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過去編〈ある一夜〉 中編

まだ、中編です。


何故終わらないのだろうか?

……現在暴走しているからですよね(^◇^;)


後編は一週間後に投稿します!


では、どうぞ!

* * *



「ふぅ……疲れた。」


私は部屋に着いた瞬間私はベッドに倒れこんだ。その状態から私は付けていた狐の面をゆっくりと取った。

黄竜はいつの間にか私の肩から降りており、元の姿に戻っている。


「華梨花。良かったのか?」

「何が?」

「分かっているんだろう?」


「……うん。」


黄竜の問い掛けに少し惚けてみれば、少し責めているような口調でもう一度聞かれたので。私は仕方なく頷いた。


「よかったよ?政府の方には破城の能力を教えろって言われてたし。」

「だからと言って、嘘を言って良いわけではーー」


「分かってる。律儀だなぁ、黄竜。でも、教えたらいけない事もあるんだよ?」


黄竜の言葉を遮って私がそう言えば、黄竜は黙り込んでしまった。

なんとも言えない気不味い雰囲気の中、私は髪に無詠唱で色彩魔術を掛ける。私の髪全体に術式が広がり黒に変わって行くのを見ながら、黄竜が口を開く。


「その髪の色は“暴走”によってなったものだったか?」


「うん。私の魔力量の質の高さ、量に耐えられなくてお父さんが死んじゃったあの日に。」


あの時、母に殴られて気を失ったその次の日。鏡を見てみれば黒から銀色の髪になっていたのだ。

母は、これは私への呪いだと嬉しそうにそんな事を言っていたが……。


「すまない。」

「気にしなくていいって。これは私の背負った業。」

「……。」


黄竜は辛そうに目を閉じる。


「……さて、彼方に移動しますか!」

「そうだな。」


そんな黄竜の姿が見ていられなくて、私は努めて明るく言った。それに合わせて黄竜も頷く。

私は立ち上がり、先程まで着ていた紺色の質素なフード付きロングコートからファーの付いた可愛らしいベージュのコートに着替えて、男を送った場所に転移した。



* * *



床から三十センチ程浮いた所に出た私は、ローファーの音をコツコツと響かせて着地し、黄竜は音を立てずに着地する。それに合わせて私は黄竜に目を向けた。


「いつも通り、姿隠しておいてね?」


黄竜はただ頷き、不可視の魔術を自分に掛け、すぐに姿が見えなくなった。それを見届けた後に、私は部屋に目を向ける。


その部屋は夜仕事終わりの人達が酒を飲むために訪れて来そうなバーカウンターと、その後ろには様々な種類の酒。黒で統一されたシックな部屋の明かりは暗めで、あちこちにオレンジのランプが置かれており、冷たい雰囲気を与えながらも、暖かさを感じる様な物となっている。


「あっ、華梨花!待っていたんだからな⁉︎」


そんな雰囲気をぶち壊すかのように奥の部屋から私に声を掛けてきたのは、先程の男。


「なんでそんなに怒ってんの?」

「おまっ、白銀は刀で斬ることは無いって言ってたんだろ?」


「斬らなかったんでしょ?」

「そうなんだが……って、違う!」


この男は私が白銀である事は知らない。と言うか教えていない。何と無く察しているかも知れないが。

まぁ、そんな事は良いとして。私は男が言いたいことが分からずに首を傾げた。


「何が違うの?黒萩彰人。」


「フルネームで俺の名前を呼ぶなよ気持ち悪い。彰人って呼べって言ってんだろ?」

「仕方ないじゃん。フルネームで読んでないと、人に興味の無い私は直ぐに忘れるんだから。てか、気持ち悪いってひどい。」


「なっ⁉︎……そんなこと言ってるとお前、友達出来んぞ?」


男……黒萩彰人は、私の言った言葉に固まりながらも、呆れたようにそう言った。


「大丈夫。ちゃんといるから。」

「そう言う問題では無いだろう……。」


もう相手をするのが面倒くさいとでも言いたいかのように黒萩彰人は、額に右手を当てた。


「華梨花は本当に学生か?子供と話している気がせん。」

「学生だよ?ほら。」


私は上に着ていたコートを脱いで制服を見せた。


「……月日沙高校か。」

「そうだよ。で、何が言いたかったの?」

「そうだった。刀で斬らないとか言いながら、刀を抜いてきたんでな。」

「あぁ……。」


成る程と私は頷いた。

因みに私は白銀と顔見知りと言う事になっている。この黒萩彰人とあと数人しか、この事は言っていない。大勢の人に言えば、添木華梨花と言う名の私はとっくの昔に政府に狙われて殺される……てか拷問を受けているだろう。


