予備知識なしで手を出すのはマズイかも……というSFの超有名作編
このコラムを読んでくださっている皆さんも、一度は面白いSFが読みたいとか観たいと思ったことがおありでしょう。しかし……そのたびに期待外れだったり、面白かったけれどSFというジャンル自体には興味を持てなかったり、SFというジャンルから離れてしまったことがあると思います。(もちろんそうでない方もいるでしょうが)
実は私もそんな一人でした。SFというジャンルに興味を持ち、「あの有名作やら巨匠の名作を見てみよう!」と思ったのはいいのですが、古臭かったり、作品自体がつまらなかったりして一時期SFというジャンルから離れてしまいました。
そこで「最初に出会うとまずい」「予備知識なしで見るのはやめておいた方が良い」という超有名作品を著者なりにまとめてみることにします。
<注>あくまで主観です
「予備知識なしでは手を出さない方が良い名作群」に出てくる紹介作品
・「作品名」 ジャンル
「ニューロマンサー」サイバーパンク・冒険
「1984」管理社会・ディストピア
「2001年宇宙の旅」宇宙人・ハードSF・ポストヒューマン
「ザ・フライ」変身もの
「スターシップ・トルゥーパーズ」宇宙人・戦争
「攻殻機動隊・1995」サイバーパンク・軍事・警察
「ニューロマンサー」原作
<ジャンル>・電脳、サイバーパンク
言わずと知れたSFの金字塔です。多くのSF者に影響を与えた一作です。
しかしとっつきやすいかと言われると疑問です。味と言えば、味ですし、そこが良い人もいると思いますが。自分が始めて読んだ時にぶつかった問題点を挙げてみると。
・文体や状況が複雑で何が何だかよくわからない時がある
・独特の用語が多く、またルビも多いため人によっては読みづらく感じるかも
・登場人物が多く、動機が交錯しあっていて誰が何のために何をしているのかがわからないという状態に陥る
上記の問題から、一回さらっと読んで楽しみたい、という方には全くお勧めできません。ウィキでストーリーは丁寧に紹介してあるので、本書と見比べてみるのも良いかもしれません。
ただ、ストーリーを追わなくともSFのガジェットを楽しみたい、とかSFの雰囲気に浸ってみたいと思う方は十分楽しめると思います。「ブレードランナー」っぽい、汚い未来と言う感じの世界観なのですが、かなり没頭できます。臭いとか、汚いヴィジョンとかが堪能できるので、それだけでも体験して欲しい感じはあります。
また「攻殻機動隊」にでてくる電脳のもとになったガジェットも出てくるので、それ目的でも楽しめます。ルビとかもかっこいいので、それだけでも楽しめるかも(?)。酔うタイプの小説ですね。
この小説の原作者である、ウィリアム・ギブスンの「クローム襲撃」を読んで、この人の作風を少し体験してみてから読んでみるのもいいかもしれません。「クローム襲撃」は短編なので、すぐに読めますよ。お勧めです。
「1984」原作
<ジャンル>管理社会
こちらも言わずと知れたSFの金字塔です。しかしこの作品もかなり問題点があります。
・主人公たちの反逆活動がとてもささやかで、とても地味。退屈だと思う方もいるかもしれません。私は退屈でした。
・途中で出てくる、反逆者の書いた本をそのまま読む場面がとても難しい。そして長い。
少しでも興味を持った方は映画版が二つ出ていますのでそちらをお勧めします。内容はほとんど変わりません。映画を見るのであれば、個人的には新しいバージョンをお勧めします。古いバージョンはかなり原作重視ですが、映像的に少し古いな、と思うところがあります。
「2001年宇宙の旅」映画版
<ジャンル>宇宙・異星人
これもSF小説の金字塔であり、SF映画の金字塔です。
私が言うべきでも無さそうですが一応問題点をまとめていきます。
・台詞が少なく、とても静か (眠気ポイント+1)
・展開がゆったりすぎ (眠気ポイント+2)
・後半は原作を読まないと意味不明という展開 (眠気ポイント+3)
・長い、そして長い (睡魔にノックアウト……)
私もこの作品で初めて映画で寝る、という現象を体験しました。とても静かでとても展開が遅いです。古い「ゼロ・グラビティ」「インターステラ」だと思って観ると、完全に拍子抜けを食らいます。何度も言いますが、本当に展開がダルく静かで眠気を誘います。
「物語を知りたい、見たい」という方は原作を読んだ方がいいでしょう。原作は普通に面白いですよ。
映画版は物語よりも雰囲気を楽しむ映画になっています。原作→映画で観ると、登場人物の体験が追体験できますから、両方手を出すのも手ですよ。
「ザ・フライ」
SF映画の金字塔「蠅男の恐怖」のリメイク作品です。この作品は物語には問題はないのですが、別なところで大きな問題があります。
・蠅男を始め、出てくるものがとにかくグロテスクで、目を覆いたくなります。
「エイリアン」の胸から出てくる、や「第9地区」のエビなんかとは比べ物にならないほど気色が悪いです。もう悪趣味の領域です。虫がだめな方、ゾンビがだめな方は見ない方がいいです(特に蟲系)。
・一作目と二作目があるのですが両方物語の後味がとても悪いです。胸糞悪くなりますし、まず気分が悪くなります(胸糞悪いのではない)
俺はグロに耐性があるから大丈夫だ、という方も気持ち悪くなるかも。血が飛び散ったりするグロテスクさではなく、毛虫やカビに感じる本能的嫌悪感に近いです。どうしても見たい、と言う方は「蠅男の恐怖」で十分だと思います。しかし、「ザ・フライ」の気持ち悪い特殊メイクの出来は最高です。
