現状把握! 後編
なんだかんだ言いながらの過去編除いての10話目!
久し振りに覗いてみれば、ブックマークが増えていて固まってしまいました。
こんな作品を読んでいただいてありがとうございます!
……これから、過去編もたくさん入れていきたいと思っているのですが、どれぐらいの頻度がいいのかよく分かりません。
よかったら何話に一回が良いなど、ご希望がありましたら感想の方や直接メッセージを送って頂けたら嬉しいです。
前書きの長文失礼しました。
頭の上に広げたタオルを載せて、どこか中世を思わせるような服を着て、シャワー室から出ると、鷹に変化した黄竜が、私の目の前で飛んでいた。
「どうしたの?」
そう私が聞くと、黄竜は私の右肩に止まりながら言った。
「来訪者だ。私以外の使い魔達が来ている。今は廊下で待ってもらっている。」
私はそう言えば後で、話してやるから私の部屋に来いって言っておいたなぁなんて思い出しながら、扉を開いてテスカとフェンを招き入れた。
「ごめんね、待たせちゃって。」
「いや、私が華梨花に教えてくれと頼んだのだ、謝る必要は無い。」
「テスカ、そんな事はどうでもいいのだ。一体お前は何者だ。」
私とテスカが話していたら、フェンに睨まれながら聞かれた。
「……テスカ?」
「あぁ。時間はあったが、人前で言うわけにもいかなかったのでな。」
軽く説明しなかったの?と目で言いながら、テスカの名前を呼べば、そう答えたので私はなるほどと頷いた。
「テスカは、知っていたのか?」
フェンが目を丸くして言う。
「フェンの場合は仕方が無いとは思うが、華梨花の名を知らない者は少ないと思うぞ。そうだろうオウキ……いや、黄竜。」
「やはり、分かっていたか。」
私は話しが長くなりそうだなと思いながら、黄竜を机の上に移動させて、ソファーに座った。そして、私の後ろからついてくる、テスカとフェンを見ながら口を開いた。
「テスカとフェンは、小さくなれないの?」
「なれるな。……それがどうしたんだ?」
テスカが答える。
「私的には、小さくなって机の上か、ベッドの上に乗ってくれた方が話しやすくて嬉しいんだけど……。」
「あぁ……。なるほどな。」
そう言って、テスカはフェンに視線をやってから、黒猫の姿に変化した。それから、その視線を受けたフェンは、何故こんな事をしなければならないのかとブツブツ言いながら、真っ白の仔犬になった。
もふもふしたいのを我慢して、私はテスカとフェンを抱き上げて、机の上に移動させる。
その間、きっと私はにやけていたのだろう。黄竜にまたかと呆れた目で見られていたが……。
「フェン、もふもふしていい?」
「……は?」
私が、唐突に出した言葉がそれだったので、フェンが変な声を上げた。
「いいんじゃないか?華梨花に私もされたが、気持ち良かったぞ。」
不満そうに文句を言おうとしたが、それを遮ってテスカが面白そうに言った。
「……済まんな。華梨花はもふもふしたものに目がないんだ。こればっかりは、諦めてくれ。」
そんなテスカを睨み付け、助けを求めるように黄龍を見れば、黄龍はまだ私を呆れた目で見ながら、フェンを突き放した。
「……はぁ、仕方が無い。」
「やったぁ。」
フェンが、深いため息をつきながらも、同意してくれたので、私は即フェンを膝の上に乗せて、撫で始めた。
「もふもふー。」
「……華梨花。」
真っ白毛に私の手が埋まる。それが気持ち良くて、そう呟けば、黄龍に早く話しを進めるぞと、たしなめられた。
「そうだねぇ。……テスカはどこまで知ってる?」
私は頷きながら、少し考えてテスカに聞いた。
「私が聞いた事があるのは、日本の代表的な神である、天照大神と須佐之男命と対話した事があるというものや、魔力保有量は神と同等であるとか……。」
「……なんか、すごいことになってる……。流石に魔力保有量はそこまで多く無いからね?」
「天照大神と須佐之男命との対話は、私が華梨花と初めて会った時、天照大神と須佐之男命と一緒にいてな、そこに華梨花が逆召喚されて来たからなのだ。故意に対話をしたからではない。……全く大きな話になったものだ。」
「同感。」
私と黄竜は、呆れた顔をして同時にため息をついた。
「結局の所、カリカの魔力保有量はどれくらいなのだ?」
フェンが、気持ち良さそうに撫でられながら、私の顔を見て聞いてきた。
「どれくらいだったっけ?」
「私よりかは下だ。他の使い魔よりかは多いがな。」
「そうなの?それは知らなかったんだけど……。」
あぁ、でも須佐之男命がそんなことを言ってたような……。
「……まぁ、あの頃は結構忘れたい記憶がある時期だから、覚えていないかも知れないが、魔力保有量の話はしたぞ?」
言いにくそうに、黄竜が口を開いて言った。
「今は、気にしてないよ。大丈夫。私は変わった。その事実があるだけで十分。だからね、黄竜。」
どうか、自分を責めないで……?