つまりは政府も私の存在を把握しきれていないのだ。

その事を最初知った黄竜にはどうして制服から着替えずに戦ってるんだ!制服が見られたら一巻の終わりだぞ⁉︎とよく怒られたものだが、着替えるのが面倒くさい、プラス面を付けてコート着てれば大丈夫だろう、と言う私の適当さに呆れたのかもう何も言わなくなった。


「あの刀は一体何なんだ?斬られたはずななのに、怪我一つ無かった。あの説明された時は冷や汗ものだったが……。」


「それに合わせて血糊を吐いた貴方にも、逆に白銀は驚いたってさ。」

「いやー、だって、俺が殺された事になるんだったら、血がいるだろう血が。それにあれは血糊じゃないぞ?」

「どういう事?」


私は首を傾げた。


「あれは正真正銘俺の血だ!」


私の目が冷ややかになっていくのが私でも分かる。……いや、知っていたけれども。


「……。」

「いやいや。白銀の後ろに付いてんのは政府なんだろ?俺が死んだとして、絶対に血は出る。それが調べられたら一巻の終わりだろ?……そういや、あの刀に付いた血は?」


「あれも黒萩彰人の血。」

「……は?」


あり得んと言った風な顔で、素っ頓狂な声を上げた黒萩彰人に私はくすくすと笑いながら、コートを着直した。


「白銀曰く。最初切った時の血は、幻術。心臓を刺した時に付いた血は、あなたが吐いた血を刀に付けたんだってさ。」

「……。」


私の説明に次は目を見開いて固まった。私はリアクションの大きな人だと、ある意味感心した。


「……ぇ?そんな風には見えなかったけど?」

「そりゃ、刺すと同時にあなたのお腹を殴って気絶させたんだから、その先見えてるわけ無いんじゃない?」


「あぁ、そっか。」


すっとぼけたように腕を組み、何度も頷く黒萩彰人。どんな反応をしていいか分からずに、私は深く息をはいた。


「なんか俺の扱い酷くない?」

「いやいや、そんな事ないと思うよ?」

「……。」


私がはっきりと言えば、黒萩彰人は項垂れながらため息をついた。


「ん?何?」

「……もういい。殴られた腹もまだ痛いし、帰るわ。」


「治癒魔術掛けなかったの?」

「掛けたさ。」


じゃあどうして?と私は首を傾げながら目で伝えると、黒萩は苦笑した。


「力強過ぎて、痣は付かないほどには治したけど、白銀のところまで行くのに一回転移使ったし、それ以上は魔力の量的に無理だった。」

「治そうか?」


「え?」

「私なら、治せるよ?魔力も殆ど使っていないし……。」


黒萩は、私の言葉に驚いて固まってしまった。一体何処におかしな所があったと言うのだろうか?


「華梨花、お前転移だけでも結構な魔力の消費量だぞ?」

「……あぁ、そこ?」


転移魔術は、場所と場所とを繋ぐ空間魔術。それは高度な技術が必要で、大体の魔術師の移動は紙に書いている、転移する場所の座標の組み込んだ転移術式に軽く魔力を流して転移するというのがセオリー。

転移魔術は、座標も全てその時に決めて術式ごと作るので、異様に魔力の消費量が高いのだ。普通の魔術師ならば、一回転移するだけで殆どの魔力を使い果たしてしまう。上位の方にいる魔術師ならば、往復するぐらいなら余裕だろうが。


「あぁ、そこって……って軽い!お前、これからまた転移魔術で家まで帰るんだろう?俺の治癒に力使ってたら、帰れなくなるぞ?」

「大丈夫大丈夫。私、そんなに柔じゃ無いから。」


「どんだけ魔力量が有るんだよ。」

「さぁ?」


心配してくれるのは嬉しいが、転移魔術如きで弱音を吐いていたら、白銀なんてやってられない。さっき使った光剥と言う魔術なんて、転移魔術よりかは少ないが結構な魔力消費量だ。


魔術師ひとを殺さないようにするには、こんな感じの魔術を連発して使わなきゃいけないって言うのに、転移魔術でひぃひぃ言ってたら最後には魔力切れを起こして、気絶してしまうわ!


