼女は自身の席には戻らず、私の方へと近付いてきた。
「どうしたの、結衣。」
「今日は陰絇と副委員長がいないらしいから、代理やってくれって。」
「雹堂はいつもの事だけど……結衣が気になるのは副委員長の方?」
「いや、陰絇も気になる事は気になるんだけれど──」
「副委員長が気になるのは、あの噂の発端であるから、でしょ?」
そう、と彼女は頷いた。
「こう言った噂って、本当に起こってる事だったりするから……。その代わり直ぐにその噂はなくなっちゃうけれど。」
「まぁ、ねぇ。」
その原因は私達が作って、その噂は私達が消しているなんて言えない。
此処ら辺一帯だけでなく、こう言った怪異物の噂は大概本当に存在している。それのせいで病院に送られた人や、トラウマを抱いている人もいるから、タチが悪い。
最近は抗争が激しくなってきてるから、尚更。
……早々に纏めないと。
「今日の放課後、副委員長の家に寄っておきたいのだけれど、一緒に来てもらえない?」
「オーケー、私も気になるし。」
「ありがとう!流石は華梨花だね!話がわかる!」
お願い!と両手を合わせていた彼女は、私の言葉に嬉しそうに笑顔を見せた。つられて私も笑えば、タイミング良く鳴るチャイム。
「じゃあ、放課後!」
「了解。」
彼女が自身の席に戻っていく姿を見やった。
……私は、結衣と雹堂に救ってもらった。だから、出来るだけ手伝いたいんだ。
「……大丈夫。」
何とは無しに、小さく呟いて、私は窓の外に視線をやる。蒼い空は薄い雲が太陽を覆い隠し、和やかな光が私達を照らしていた。
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