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日常=異世界冒険記  作者: かなた
第1章 〜運命転換期〜
6/7

絶たれた望みを繋ぐ希望

最低1週間以内に投稿したかったのにいいいいいいいい

 どうなったかを簡潔にまとめろと言うのなら、それにはこう答える。


 祐大は助かった。


 どの様にして助かったのかごちゃごちゃした経緯も話せと言うのなら、ゆっくりと話していこうと思う。上手く表せないと思うが我慢して頂けると嬉しい。


 祐大に向かった光は祐大の頭に当たり脳まで到達し、祐大の心を支配する……はずだった。


 リリーが一言「スロウ!!」と叫ばなければ。


 リリーは祐大を縛っている縄を魔法で引っ張った。そして当然、縛られている祐大もまた一緒にリリーの下へ引っ張られる。

 当の祐大からすれば、突然の事に混乱するしかなかった。しかし男(厨二病)は違った様だった。


「おい貴様ぁ!!どういうつもりだ!!!」


 その言葉で祐大はリリーに助けて貰ったという事実を認識する。同時に思い出す。リリーは今人質を……


「何で…助けたんだよ…妹が殺されるかもしれないんだろ?」

「……だって約束したから。絶対に危害は加えないし…加えさせないって」


 その言葉に祐大は割とグッときたが、だったら路地で気絶させたのはどうなんだよと皮肉の1つでも言いたくなる。仕方ない事じゃないだろうか?別に祐大は聖人ではない。でも路地の一件の怒り以上にこの状況で助けてくれた感謝の気持ちの方が大きかった。

 しかし祐大は少し小声で


「そっか…ありがと…リリー…」


 恥ずかしかったのか、素っ気無い言葉しか言えなかった。


「そ、そんなお礼なんて。ここに連れて来てしまったのは私なんだし」


 だが、そんな言葉でもリリーには何故か会心の一撃だった様だ。顔を赤くしてわたわたしだす始末。


(そういや名前呼び捨てにすんの初めてだっけ?)


 しかしそんなラブコメってる場合では無いのだ。未だこの場には祐大に危害を加えんとする輩がいるのだから。

 というか、片方が縛られて尺取り虫の様な格好ではラブコメもくそもない。


「リリー・ラクシタン!!服従の魔法を使うのにどれだけの時間と魔力を使うのか知らないとは言わせんぞおおおお!!!それを、貴様ああああああ!!」


 どうやら、服従の魔法というのはやはり効果が効果だけに相当発動が難しい魔法らしい。それだけに男の怒りは相当な物だった。


「貴様の妹の命はもう無い物と思え!!いや、死んだ方がマシと思える様な日々を妹に送らせてやる!!来る日も来る日も姉を恨みながら犯される生活を送らせてやる!!」


「じゃあ仕方ないね〜。妹を守る為には貴方を殺さないとね〜」


 口調だけは祐大と会ったばかりの物と変わらなかった。だが明らかに違う。どこまでも冷たい目が殺気を放っている。


「私を舐めるなよ!!たかが冒険者が!!」

「【ウインドカッター】」


 リリーを中心とした小さな竜巻が起こったと思えば、それは祐大の世界にあるカッターの持ち手を抜いて刃だけになった様な形に実体化していき、リリーの頭の上や身体の横へ無数に現れる。リリーはウインドカッターは不可視だと言っていたが、どうやら薄ぼんやりとなら見えるらしい。

 草原でモンスターをバラバラにし、祐大を助けた呪文が男を襲う。

 目の前に広がるのはグロテスクな肉塊だけになる、リリーはそう確信していたが


「私はそんなに馬鹿ではない!!礼儀も知らん冒険者に手を噛まれる事を予測できないはずないだろう!!」


 刃は男に当たる直前に…かき消えた。弾かれた訳でも軌道を逸らさられた訳でもない。消滅したのだ。


「私が今着ている服はマジックアイテムでね。そんな低級魔法、私の服にかかっている『魔力吸収』で消せる」


 男は自慢するかの様に着ている紺色の服の袖をつまんだ。リリーの魔法を打ち消す事で自分の方が優位に立っていると認識した男はしだいに落ち着きを取り戻していく。


「異世界人君にかける忠誠の魔法はまた明日にするしかないな。すまないね、君には早く1人前の国の騎士になって欲しかったが。まったく、フラベル様に謝罪しなければいけない私の身にもなってくれよ。まあ私の今までの功績を鑑みればそこまで糾弾される事は無いと思うが」