色々と言いたい愚痴を心の中にぶちまけながら、私は笑った。


「……お前、一体?」

「私は、添木華梨花だよ?それ以外の何者でもない。」

「それぐらいは分かっているさ。」


黒萩は途端に真っ直ぐに私を見てきた。その目は本当の事を言えと、言っているようで……。


「……言いたくないなら、別にいいさ。だが、お前は思っていることをなかなか口にしない。悩みが溜まりに溜まれば、それはいつか暴走してしまう。友達がいるとは言ったが、それは魔術師おれたちではないんだろ?友人として、同じ魔術師として、俺が代わりに聞いてやる。内の物を吐き出さないと人は生きていけないからな。」


優しい言葉。慣れてはきたが、この感覚はなかなか慣れないものだ。

私はその言葉に苦笑した。


「内の物を吐き出す、か。……あっ。」

「ん?どうした?」

「っ⁉︎黄竜!出てきて!それから、黒萩。今、魔力を込めやすいペンとか持ってる?」

「お、おおぅ。持ってはいるがお前、一体何をするつもりだ?」


「いいから早く!」


何も考えずに言った言葉なのだろうが、私にヒントをくれた。


そう、多分これが正解なのだ。

私は黒萩の持ってきたペンを奪い取り、バーカウンターの前にある椅子に座り、魔力をペンに込めながら魔術式をブレスレットの一粒一粒に書き込んでいく。


「私の中で魔力を閉じ込めたらダメだったんだ。閉じ込めた状態で魔力の量が少しでも増えてしまえば、私の“暴走”が逆に起こりやすくなる。」


だからこそ、今まで考えていた魔術式では、駄目だったのだ。

私の中にある魔力を一定量ずつ取り出しブレスレットの石、一つ一つに入れて封印する。これならば私の中で魔力量が増えたとしても、魔術式が壊れる事も無いし、暴走する事もない。


それに、もし残っている魔力量が足りなくなれば、一つずつ術式解放すればいい話。多分この石は魔力を大量に入れても壊れ難い物なのだろう。だからこそ、あの二人は私にこれをくれた。


「分かったのか?」

「うん。」


私がかりかりと石に魔術式を書いていれば、先程の呼び掛けに応じて黄竜が出てきて、私に声を掛けてきた。


「お、お前はっ!」

「黒萩彰人、その話は後だ。」

「あ、あぁ……。」


私の行動に驚いていた黒萩は、次に黄竜が現れたのを見て固まる。色々聞きたそうに黒萩は口を開いたが、黄竜に言われなんとも言えない顔で頷いた。


「……よし。」


そんな黒萩がわたわたとしている内に、私は魔術式を全ての石に描き終えて、椅子から立ち上がる。


「黒萩、ありがとう。」

「あぁ、どういたしまして……って、違う!」


「おぉ……。程よい突っ込み。」

「今褒められても嬉しくない!」


まぁ、そうですよね。

私が黄竜の近くに立っていた黒萩にペンを返しながら話し掛けると、神妙な顔で突っ込まれた。


「華梨花、今の内に封印しておいたらどうだ?転移に使う魔力が足りないのならば、石一粒を解放していればいい話。」


私の呟いた言葉で、やろうとしている事を理解したのだろう、黄竜が私の左手首にあるブレスレットに目をやりながら声を掛けてきた。


「それも、そうだね。」

「……俺を置いて話を進めないでくれ。」


私が頷いてから魔術式を発動させるための言葉を呟こうとした時、黒萩が弱々しい声でそう言った。


「あっ、ごめん。今から術式封印するから、黄竜説明よろしく。」


「分かった。」


黒萩は黄竜に任せて私はブレスレットに魔力を流す。


誤字、脱字、感想などあれば、コメントよろしくお願いします。

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