はじまり
いつも通りの朝。何一つ変わらない。
いつもと同じように起き、いつもと同じ食事をし、いつも通りの時間に家を出る。これも何一つ変わらない。
通学路は小学生で溢れており、いつもと一緒で騒がしい。
申し遅れたが、僕の名前は楠木 宗一郎(クスノキ ソウイチロウ)。県立高校に通う17歳だ。
8時ちょっと前に学校に着くと、いつもは揃っていないクラスのメンバーが揃っている。珍しい。これはいつもとは違う。
「はよー楠木」
「……はよ。来るの早いな」
前の席に座る紀田がえっ、と驚いた顔をする。何なんだ。
紀田はニヤニヤと小馬鹿にした顔で笑いながら、僕の机に身を寄りかからせる。うざ。
「楠木知らねーの?今日転校生来るんだよ」
「転校生?」
……あぁ、昨日担任がそんなことを言ってた気がする。そこまで興味はなかったから全然話を聞いてなかったが。
というより、皆転校生ごときでこんなに早く学校に来たのか。馬鹿なのか。馬鹿の集団なのか。
「女の子らしいぜ。しかも双子らしい!」
「へー」
全く持って興味が湧かない。双子の女の子だからなんだというのだ。
僕の様子に焦れたのか、紀田が僕の肩をこづいた。何気に痛い。
「お前興味ねーのかよ!?それでも男か!!」
これでも男である。女に興味が無い男の一人や二人、そこいらにだっているだろう。
僕は目の前でキャンキャン喚く紀田をじろりと睨む。耳元で騒ぐのは止めて欲しい。
視線に気付いた紀田も、負けじと僕を睨み返す。
無言のまま睨みあっていると、ドアが開いて担任が中に入ってきた。
「おーいお前ら席着け席」
生徒名簿で生徒の尻を叩きながら歩いてくるのは、うちの担任の黒岩だ。三白眼と高い上背、脱色したような茶色の髪はどこぞのヤーさんのようである。おまけに態度も口も悪い。よく教師になれたもんだ。黒岩は百歩譲っても教師には見えない。
「センセ!転校生来るんでしょ!?転校生!!」
いつの間にやら紀田は前を向き、きらきらとした目で黒岩に言葉を投げかけていた。変わり身の早いやつだ。
黒岩は首を掻きながらおー、と言い、扉の方を見た。つられて皆も扉を見る。……僕も、だ。
「おい、入ってこい」
「「はーい」」
高い、女子特有のソプラノの声が聞こえたかと思うと、次いで扉が勢い良く開いた。入ってきたのは聞いていた通り、双子の女子。
肩で切り揃えた黒髪も、身長の高さも、顔に浮かべる表情も、制服の着こなし方まで。
瓜、二つ。
同じ人間が二人いるのではないかと思うくらいそっくりの女子が二人、そこにいた。
「如月、こっち来て自己紹介しろ」
僕から見て左側にいた子がはーい、と言う。
「如月真月でーす!姉の方でっす!宜しくねー!」
……いやにテンションが高い子だな。ああいう子は苦手だ。
「如月未月です。妹です。宜しくお願いします」
こっちの方は普通のようだ。落ち着いた自己紹介をし、ぺこりと頭を下げた。
「席はー、あぁ、楠木の隣の席な。あそこ。――楠木、面倒見てやってくれ」
「……は?」
「じゃ、HR終わり」
「ちょ、ま――」
バタン。
僕が言い終わるより早く、目の前のドアが閉まった。ふ、ふざけんな――!
「「楠木クン、よろしくねー」」
――後ろからそんな、声が聞こえた……。
「楠木羨ましーなー!」
「……じゃあ代わってやろうか」
「いやそれはいい」
……どっちなんだよ!!
HR後の休み時間、紀田がこっちを向いた。僕に話しかけていても、視線は双子にむいたままだ。
……というより、紀田は僕の前の席なんだから、双子の斜め前の席で十分近いんじゃなかろうか……。
双子は今、クラスメイトの質問攻めにあっている。転校生の嫌な宿命だ。お気の毒である。だが、双子はそんな状況に慣れているのか、終始にこやかに応対している。
コミュ障の僕にはできない芸当である。羨ましい。
僕の方なんか見向きもしない。
このままあまり関わることなく過ごしたいなー、と思っていた。が。
放課後、それは訪れた。
「「楠木くーん」」
帰る支度をしていた僕に、双子が話しかけてきた。吃驚して教科書を落とすところだった。
クラスの皆が僕を見ている。紀田も準備をしながらちらちらこちらを窺っている。
「……何かな」
努めて冷静に返した。
双子はにこにこ笑いながら僕に言う。
「「時間あるなら校舎案内してほしーなー」」
「……(嫌だ)」
断ろうと口を開きかけた途端、紀田が口を挟んできた。
「俺も案内してあげる!!――なっ!?」
……僕を巻き込まないで欲しい。早く帰りたいのに。
「「ほんとー?ありがとー!」」
けれど、キャピキャピはしゃぐ双子を見て、まぁいいか、と思った。一回きりなら。
「あれが図書室。その横がCAI教室。――これで終わり、かな」
一時間後、僕らは教室棟の隣の特別教室棟にいた。30分ぐらいで終わらせたかったのに、一時間もかかってしまった。さっさと帰ろう。
それじゃ、と踵を返した時、紀田に腕を掴まれた。
……何コイツ。
「折角だしさー、なんか甘いものでも食べに行かなーい?」
ナンパかよ。
ていうかお前一人でいけよ。僕を巻き込むな。
……なんて、僕が思ってることなんて露知らず、紀田と双子はどの店に行くー、などと話し合っていた。僕の意見は無視か。
まぁ、食べに行ってこの双子との縁も終わると考えたら、行ってもいい気がした。
双子と僕はタイプが違うし、住む世界も違う。
関わることはないだろう。
そう、思っていた筈なのだが……。
二作目です。
おはようこんにちはこんばんわ。ナナオです。
誕生日記念で連載物に挑戦してみました。
ラブコメです。ラブなコメディです。
ラブコメ書くのは初めてです。
むしろラブ自体書くのが初めてに近いです。
今のところまだラブには至ってませんが、これからちょいちょいラブを盛り込んでいきたいなー、と思っております。
というより、これはラブコメになるんでしょうかね……?
宗一郎みたいな主人公だとなりそうもないなー。
とか思いつつ。
どんどん宗一郎を馬鹿な子にしていきたいと思います。
それにしても宗一郎ちょっと嫌な感じの子じゃないですか?大丈夫ですかね?
あんな子にするつもりはなかったんですがね。
双子ちゃんはまだ全然性格とか出てきてないので二章から双子ちゃんにハッスルしてもらおうと思います。
思ってることが多いな自分w
まぁ、そんな感じで誕生日おめでとう自分!!
さてさて、小説の方向性を決めてくれた友人様、ありがとうございます。いつもすみません。
次の更新はいつになるか分かりませんが、気長に待っていただけると幸いでございます。
それでは、またお会いいたしましょう。
ナナオでした。