 どこまでもうざい奴だが祐大は男の話を途中から聞いていなかった。祐大の頭の中は男がマジックアイテムについて語った時に浮かんだ1つの疑問で満たされていたからである。


(あいつの服は魔力を吸収する?そんな服を着てあいつ自身の魔力は吸収されないのか?いや、リリーの魔法は男から約2mぐらい離れた所で消えた。つまりあの服そのものが魔力を吸収するのではなくあの服を着ていると約半径2mにあいつを囲う様に魔力を吸収する結界の様な物ができるのか?じゃあ何であの男は忠誠の呪文を出せた?内側からは魔法は吸収されないのか、もしくは男が僕に2m以内に近付いたからなのか…)


「じゃあこれなら!!【スロウ】」


 男の後ろにあるいかにも高そうな壺ゴトゴトと音を立てた後リリーの下へ引き寄せられる。つまりそれはその直線上にいる男に当たるという事だ。


「馬鹿め、この服は全範囲に有効だ」


 音でリリーが何をしようとしたか理解した男がリリーを嘲笑う。

 祐大の考え通り、背後も魔力吸収の対象内だった。壺が男に一定距離近付くと壺を引っ張る力が消滅した。

 だがリリーはそうである事を予期していたのだ。


 魔力が消滅したからといって、引っ張る力が消滅したからといって



 "壺が止まるという訳ではない"



 壺は引っ張られた方向そのままに若干スピードを落としながらも止まらずに男へ向かっていく。


「あなたみたいな城暮らしのインテリさんとは場数が違うんだよ」


 ガァン!!………ゴトッ…ドサッ


 壺は男の後頭部に直撃し、目を伏せて耳を塞ぎたくなる様な音を上げた。何故か割れる事なくそのまま地面に落ちる壺(魔法か、そういう素材なのか)。そして壺に続いて倒れる男。恐らく、気絶したか死んだのだろう。


 男が倒れる音を聞いた途端、祐大の下にリリーが駆け寄ってきた。


「ユウダイ君!!怪我ない?」

「うん…大丈夫」


 今の戦闘の何処に怪我する要素があったのか疑問だが、こんな美女に心配されて悪い気はしない。


「ちょっと待ってね!直ぐに縄を解くから!!【ディメンションゲート】【スロウ】」


 リリーが異空間を開き、即座にそこから剣を取り出す。


(え?剣???)


「良し!!これで縄を…」


 リリーが鞘から剣を抜いて刀身が顔を出す。そしてそのまま剣で縄を……


(いや切れないからね!!あの男の説明聞いてたの!?)


 まあ切れるはずも無かった。


「おかしいなぁ。こないだ鍛冶屋に研いで貰ったばかりなのに〜」


 ついには剣のせいにしだす始末。

 もう呆れるしか無かった


(ダメだこの人……。さっきの戦いが台無しになるくらいかっこ悪いよ……。何が場数が違うだよ。よく今まで死ななかったなこの人……)


 とりあえず、魔法がかかっている事をもう1度説明すると「ああ、そうだった〜」とか言ってたのでどうやら聞いてたのに忘れてた様だ。


「こうなったら私が直接解くしかないね!!」

「おい馬鹿辞めろ!!」


 断固拒否する祐大。そんなオチがバレバレのフラグは折っておくに限る。


 しかし…どうしよう?


「これ誰が縛ったんですか?」

「え?…………ごめんなさい…」


 リリーだった。まあ祐大も予測はできていた。あの男が一生懸命祐大を縛ろうとしている姿は想像できない。脅す際に、リリーに縄を渡すだけ渡して後は全部押し付けたのだろう。


「いや別に責めてる訳じゃないんだけど…。どういう風に結んだんですか?」

「え?どういうって言われても、適当にだけど?」


 間違いない。絶対に絡まってる。


「……結び目は?」

「え?ここだよ〜」


 リリーは祐大の右肩辺りに手をやり、縄を引っ張ると祐大にもなんとか見えた。


 見事なまでの絡まり方だった。


(これ、どうやったらこんな結び方になるんだよ……再現不可能なレベルだぞおい……なんか僕が魔法にかかって操られていたとしても解く事ができずにこの状態のまんま役に立たなかったんじゃないかって気がしてきた……)