すごい特殊メイクが見たい!と言う方、もっとグロテスクなものが見たいという方は是非二作観ることをお勧めします。
上記の理由外でどうしても観たいという方は「ザ・フライ」を観る前に耐性を作るべく、著者が選んだグロテスクな映画三作「エイリアンvsプレデター」「サンゲリア」
「第9地区」を見ておくことをお勧めします。これらが観れない、気持ち悪いというのであれば、「ザ・フライ」はやめておいた方がいいでしょう。
「エイリアンズVSプレデター」
エイリアンとプレデターが闘うという夢の対決を描いた作品の二作目。二作目ですよ。一作目ではないですから。「エイリアン」もしくは「プレデター」シリーズのどちらかを見たことのある人であれば、予備知識を入れれば一作目を観なくとも観れます。かなりグロテスクで、女子供が普通に死にます。
「サンゲリア」
ゾンビ映画。(SF作品ではありません)出てくるゾンビがとりあえず気持ち悪い。
血も結構出て来たような気がします(オレンジ色の)
ゾンビとサメが闘うという、ホラー映画のモンスターの異種格闘技が見れます。
撮影の事を言わずに撮ったのか、ラストにゾンビが世界を闊歩して人間の文明は終了した…みたいなシーンであるにも関わらず、普通に車が走っていたりする笑えるポイントもある映画です。この映画から「ゾンビ映画」を観始めるのもいいかもしれません。
「第9地区」
宇宙人と人間の遭遇を描いた問題作。宇宙人が結構気持ち悪い。人型のエビです。
口のイカみたいなやつが付いているのですが、それがウネウネ動くのが私は駄目でした。
しかし物語の後半は宇宙人に感情移入するという特殊体験ができます。
「スターシップ・トルゥーパーズ」
SF小説の金字塔「宇宙の戦士」の映画版です。
しかしこの映画もとても問題が多いです。物語自体は普通に面白いのですが…
・んまぁ~凄いグロテスク
体の断面、首ちょんぱ、身体がミンチ、全身バラバラ…とグロテスクな描写が多いです。
監督の趣味です、多分。
・んまぁ~凄いお下品
映画中で嘔吐するシーンって結構ありますよね、でもだいたいそれは隠されたりきちんと見えなくされているものです。しかしこの作品は、なんとヒロインが嘔吐するシーンでゲロを隠すどころか画面に飛んでくるというサービスっぷり。
後、虫の解体シーンがやけに丁寧に映されています。「ゴジラ(1984)」のショッキラスとか、「ガメラ2 レギオン襲来」のソルジャーレギオンがダメな人は本作は無理だと思われます。虫がいっぱい出て来て、気持ち悪いです。
これらも監督の趣味と言うか、こだわりと言うか。「インビシブル」「ロボコップ」とかの監督だし、全く不思議ではないんですがね。個人的には「マーズ・アタック」と一緒に見ることをオススメしますよ(笑)
・んまぁ~凄いプロパガンダ
これは観てのお楽しみでしょう。原作再現率パネェって感じです
・原作で出てくるパワードスーツが出てこない
経費のせいだ、とか言われていますが…著者は、監督がパワードスーツを出すとグロテスクな描写が減るので出さなかったと想像しています。
「進撃の巨人」の敵がでっかい虫になった感じの作品です。
散々書きましたが、敵のバグズはそんなに気持ち悪く…ないですし(気持ち悪いやつもいます)、戦闘シーンはすごい迫力です。
「AII YOU NEED IS KILL(原作)」とも内容が似ているので合わせて観るのもいいでしょう。それに上記の馬鹿さ加減は正直、癖になります。この作品は有名な悪趣味監督なので、この作品で癖になったら同監督の「インビシブル」や「ロボコップ」も観てみるといいかもしれません。しかしこれらの予備知識なしですと、完全に拍子抜けもしくはビビること間違いなしでしょう。
「攻殻機動隊・1995」
これもSF映画作品の傑作であり金字塔。また作品が映画化されるという士郎正宗原作。「マトリックス」を始め様々な作品に影響を与えた作品。
問題点、と言うと語弊があるのですが、初めて見た際、私が驚いた点がいくつかあります。
・まず全体的に、一見さんお断り的内容(登場人物の紹介とか、誰が誰で……とかは一切なし)
・話が地味(表面的に)
・内容が難解。一回見てさらっとわかる内容ではない
・台詞がこの手の映画にしては珍しく少ない。しかしそのせいか激しい銃撃戦と台詞の少ない静かなシーンとのギャップがありすぎる。(台詞は小さいのに、銃撃戦の音は大きいという押井映画特有の現象が発生しており、夜に見ると時は注意!)
上記の問題から、恐ろしく眠気を誘われる内容であり、SF作品を観たいという人は絶対見るべからず。
なぜ私がここまで言うのかと言えば、私は「攻殻機動隊」シリーズの大ファンであり、この作品でずっこけた経験があるからです。作画も恐ろしくきれい、キャラのビジュアルも最高。でも眠い。つまんネ。よくわかんネ。攻殻機動隊を見てみたいという人は「攻殻機動隊SAC」シリーズ(テレビアニメ)→「攻殻機動隊」(漫画)→「攻殻機動隊1995」(映画)の順で見ることをお勧めします。そうすれば「攻殻1995」は恐ろしく楽しい作品になります。(あくまで私の主観ですが)
最近(2013年、6月現在)「ARISE」シリーズが公開されていますが、あれはSAC見た後に観るのをお勧めします。と言うかどうでもいいですが「ARISE」を見に行った時の「ARISE」の劇場内、私を含めて6人くらいしか客が居なかったなぁ。あの殺伐とした劇場は、「エヴァQ」とは違う、異様な雰囲気を漂わせていたなぁ……