私は、黄竜に向かって微笑んだ。
「……すまなかった。」
黄竜は大きく目を見開き、苦笑しながらそう言った。
「……それで、天照大神と須佐之男命との対話と言うとは、どういうことなのだ?」
先ほどから、黙って私と黄竜を見ていたテスカが、ためらいがちに聞いてきた。
「私が逆召喚された時に、その場にいただけだからなぁ……。なんとも言えないかな?」
私の過去は、出来るだけ話したく無い。
だからこそ、いただけだと私は嘘をついた。
「……そうか。」
疑っているのかテスカは、ついと目を細めながらそう言った。
「……そうえいば、どうして黄竜はカリカの使い魔になっているのだ?カリカよりも魔力保有量が多いのだろう?」
さっきまで黙っていたフェンが、そう黄竜に聞いた。
「まぁ、保有量だけの視点から言うと私の方が多いが、それだけで主従関係が形成されるわけではない。魔法……華梨花の場合は魔術……の正確さや一つの魔術につきの魔力消費量などからしては、華梨花の方が上だ。……まぁ一番の理由としては、華梨花の“暴走”を止めるため、でもあるか。」
それの言葉に、テスカははっとした顔をして私の方を見てから、納得顏になった。
フェンは、何事かと上にある私の顔を不思議そうに見ている。
「……あぁそうか、なるほどな。“暴走”を止めるため、か。」
「何なのだ、さっきから言っている“暴走”とは。」
テスカの独り言にフェンが反応してそう言う。
「……そうだな。まぁ、この“暴走”と言う現象は、神しか知らないと言うわけでは無いが、知る者は少ないな。……言えば、華梨花や黄竜達のいた世界にしか起きない現象だからな。フェンが知らないのも、仕方の無いことだ。」
「……まぁ言うと、魔術師の持っている魔力は普通、増え過ぎれば空気中のマナを通じて出て行くのだが、私達の世界の場合、その空気中のマナの存在が希薄でな。出て行くにも出て行かせられないために、時々無理矢理に人の体内から大量の魔力が、出て行くことがある。それが所謂“暴走”だ。」
テスカがフェンに説明するために言ったものの、それが説明になっていなかったので、見兼ねて黄竜が分かりやすいように説明をした。
「なるほど。個人の魔力量が多い程に、“暴走”の時出て行く魔力の量も多くなる。……そしてカリカの場合、“暴走”が起きる度に、“何か”が起きていたために、黄竜が出てきたと言うことか?」
「そういう事。……私の場合の“何か”は……人の死。」
私がフェンの言葉に頷き、プラスして説明を施すと、フェンとテスカの身体が大きく震えた。
「……おい、華梨花。」
「大丈夫。慣れてる。」
心配顔になった黄竜が、優しい声で私の名前を呼ぶので、私はゆっくりとフェンの頭を撫でている手とは違う方の手で、黄竜の頭を撫でた。
「……すまん。深入りし過ぎたようだな。華梨花の過去を甘く見すぎていた。」
そんな私と黄竜を見ながらテスカはそう言い、フェンは私をずっと見上げていた。
「はい!この話はここで終わり!」
何となく居心地が悪く、重たい雰囲気が辺りを包んでいくのが嫌だったので、私は出来るだけ明るい声でそう言った。
「そうだな。」
黄竜も私に合わせて明るく優しい声でそう言えば、テスカとフェンは渋々といった風に頷いた。
「あぁ。」
「うむ。」
私はそんな二人を見て苦笑いをする。
「……さて、テスカとフェン。そろそろ帰った方がいいかもよ?散歩してくるとでも言って、ここに来たんでしょう?」
そのままの顔で私がそう言えば、二人はそうだったと言う顔をして急いで元の姿に戻り、走って部屋から出て行ってしまった。
「あっ……また明日って言いそびれた。」
「まぁ、そんな事もあるさ。」
黄竜は苦笑しながら、私の肩に乗ってくる。
「あはは……。」
私はなんとも言えず、黄竜につられて苦笑しそれからソファーから立ち上がる。
「さて、色々明日に向けて寝ましょっか。」
「あぁ、そうだな。」
私はベットの下に置いてある日本刀二本の内の一本を袋から取り出し、いつでも手が届くように枕元に置いた。
「……そこまで、用心しなくてもいいんじゃないか?」
「そうかもね。でも、これは癖だから。」
「……そうか。」
「うん。……じゃあ、おやすみ。」
「おやすみ。」
なんだかまだ何かを言いたそうな黄竜に私は苦笑しながらベットに潜り込み目をつむった。
誤字、脱字、感想などあれば、コメントよろしくお願いします。
あと、この小説に出てくる特殊な単語の意味で、わからないものなどあれば聞いてくだされば、解説を何処かに書きますので、気軽にお聞きください。