「魔法で何とかできないんですか?」

「う〜ん、5種類の強固の魔法を貫通する魔法か〜。心当たりが無い訳じゃないけど、君も一緒に貫通する事間違い無しだね。………ねぇ、奇跡って信じる?」

「いやするなよ!絶対にするなよ!いや振りでも無いからな!」


 しかしそんなコントしてる場合じゃない。縄は祐大を結構ガッチリと縛っているのでどんどん痛みが増してきている。


「あいつが何か道具を持ってたりしないの?」

「あ、そうか!ちょっと探してみる」


 リリーは急いで男に近寄るが、手を伸ばした瞬間、動きが止まる。


「ねえ?私に死んだ人の身体を漁れって言うの?」

「うん!!」

「無邪気な笑顔で肯定された!?いやなんていうか、こいつに対して物凄い嫌悪感があるからもう触りたくもないんだけど…。ただでさえ死んだ人間から剥ぎ取るっていうのは気が引けるっていうのに」

「死んでなどいないさ。安心したまえ」


 それは当然祐大の声では無かった。


 男は後頭部から血をダラダラと流してはいるが生きていたのだ。

 リリーが慌てて男から距離を置こうとするが手遅れだった。男はゾンビの様な動きでリリーの足首を両手で掴み引っ張った。当然バランスを崩し、転倒してしまう。


「私の高貴な血が流れていってるじゃないか。これは高くつくぞ。少なくとも君の命1つでは足りないな。君も君の妹も、代償として身も心も全て壊させてもらう。いや、まだ足りないなぁ。そうだなぁ何がいいかなぁ」


 譫言の様にブツブツと呟く姿は普通に威嚇してくるよりもずっと恐ろしい物だった。


「ウ、【ウインドカッ「させないぞ」」


 リリーが急いで呪文を唱えようとするが、男は何と転んだリリーの口に手を突っ込んだ。

 これでは呪文を唱える事など不可能である。

 リリーは男の手に思いっきり噛み付くがどうやら頭の痛みの方が強いらしく男は全く怯まなかった。


「そうだ。今から君を異世界人君の前で犯すというのはどうかね?ひょっとしたら新しい性癖が芽生えるかもしれんよ?」

「ンンー!?」


 リリーは男の言葉に怯え男を何度も手で押し退けようとしたり、蹴り飛ばそうとするが、如何せん女性の力では押し退ける事は叶わない。リリーは頸動脈などの相手を一発で気絶させられる場所を把握していた。しかし今のリリーはまともな判断ができていない。これではジタバタ藻掻く子供と変わらない。剣を持っていれば状況は変わっていたのかもしれないが、転倒させられた際に落として祐大の方へと滑っていってしまったのだ。


「【キュア】」


 男が祐大には初めて聞く呪文を唱えると、男の後頭部がジュージュー音を立てる。そして数秒後には男の傷口は塞がり、流血が止まった。どうやら男は治療する呪文も使えたらしい。


「さてと、まずは君の歯を全部折って、それから四肢の骨を折って抵抗できない様にしようか」


 男はすぐ側にあった壺を掴んだ。そしてそのままリリーの口元へと持っていく。


「上手く当てる自信は無いのでうっかり鼻に当たってしまうかもしれないなぁ。そうなりたくなければ動かない事を勧めるよ」


 そう言いながらリリーの口に突っ込んだ手から親指だけを抜いて顎の下へと持っていき、顎を手で挟み込む形にした。どうやら上の歯から叩き折ろうとしているらしい。


「おい!!リリーを離せよ!!この変態が!!」

「何故離さないといけない?むしろ私の様な生まれ持っての高貴な人間が、冒険者などという夢見がちな便利屋の相手をしてやろうと言うのだよ?感謝して欲しいくらいだなぁ」


(くそ!!やっぱ注意を逸らしても時間稼ぎにしかなりそうにねぇ!この縄の魔法さえ解けれ……ば……?あれ?そういや…)


 ここで祐大は1つ気付く。


(いや、まさかね。だってもしそうならあいつ間抜け過ぎるだろ。いや、でも、ひょっとしたら………はははっ気付くのにこんなに時間かかった僕も間抜けか。リリーの事笑えねぇなぁ)


「……と呼ばれた私が怪我をするなど有ってはいけない事なのだよ。私が死ねば国にどれほどの損失に……」


 どうやら男の殺意が湧く講釈はまだ続いていたようだ。


 祐大の考えが合っているとしても絶対に成功するとは限らない。だがこの時の祐大は何故か大丈夫だと確信する事が出来た。自分の中の何かが大丈夫だと判断している感じだ。


「おい!!低レベルなクズ人間!!」


 なんと単純な事か。男が最も言われたくないであろう単語を並べると、男はあっさりと意識を祐大へと向けた。


「おい貴様!!私の何処が低レベルだと言うんだ!!」

「こんな単純なミスをする所がだよ!!」


 瞬間、祐大は今出せる全力の力を腕に込めた。

 ミシミシという音と共に縄の一箇所がどんどん千切れていく。


 プチンッ


 と小さな音を最後に立てて縄は完全に千切れてしまった。


「な、何故だ!?まさかもう力は覚醒し終えたのか!?いやいくらなんでも早過ぎる!!」

「そんなんじゃねえよこの間抜け」


 言いながら祐大は足下に落ちていた剣を拾い上げる。


「お前は僕に魔法をかけようとした時に何をした?」


 男にはこうなってしまった状況を作った原因に思い当たる節が無かった。


「私は別に魔法を放つ以外何もしていないはず…ただ貴様に近づいただけ……近……付い……た?」


 ついに男は気付いた。


「あ、あああああああああああ!!!」

「気付いたか?随分かかったな。この大間抜け」


 男のやったミスはとても簡単な事だった。ただ、祐大に近付いただけ。そう


 縄の魔力を吸収させながら。


 男は説明を端折っていたが、男が着ている服は魔力を無限に吸収できる訳ではない。そんな服が存在すれば簡単な魔法攻撃にはほぼ無敵になってしまう。例えばリリーが使ったウインドカッターなら十数発程吸収すればかかっている魔法は解け、只の悪趣味な服となってしまう。

 だから吸収する魔法の対象には制限がかかっている。それは使用者が体内で魔力を()った時にのみそれに呼応して使用者以外の魔力を吸収するという物。

 そのため、忠誠の魔法を放つ時に魔力をずっと練っていた状態で祐大に近付いた結果、祐大を縛っていた縄にかかっていた魔法がどんどん吸収されて只の縄となってしまった。そして放つ事によって練った魔力が無くなった為に、リリーは移動制御の魔法スロウを縄にかける事ができた。

 しかし男の言っていた事を信じるならば魔法がかかってなくとも縄は国で一番丈夫な植物で作られているらしい。だからリリーの剣では切る事ができなかったのだ。


 祐大はほぼ無意識に、服にかかった魔法の仕組みとこの縄は自分の力で千切る事ができるという事を予測した。


 これが祐大に与えられた力の片鱗である。


 祐大はゆっくりと鞘から剣を引き抜く。

 祐大に宿っている力の恐ろしさを良く知ってる男はその動作だけで怯えに怯えた。


「お、おい!き、き貴様、こいつがどうな、てもい「遅ぇよ」」


 祐大に躊躇いは無かった。一瞬で男に近寄り、男の左胸から右脇腹にかけて斬りつけた。瞬間、沸き起こる血しぶき。意識の薄れていく男の目には自身の返り血で濡れていく祐大が見えた。

 男の耳が最後の仕事とばかりに祐大の言葉を脳へと届けた。


「僕の名前はユウダイだ。地獄で誰に殺されたか聞かれた時に必要だろ?」


この小説ではシリアスは空気を読まずいきなりやってきます。


後、厨二病野郎は天才だけどアホです。

テストで全教科90点以上なのに電車の乗り方も理解できない奴みたいな感じです。

ひたすら魔力を溜めて縄の魔法を吸収してあげるとか…

可愛い女の子だったら……うん、無い。


おまけに魔法を吸収しまくったせいでリリーがもう一発くらいウインドカッター打っとけばただの服になってました。アホだ。



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